「スペ女王（シーン６終い）＃２１（景と二重唱）」

このナンバーは長いのである。悠未ひろ嬢の足くらいはあるかもしれない。
なにせ、リーザの運命の場面である。
大事な場面である。ナンバーも胸で十文字を切る「３」位一体の倍数２１である。
モデラート・アッサイ、Ｃ、無調号。
「来ぃへんいうことは、やっぱりあんヒトは悪党やったいうことやないの！
ほんまもう、恐ろしいわ。ごっつぅ怖いで」
変イ短で♪ラーラーラーーラ＜シ｜＜ドー＞ラーラーーー♪がカノられると、
塔の要塞の砲報が打ちはじめられる。
夜の１２時であるから、「１２」打である。
ここに、「トゥース（エイス）」が「ダーマ（クウィーン）」に「化け」る
まじないがかけられたのである。
→アッレーグロ・ジュスト、３♯。
「ああ、あんさんはワテの命や。というくらい、
ワテがどれほど思うてたんかわかっとんのか？
そやのに、ワテのおねだりもきかんと、来ぃへんとはな。
ワテはそんな性悪男に乙女心を奪われてもうたんや。痛すぎや。
ほんまもう、やっとられんわ」
リーザが諦めて立ち去ろうとしたまさにそのとき、
ゲルマンがやってきたのである。
「あ、あんさん。来てくらはったんやな。ああ、来てくらはったんや！
やっぱり、ワテはあんさんのもんや。信じてた甲斐があったっちゅうもんや。
あんさんは悪党なんかやおまへん！」
「いかにも。拙者、参上つかまつった。
ヘイ・ベイビー、カモン・ハニー！」
→アンダンティーノ・モッソ、９／８。
デュエットの始まりである。
♪ソ｜＜ラ＜シ＜ド・＜ミ＞♯ド＜レ・＜ファ＞♯レ＜ミ｜
　＜ソ＞ファ＞ミ・ミ＞♯ド＜ミ・＞レー♪
１８８７年の「６つのロマンス（歌詞はすべてコンスタンチーン大公殿下）」
（ｏｐ．６３）の＃６「セレナード」あるいは１８８８年の「５番交」緩徐章、
のような「上品」さがただよう節まわしである。この
「ふたりの愛の二重唱」は「イ長」。
２幕でエレ公がリーザへの思いのたけを歌ったアーリアは「変ホ長」。
最遠隔調の関係である。それはともかく、
ひとしきり愛を確かめ合うふたりであったが、やがてゲルマンは、
「拙者、鉄火場へ行き申す」と言いだす。
リーザは驚き、引き留めにかかるが、ゲルマンは聞く耳をもたない。
→モデラート・アッサイ、Ｃ、無調号。
→アンダーンテ・ノン・タント、１２／８。
ｖｎが「短短短・長」の「運命はかくのごとく扉を叩く」律動を開始。
→モデラート・アッサイ、Ｃ。
→アッレーグロ・ジュスト、３♯。
リーザの説得は徒労に終わる。
ゲルマンはすでに自制心を失い、「鉄火場」へと走り去ってしまう。
すると、リーザは悲観し、堤から運河に身を投げてしまう。
このオペラ、第２の死者である。
♪ラーーーラーーー｜ラーーーーーラ＜シ｜＜ドーーー＞ラーーー｜ラーーーーーーー♪
嬰ヘ短。
２幕、伯爵夫人が死んだあとの幕切れとおんなじ調性である。ちなみに、
溺死体を世にドザエモンという。成瀬川の力士体も土左衛門である。
♪なるせがわぁ、流れる岸辺ぇ。重いズウタ体は、還らずぅ♪