大きい犬を連れたお婆ちゃんがきた
俺は会社の駐車場に厚く残った氷を砕いて散らしていた
大きい犬はゴールデンレトリバー
完全に成犬でホントに大きい
『こんにちは』と、お婆ちゃんに声をかけると
お嫁さんが散歩しないで出掛けて行ったから代わりに年寄りが散歩してるんだよ
と、こぼしていた
俺は犬が怖い
とても怖い
小さい頃に噛まれてからもうずっと怖い
しかもこの犬、でっかい
…
こういう時、軽くでもいいから
犬をナデナデすればいいんだと思うが
とにかく怖い
その俺の怖いという気持ちを犬は見抜いてるのかな
どうなのかな…
しゃがんで
頭を撫でてみた
目線が近くなって余計にデカさがわかる
でも、吠えそうな雰囲気もゼロ
飛びかかりそうな感じもない
ただ静かに優しい目で近づいてきて
どんどん近づいてきて
俺がジャンバーの胸の所を広げて着てたんだけど
その開いてる胸の所に顔を突っ込んできて
フガフガと匂いを嗅いでる
カミさんがよく言う
『にゃびちゃんはケモノに好かれる匂いを発してる』と。
きっとその匂いを嗅ぎつけて
フガフガしてるんだろう
そんで勢いついて押して来る
うん…
強いよ
しゃがんでるデブのバランスの悪さを察して
コケるからやめて
押さないで
フガフガ…フガフガ…
でも、なんか可愛い
怖くなくなってきてる
子供の頃から怖い怖いと思ってたけれど
雪解けの春のように(季語
恐怖心も薄くなりつつある
まるで薄氷のように(季語
慣れたついでに
婆さんも撫でてやろうか(やめれ
『また遊びにおいでね』
ってワンコに話しかけると
不思議そうな顔をして俺の顔を見ていた
『おっかないクセに』とでも思ったのかしら
…
あまりにも可愛かったから
なんか心に焼き付いちゃった
あんなに大きい犬なのに大人しくて利口でいいなぁと。
あんな図体だもん
どれくらいメシを食うのか気になりません?
調べてみたら
年間でおやつ代も含めて30万は掛かるって
…結構ですね
そりゃあの体だもんね
太りやすいからちゃんと運動させましょう
とも書いていた
朝と晩に1時間の散歩は欠かさないように
だって
…
可愛いけど、飼うのは無理だわ
そんなに散歩したら俺が痩せちゃうよ!(…だったらいいじゃねぇか←錦鯉