「白鳥湖」2幕#11中の「フクロウの動機」
♪ソーソーソー・ソーーー│>ミーー>レ・【>ドーーー】│
<ミーー>レ・【>ドーーー】│<ミーー>レ・>ドーーー♪
(アッレーグロ・ヴィーヴォ、2分の2拍子、調号なし)
の【】の箇所に用いられてる【和声】が、
【fis(<)es(<)as(<)c】
(fisはgesであるから、つまり、
ハ長のナーポリ調である変ニ長の属7の第二展開形)
であることはすでに前項で書いたが、これが、
「白鳥湖」と作曲時期が比較的近い大作、
「イヴギェーニィ・アニェーギン
(いわゆる「エヴゲニー・オネーギン」)」
の中の1幕2場、タチヤーナが乳母に「手紙」を託して
「場」が終わるときに、
♪ソー|<ドー・ーー・>ソー|<ミー・ー>レ・>♯ド<レ|
<ファー・ー>ミ・>♯レ<ミ|……(段階高揚ゼクヴェンツ)……|
レー・ー>ド・>シ<ド|【レー・ー>ド・>シ<ド】|
レー・ー>ド・>シ<ド|【レー・ー>ド・>シ<ド】|
ド……♪(ハ長)
という、万感胸にこもる音楽が流れるときに
【】の箇所に充てられてるのである。それはまた、
晩年の大作にも執念深く用いられてる。まず、
バレエ「冬眠中の森に横たわる麗人(いわゆる「眠れる森の美女」)」の
3幕#25「パ・ドゥ・カトゥル」
(いわゆる「青い鳥」の「パ・ドゥ・ドゥー」に変えられたもの)
のアダージュ……
♪ソーーー>ミ|<ラー>ソ<ラ>ソ>ミ>ド>ラ>ソーーーーー♪
で始まる……の終い、
♪●ソ<ラ<シ|<レ>ド>シ<ド・【<レ>ド>シ<ド】
・<レ>ド>シ<ド・【<レ>ド>シ<ド】♪(ハ長)
の【】部分である。このナンバーは本来、
「すすかぶり姫&金満王子、青い鳥&さえずり王女」
というふた組のカップル4名(カトゥル)が踊るものだったのである。
これから起こる「アクション」を予兆してるのである。次に、
チャイコフスキーの作曲活動の終着「悲愴交響楽」である。
「悲愴交響楽」において、たった二箇所だけ附されてる
「ffff」のうちのいっぽう……
3楽章「結部」への「橋部」において、
♪レー>ドン>ラ♪の、やはり段階高揚ゼクヴェンツを経たのちに
「ffff」でぶちかまされる……
♪レ>ド>ソ<ド・【<レ>ド>♭ラ<ド】|
レ>ド>(N)ラ<ド・【<レ>ド>♭ラ<ド】|
<レ>ド>シ>ラ・>ソ>♯ファ>Nファ>ミ|
>レ>ド>シ>ラ・>ソ……(ト長)♪
にも、この【和声】が充てられてるのである。ここは、
「オネーギン」のとこと同じく、主和音との交互使いである。また、
「悲愴交響楽」中もう片方の「ffff」の箇所も、
根音はfisながら、【f(<)d(<)g(<)h】
という「ハ長の属7の第二展開形」が重ねられてるのである。
そこは「ロ短」であり、かつ「ロ長」への「橋渡し部」だったことである。
さて、順序はあべこべになるが、オペラ「スペイドの女王」である。
実は私がこの【和声】にもっとも心を揺り動かされる箇所であるため、
最後にもってきたのである。「スペイドの女王」は、
このブログで以前に全曲を追ってみたので既述してるが、
1)「サン」・『ジェルマン』伯→
2)伯爵夫人→
3)士官『ゲルマン』
と、「3代」に渡って継承される「3枚」のカードの秘密、
が軸になったお話である。
(『』内はともに『ドイツ人』を表す。そして、
2幕でお出ましになる『エカチェリーナ2世』は
生粋の『ドイツ人』であり、伯爵夫人とイメージをダブらせることで、
『ドイツ人』3代をほのめかしてるのである。ちなみに、
【fis(<)es(<)as(<)c】は、「並び」(根音がas)が
【as(<)c(<)es(<)fis】なら、
「as」と「es」が(完全)5度、「as」と「fis」が増6度、なので、
「増五六の和音」(『ドイツの六』)となるのであるが、
チャイコフスキーはそこにひと細工こらして使用してるのである。
それはともかく、この
「3枚」のカードの秘密をめぐって主要人物
「3人」が死ぬオペラ(プーシキンの原作を問題にしてはいけない。
すでにジャンルが異なるチャイコフスキーのオペラである)において、
音楽上で軸になってるのは、
「パッション・モウティフ(パッション動機)」と私が名づけた
♪【【ラ<シ<ド>シ】】♪(♪【【ド<レ<ミ>レ】】♪)である。
バッハの「マタイ・パッション」の
♪【【ラーー・ー<シ<ド・>【【【シ】】ーー・ーー<♯ド<レ|>♯ド】】】……♪
ベートーフェンの「悲愴ソナタ」
♪【【ラーー・ーーーー・ーーーラ<シーー<ド|ドーーー・>シ】】……♪
チャイコフスキーにはあまたあるが、やはり「悲愴交響楽」の
♪【【ラ<シ|<ドー>シーーー】】♪
などや、また、
ヴァーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の「愛の動機」、
マーラーの「5番交響曲」のアダージェット章、
などに、「意図して」使われてるものである。これは、
「3度進んで2度下がる」という水前寺チータの精神であり、
♪かおるちゃん、おそくなぁって、ごめんね♪や
♪コトコト、コットン、ファミレドシドレミファァ~~~♪などで知られる
米山正夫の「三百六十五歩のマーチ」の「イントロ」にも
ハッキリと用い譜られてるのである。
♪ドーー・ーー>ラ・>ソ>ミ>レ・>ドーー|
<ドーー・ーー>ラ・>ソ>ミ>レ・>ドーー|
【【ド<レ<ミ・>【【【レ】】<ミ<ファ・
>【【【【ミ】】】<ファ<ソ・>【【【【【ファ】】】】<ソ<ラ|
>ソ】】】】】<ラ>ソ・<ラ>ソ<ラ・>ソーー・ーーー♪
さて、オペラ「スペイドの女王」では、【【これ】】がまず、
リーザとゲルマンの【【愛の主題】】の主要動機として使われる。
♪【【●ド<レ<ミ|ミン>レレー・ー】】、
【【レ<ミ<ファ|ファン>ミミー・ー】】、
ミ<ファ<ソ|ソー>レー・ー♪
しかし、最後、ゲルマンが自害して果てたときに、
賭博場にいる士官仲間らによって聖歌ふうな男声合唱が歌われたあと、
それと入れ違いに流される音楽において、
♪【【●♯ファ<ソ<ラ・ラン>ソ・ソー】】|
<【【●シ<ド<レ・レン>ド・ドー】】|
<【●レ<『♭ミ』<ファ・ファン>『♭ミ』・『♭ミー』】|
ーー<Nミー・ーー<ファー|……♪(変ニ長)
と、【【哀悼の動機】】に変えられて、
【【3回】】奏されるのである。そして、その
【3回め】の【●レ<♭ミ<ファ・ファン>♭ミ・♭ミー】のひと小節が、
変ニ長のナーポリ調であるニ長の属7の和声によって彩られるのである。すなわち、
通奏desを2ファゴ+トロ&チュー+コンバスが続ける上に、
2クラ+2トラ、そしてそのオクターヴ下を2ホル+2トロが和声を重ね、
弱音器を装着したコンバス以外の弦が上記の動機を弾く。その小節に至って、
「通奏des(<)g(<)a」に、
旋律弦のパッション動機として非和声音を連ねていくうえで
省略されてたようにみえた『♭ミ=e=ニ長の属7の第5音』が、
旋律の一部として断絶しながらも重ね描かれることよって、
ニ長の属7(第一展開形)がはっきりと打ちだされることになるのである。
チャイコフスキーという天才はおそろしく頭がきれる。この箇所の音楽は、
崇高、かつ、哀惜の念とヒトの死を悼む心が現れてるきわめて美しい世界である。
この研ぎ澄まされた美しさには、ただ涙を流して感激するしかない。
♪ソーソーソー・ソーーー│>ミーー>レ・【>ドーーー】│
<ミーー>レ・【>ドーーー】│<ミーー>レ・>ドーーー♪
(アッレーグロ・ヴィーヴォ、2分の2拍子、調号なし)
の【】の箇所に用いられてる【和声】が、
【fis(<)es(<)as(<)c】
(fisはgesであるから、つまり、
ハ長のナーポリ調である変ニ長の属7の第二展開形)
であることはすでに前項で書いたが、これが、
「白鳥湖」と作曲時期が比較的近い大作、
「イヴギェーニィ・アニェーギン
(いわゆる「エヴゲニー・オネーギン」)」
の中の1幕2場、タチヤーナが乳母に「手紙」を託して
「場」が終わるときに、
♪ソー|<ドー・ーー・>ソー|<ミー・ー>レ・>♯ド<レ|
<ファー・ー>ミ・>♯レ<ミ|……(段階高揚ゼクヴェンツ)……|
レー・ー>ド・>シ<ド|【レー・ー>ド・>シ<ド】|
レー・ー>ド・>シ<ド|【レー・ー>ド・>シ<ド】|
ド……♪(ハ長)
という、万感胸にこもる音楽が流れるときに
【】の箇所に充てられてるのである。それはまた、
晩年の大作にも執念深く用いられてる。まず、
バレエ「冬眠中の森に横たわる麗人(いわゆる「眠れる森の美女」)」の
3幕#25「パ・ドゥ・カトゥル」
(いわゆる「青い鳥」の「パ・ドゥ・ドゥー」に変えられたもの)
のアダージュ……
♪ソーーー>ミ|<ラー>ソ<ラ>ソ>ミ>ド>ラ>ソーーーーー♪
で始まる……の終い、
♪●ソ<ラ<シ|<レ>ド>シ<ド・【<レ>ド>シ<ド】
・<レ>ド>シ<ド・【<レ>ド>シ<ド】♪(ハ長)
の【】部分である。このナンバーは本来、
「すすかぶり姫&金満王子、青い鳥&さえずり王女」
というふた組のカップル4名(カトゥル)が踊るものだったのである。
これから起こる「アクション」を予兆してるのである。次に、
チャイコフスキーの作曲活動の終着「悲愴交響楽」である。
「悲愴交響楽」において、たった二箇所だけ附されてる
「ffff」のうちのいっぽう……
3楽章「結部」への「橋部」において、
♪レー>ドン>ラ♪の、やはり段階高揚ゼクヴェンツを経たのちに
「ffff」でぶちかまされる……
♪レ>ド>ソ<ド・【<レ>ド>♭ラ<ド】|
レ>ド>(N)ラ<ド・【<レ>ド>♭ラ<ド】|
<レ>ド>シ>ラ・>ソ>♯ファ>Nファ>ミ|
>レ>ド>シ>ラ・>ソ……(ト長)♪
にも、この【和声】が充てられてるのである。ここは、
「オネーギン」のとこと同じく、主和音との交互使いである。また、
「悲愴交響楽」中もう片方の「ffff」の箇所も、
根音はfisながら、【f(<)d(<)g(<)h】
という「ハ長の属7の第二展開形」が重ねられてるのである。
そこは「ロ短」であり、かつ「ロ長」への「橋渡し部」だったことである。
さて、順序はあべこべになるが、オペラ「スペイドの女王」である。
実は私がこの【和声】にもっとも心を揺り動かされる箇所であるため、
最後にもってきたのである。「スペイドの女王」は、
このブログで以前に全曲を追ってみたので既述してるが、
1)「サン」・『ジェルマン』伯→
2)伯爵夫人→
3)士官『ゲルマン』
と、「3代」に渡って継承される「3枚」のカードの秘密、
が軸になったお話である。
(『』内はともに『ドイツ人』を表す。そして、
2幕でお出ましになる『エカチェリーナ2世』は
生粋の『ドイツ人』であり、伯爵夫人とイメージをダブらせることで、
『ドイツ人』3代をほのめかしてるのである。ちなみに、
【fis(<)es(<)as(<)c】は、「並び」(根音がas)が
【as(<)c(<)es(<)fis】なら、
「as」と「es」が(完全)5度、「as」と「fis」が増6度、なので、
「増五六の和音」(『ドイツの六』)となるのであるが、
チャイコフスキーはそこにひと細工こらして使用してるのである。
それはともかく、この
「3枚」のカードの秘密をめぐって主要人物
「3人」が死ぬオペラ(プーシキンの原作を問題にしてはいけない。
すでにジャンルが異なるチャイコフスキーのオペラである)において、
音楽上で軸になってるのは、
「パッション・モウティフ(パッション動機)」と私が名づけた
♪【【ラ<シ<ド>シ】】♪(♪【【ド<レ<ミ>レ】】♪)である。
バッハの「マタイ・パッション」の
♪【【ラーー・ー<シ<ド・>【【【シ】】ーー・ーー<♯ド<レ|>♯ド】】】……♪
ベートーフェンの「悲愴ソナタ」
♪【【ラーー・ーーーー・ーーーラ<シーー<ド|ドーーー・>シ】】……♪
チャイコフスキーにはあまたあるが、やはり「悲愴交響楽」の
♪【【ラ<シ|<ドー>シーーー】】♪
などや、また、
ヴァーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の「愛の動機」、
マーラーの「5番交響曲」のアダージェット章、
などに、「意図して」使われてるものである。これは、
「3度進んで2度下がる」という水前寺チータの精神であり、
♪かおるちゃん、おそくなぁって、ごめんね♪や
♪コトコト、コットン、ファミレドシドレミファァ~~~♪などで知られる
米山正夫の「三百六十五歩のマーチ」の「イントロ」にも
ハッキリと用い譜られてるのである。
♪ドーー・ーー>ラ・>ソ>ミ>レ・>ドーー|
<ドーー・ーー>ラ・>ソ>ミ>レ・>ドーー|
【【ド<レ<ミ・>【【【レ】】<ミ<ファ・
>【【【【ミ】】】<ファ<ソ・>【【【【【ファ】】】】<ソ<ラ|
>ソ】】】】】<ラ>ソ・<ラ>ソ<ラ・>ソーー・ーーー♪
さて、オペラ「スペイドの女王」では、【【これ】】がまず、
リーザとゲルマンの【【愛の主題】】の主要動機として使われる。
♪【【●ド<レ<ミ|ミン>レレー・ー】】、
【【レ<ミ<ファ|ファン>ミミー・ー】】、
ミ<ファ<ソ|ソー>レー・ー♪
しかし、最後、ゲルマンが自害して果てたときに、
賭博場にいる士官仲間らによって聖歌ふうな男声合唱が歌われたあと、
それと入れ違いに流される音楽において、
♪【【●♯ファ<ソ<ラ・ラン>ソ・ソー】】|
<【【●シ<ド<レ・レン>ド・ドー】】|
<【●レ<『♭ミ』<ファ・ファン>『♭ミ』・『♭ミー』】|
ーー<Nミー・ーー<ファー|……♪(変ニ長)
と、【【哀悼の動機】】に変えられて、
【【3回】】奏されるのである。そして、その
【3回め】の【●レ<♭ミ<ファ・ファン>♭ミ・♭ミー】のひと小節が、
変ニ長のナーポリ調であるニ長の属7の和声によって彩られるのである。すなわち、
通奏desを2ファゴ+トロ&チュー+コンバスが続ける上に、
2クラ+2トラ、そしてそのオクターヴ下を2ホル+2トロが和声を重ね、
弱音器を装着したコンバス以外の弦が上記の動機を弾く。その小節に至って、
「通奏des(<)g(<)a」に、
旋律弦のパッション動機として非和声音を連ねていくうえで
省略されてたようにみえた『♭ミ=e=ニ長の属7の第5音』が、
旋律の一部として断絶しながらも重ね描かれることよって、
ニ長の属7(第一展開形)がはっきりと打ちだされることになるのである。
チャイコフスキーという天才はおそろしく頭がきれる。この箇所の音楽は、
崇高、かつ、哀惜の念とヒトの死を悼む心が現れてるきわめて美しい世界である。
この研ぎ澄まされた美しさには、ただ涙を流して感激するしかない。
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