チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「ジョン・シンガー・サージェント画『カーネーション、リリー、リリー、ローズ』」

2010年08月14日 22時43分17秒 | 絵画・カウンタ(寓意がある希ガスる

サージェント カーネーション、リリー、リリー、ローズ


[J.S.Sargent "Carnation, Lily, Lily, Rose(1885、86)]
(ジョン・スィンガー・サージェント画「カーネイション、リリー、リリー、ロウズ」)

「お盆」はかつて旧暦7月15日で行われてたものが、
暦が変じられて136年余、今は現行暦の8月15日で行う方向に
全国統一されつつある。私より少し年上の知人に、
外資に勤める英国旅行が大好きな独身女性がいる。
毎年、夏休み(盆休み)には当然に英国に行ってる。
その女性が語るには、英国のコッツウォルズの景観が最高、
なんだそうである。私には
大自然の景色を楽しむ風流さが欠如してるので、
氷河急行に乗りたいとも、ブライス・キャニオンを見たいとも思わないし、
高原や海沿いで暮らしたいなどとも思わないが、
ベートーヴェンの生家だけは訪ねてしまったことがある。
♪おどま、ぼんぎり、ぼーんぎり、
 Bonnからさーきゃ、Holland♪
いつきいても、Beethovenには感動させられる。
ベートーヴェンは16歳のときに母マリア・マグダレーナ(マグダラのマリア)と死別した。
以降は白いカーネイションにしたかもしれない(※)。

ところで、
お盆といえば、こぼんではなく「お笑いスター誕生」でもなく、
「盆踊り」である。旧暦で15日は
満月もしくはそれに近い状態の月である。とくに、
夏の7月とあっては月明かりで夜は明るい。仮に曇ってても、
「お月様」みたいな色合いの提灯を掲げて照らすことで、
"涼しくなる"夜間に心おきなく踊ることができる。
庶民というものはそんなことでも楽しめれるのである。
息抜き、ガス抜き、ら抜きである。私は
呂尚や空海や安部公房のような学はないが、
「覆水も掬えば盆に返れることもある」
ということは知ってるのである。ともあれ、
私が子供の頃には、盆になると
(当時は東京では現行暦でも7月15日だったが)、
家でも盆提灯を飾った。八女(福島)提灯といって、
1本の骨が螺旋状に巻かれてるものである。それが、
明治18、19年に制作され、現在は
ロンドンのテイト・ギャラリーに展示されてる
ジョン・スィンガー・サージェントの
「カーネイション、リリー、リリー、ロウズ」に描かれてる。
この頃すでに英国に輸出されてたのだろう。

John Singer Sargent(ジョン・スィンガー・サージェント=1856-1925)は、
フィレンツェ生まれでイタリア育ちの米国人画家である。が、
祖国米国にはボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー女史や
後述する画家ミレイとの繋がり以外はあまり関係なく、
後半生のほとんどを英国で暮らし、ロンドンで死去した。この絵は、
前年にパリのサロンに出展した「マダムX」がゴスィップの的となったため、
英国に引っ越して描かれたものである。

コッツウォルズは、ストラッドフォード・アポン・エイヴォンの南、
オックスフォードの西、に広がる丘陵地である。のちに、あの
タイタニックで大西洋に沈む運命が待ってる米国人画家
Francis Davis (Frank) Millet
(フランスィス・デイヴィス・(通称フランク)ミレイ=1846-1912)は、
サージェントとはイタリア時代からの旧知の仲である。そのミレイの
コッツウォルズのブロウドウェイの別荘で、この絵は描かれた。
絵のモデルになってる二人の少女は、やはり仲間の挿絵画家
Frederick Bonnard(フレデリック・バーナード)の娘である。
画面向かって左が11歳のDorothy(愛称Dolly)、
もういっぽうが7歳のMary(愛称Polly)らしい。が、
当初はミレイの5歳の娘Kateをモデルにしたのだが、
幼いので落ち着いてることができなかった。

絵はどうみても夏の夕である。当初描いたものに
満足できず、サージェントは秋になってから、
この状況を「再現」して再び取り組んだという。
「印象派」にはあるまじき、「やらせ」的な制作法である。とはいえ、
記憶をもとに絵を描くのはそれほど
カンタンでもランタンでもなかったと思われる。この、
この垢抜けしない構図がそれを如実に物語ってる。が、
それを補ってアマリリスもありそうなくらいな魅力が、
この絵にはある。アンプレショニスト、サージェントが
この画題にこだわったのは、おそらく、
福島提灯が醸し出す光のまわり具合の
趣が心に取り憑いたからだろう。

さて、
この絵のタイトルはちょっと風変わりである。
"Carnation, Lily, Lily, Rose"
(カーネイション、リリー、リリー、ロウズ)
なんでも、
Joseph Mazzinghi(ジョウセフ・マッツィンギ=1765-1844)という
コルスィカ島出身の英国の作曲家の
"Ye Shepherds, Tell Me(The Wreath)"
(イー・シェパーズ、テル・ミー(ザ・リース))
「汝、羊飼いらよ、語りなさい(花輪)」
という合唱曲の中の歌詞、
"A wreath around her head, around her head
she wore, Carnation, lily, lily, rose, ……"
****♪●●ソー│<ソーーー・ー>ファ>レ>シ│<ドーーー・<レーーー│
       <ミーーー・ー>レ>ド<レ│>ドーーー♪
から採ったということである。が、
フランク・ミレイの奥さん、Elizabeth(エリザベス)の愛称である
Lilyに引っかけてあるのではないかと、森光子女史と二葉
百合子女史の顔と声の区別があまりできない
拙脳にしてダジャラーである私は、すぐに連想してしまうのである。
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