今夜は隅田川の花火だったようである。
享保18年(概ね1733年)の隅田の川開きの日に、
20発の花火を打ち上げたのが起源らしい。
川開きとは、旧暦5月28日乃至8月28日には、
川周辺での出店や納涼船を六つではなく四つまで許した
解禁期間のことである。前年の享保17年の
大飢饉によって、世相が悪くなってたのである。
享保18年の正月には、江戸でが初めての
打ち壊しがあったほどである。また、
吉宗は尾張の宗春を捨て置けない状態にあった。
初めて隅田川の川開きで吉宗の命で
花火が打ち上げられた年の前年3月、
江戸参勤となった宗春に対して
「上意」を藩邸に差し向けた。そこで、
宗春の倹約令違反を追及したのである。が、
宗春は反論した。吉宗はこれではっきりと
宗春下ろしを決意した。が、
この年の飢饉による死者の慰霊と悪疫退散を祈願して、
隅田川の川開きの日に水神祭を開催して
花火を打ち上げたのである。宗春が
御暇で国元に帰ったあとである。ともあれ、
隅田川には舟が多く浮かんだという。
リラの精はデズィレ王子にオロル姫に会わせてとせがまれる。
→リラの精は自家用真珠貝舟にデズィレ王子を乗せる。
→舟の運航とともに景色が変わる。
→眠ってる森へのトランスポーテイション。
→「パノラマ」である。
チャイコフスキーといえば、
甘美なメロディ、巧みなオーケストレイション、
というのが、一般的な評価である。が、
チャイコフスキーの真骨頂は、ハーモニーなのである。
なにも調性音楽における和声の極限をつきつめたり
限界を破壊して無味な音楽モドキを作ったわけではない。
ごく普通の和音を用いて、しかも、
舌を巻くようなお見事な和声進行を、
各楽器の音色も加味して「コンポウズ」する才能、
に満ちあふれてたのが、チャイコフスキーなのである。
[Andantino、6/8拍子、1♯(ト長調)]
このナンバーは、
[2小節の序奏→A主題(16小節)→B主題(8小節)
→A'主題→B主題→A'主題→13小節の結尾]
という小ロンド構成になってる。A、B、とはいっても、
まったく異なる素材の主題だというわけではなく、
律動はほとんど同じである。
[序奏]
低弦のピッツィカート、
オーボエ2管+クラリネット2管+ファゴット2管の16分音符刻みの主和音
(この和音の各音への楽器配置も絶妙)、
ハープの主和音のアルペッジョに導かれて、A主題が
両翼vnのオクターヴ・ユニゾンによって奏でられる。
(このブログで「カタカナ音符」を書くときの♪の前の*印は、
「カタカナ音符」の文字の音価を表してます。音符の数の逆数を
2のべき乗で表したときに*の数がそのべき乗数になってます。
たとえば、二分音符は全音符の1/2=1/(2^1)なので*♪、
四分音符は全音符の1/4=1/(2^2)なので**♪、
八分音符は全音符の1/8=1/(2^3)なので***♪、
十六分音符は全音符の1/4=1/(2^4)なので****♪)
[A主題]***♪(ここでは一文字が八分音符の音価で書いてあるということです)
(a)ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│<ドー>シ・ー>ラー│
(b)>ソー>ファ・ーーー│
(c)>ミー>・レー>♯ドー│<レー<・ミー<ファー│
(d)<ラー>ソ・ー>♯ファー│<ソーー・ー<ラ>ソ│
(a)<ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│<ドー>シ・ー>ラー│
(b)>ソー>♯ファ・ーーー(この♯ファ=cisをシと置き換えてニ長調)│
(a)<どー<れ・ー<みー│<そー>ふぁ・ー>みー│
(e)みー>れ・ー<みー│>どー・ーー(*)●●♪
((*)この「ど」=dをソと置き換え再びてト長調)
この両翼vnがpで奏でる主題の向こうで16分音符の刻みを吹かせる
管楽器の組み合わせを、チャイコフスキーはそれぞれ、
(a)=オーボエ2管+クラリネット2管+ファゴット2管
(b)=ホルン4管
(c)=ホルン4管+ファゴット1→2管
(d)=ホルン4管+ファゴット2管+コルノ・イングレーゼ
(e)=オーボエ2管+クラリネット2管+ファゴット2管+コルノ・イングレーゼ
(細かくいえば、交替する小節の冒頭8分音符はそれまでの楽器が残る)
と振り分けてるのである。その間、
主題の4小節めごとにハープが爪弾かれる。
なんというクールな楽器の使いかた・使い分けなことだろう。
その箇所ごとに見事に適合した音色である。
大作曲家といわれてる作曲家の中でも、これほどに
音楽・音質のセンスに長けた作曲家はいない。
(a)ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│<ドー>シ・ー>ラー│
までの3小節の間ずっとオーボエ2管+クラリネット2管+ファゴット2管が
主和音を16音符で刻み続け、旋律の流れとともに、
全体として1の三和音→1の7の和音→6の7の和音などと揺れ動き、
適度に「溜め」てからやっと4小節めで
刻みの和音を2の三和音「ラ-レ(-ファ)」に交替させるのである。しかも、
刻む楽器をホルンだけに交替させ、4拍以降でハープに分散させる、
という周到さである。
[B主題]***♪
(*)ラー>ソ・ー>ミー、│<ソー>フ・ァー>レー、│
<ラー>ソ・ー>ミー、│<ソー>ファ・ーーー、│
<ラー>ソ・ー>ミー、│<ソー>ファ・ー>レー、│
<ラー>ソ・ー、>ファ>ミ、│>レ>ド<レ、・<ファ>ミ>レ、♪
両翼vnが3度重ねでこの主題を奏する。そして、そのオクターヴ上を
チャイコフスキーはフルート2管に3度重ねで吹かせてる。まったくもって、
あざやかすぎる絶妙な音色の組み合わせが響くのである。いっぽう、
コントラバスが属音をpで通奏する。そのオクターヴ上の属音を
ホルン1管が吹き、ティンパニがトレモロでpppでロウルする。そのまたオクターヴ上の属音を
コルネット1管がやはり16分音符音符で刻む。
ヴィオーラとチェロが両翼vnのB主題に反行する音型を奏する。が、
それもまた3度重ねになってる。
4流作曲家が残した薄っぺらいスカスカなポピュラー音楽とまったく異なる。
このあと、[A主題]→[B主題]→[A主題]と繰り返され、
1小節の前置き(ハープが主和音のアルペッジョを上下して爪弾く)があって、
[結尾]***♪
♭シー>ラ・ー<♭シー、│>ラー>♯ソ・ー<ラー、│
>♭ラー>ソ・ー<♭ラー、│>ソー>♯ファ・ー<ソー、│
♭シー>ラ・ー<♭シー、│>ラー>♯ソ・ー<ラー、│
>♭ラー>ソ・ー<♭ラー、│>ソーー・ーーー│
ーーー・ーーー│ーーー・ーーー│ーーー・<<ドーー│ー●●・●●●(フェルマータ)♪
このとき、
この結尾の1小節乃至3小節の第6拍から次小節の第1拍にかけて、
***♪ソ│<ド♪、♪ド│<ファ♪、♪ファ│<ド♪
という至極短く単純な合いの手がハープによって入れられるが、
それらにはすべて管楽器が併せられる。しかしそれはまた、
フルート2管のオクターヴ・ユニゾン→フルート2管+オクターヴ下のコルノ・イングレーゼ
→クラリネット2管のオクターヴ・ユニゾン、
オーボエ1管→ホルン1管→トランペット1管、
というふうになってる。その絶妙な音色の橋渡しにも冴えわたる
チャイコフスキーのセンスには、まったく舌を巻くばかりである。
ところで、
このナンバーは全曲をとおして6/8拍子なのに、ほとんどが
「一小節が四分音符×3つ」である。だから、これを
「これを6/8拍子で振ると必ず無理がくるから、
非常に優れた指揮者は3/4拍子で振る」
なんていう6拍子も突拍子もないことを言うむきが
出てきてしまうおそれがある。
そんなむきにチャイコフスキーはどだい無理である。といっても、
アセロラ体操の仲里依紗女史が久本雅美女史だと思ってたほど、
人の顔の区別ができない程度の拙脳なる私の感想にすぎない。
このナンバーがどんな速度標語に指定されてるか、よく
考え併せてみると、真のチャイコフスキー愛好者、
チャイコフスキー大好き人間になら、
「見えて」くる。が、そうでない者には所詮解らない。
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」において、
[Andantino(アンダンティーノ)][6/8拍子]
といったら「リラの精の主題」の専売である。それに、
なにしろこのナンバーは、
「リラの精の小舟」が進むスィーンなのである。いっぽう、
第3幕ではオロルはめでたくデスィレと結婚の運びとなる。
「パ・ドゥ・ドゥ」は、
調性は、ト長調→ハ長調(→イ短調)→イ長調→ホ長調、
という、いかにも「リラの調」のような流れである。が、
その「アダージョ」(ハ長調)では、
「6/8拍子」でテンポも実質はおなじなのに、
[Andantino(アンダンティーノ)]ではなく、
[Andante non troppo(アンダーンテ・ノン・トロッポ)]なんていう、
奇天烈な速度標語でチャイコフスキーは差異を示してるのである。
[リラの精の主題]***♪
●ソ>ミ、・【ミ>レ>♯ド、│<レ<ミ<ファ】、・<ソーー│
ー、<ラ<シ、・<ド>シ>ラ、│>ソー>レ、・レーー♪
[パノラマの主題]***♪
ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│
<ドー>シ・ー>ラー│>ソー>ファ・ーーー│
>【ミー>・レー>♯ドー│<レー<・ミー<ファー】│
<ラー>ソ・ー>♯ファー│<ソーー・ー<ラ>ソ♪
つまり、この「パノラマ」の主題は、
「リラの精の主題」が素材になってるのである。
パノラミックな視界を持たないくせに
すぐに色眼鏡で面前の風景だけを見て
恣意的に歪めてしまうようなむきに、
チャイコフスキーは無理なのである。
ところで、
(1幕)第7曲で「成人したオロル姫」が登場する場面は、
[Allegro giusto、2/4拍子、無調号(ハ長調)]****♪
レーッ●●・>♯ドーッ●●│<レーッ●●・<ミ>レ>♯ド<ミ♪
で始まる。この[レ>♯ド<レ<ミ]は、上記、
【ミ>[レ>♯ド<レ<ミ]<ファ】
に内包されてるのである。この場面のすぐあとに、
オロル姫は紡錘に指を刺して倒れる。そして、
カラボスが予言した死をリラが100年の眠りに軽減する。つまり、
チャイコフスキーは[レ>♯ド<レ<ミ]という音型を使って、
この箇所ではオロルはリラの庇護下にあることを示してたのである。
ハ長(はちょう)といえば、
この「パノラマ」はト長であるが、チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の
傑作なナンバーの中でも、珠玉の輝きをとりわけ放ってる。ちなみに、
おもにアルカリ金属やアルカリ土塁金属などの各金属の最外殻電子の
炎色反応でさまざまな波長の色を帯ビタル現代の花火とは違って、
江戸時代の花火は硝石が低温で燃えるときの放射熱による
暗赤色の光しか見えなかった、ということらしい。
享保18年(概ね1733年)の隅田の川開きの日に、
20発の花火を打ち上げたのが起源らしい。
川開きとは、旧暦5月28日乃至8月28日には、
川周辺での出店や納涼船を六つではなく四つまで許した
解禁期間のことである。前年の享保17年の
大飢饉によって、世相が悪くなってたのである。
享保18年の正月には、江戸でが初めての
打ち壊しがあったほどである。また、
吉宗は尾張の宗春を捨て置けない状態にあった。
初めて隅田川の川開きで吉宗の命で
花火が打ち上げられた年の前年3月、
江戸参勤となった宗春に対して
「上意」を藩邸に差し向けた。そこで、
宗春の倹約令違反を追及したのである。が、
宗春は反論した。吉宗はこれではっきりと
宗春下ろしを決意した。が、
この年の飢饉による死者の慰霊と悪疫退散を祈願して、
隅田川の川開きの日に水神祭を開催して
花火を打ち上げたのである。宗春が
御暇で国元に帰ったあとである。ともあれ、
隅田川には舟が多く浮かんだという。
リラの精はデズィレ王子にオロル姫に会わせてとせがまれる。
→リラの精は自家用真珠貝舟にデズィレ王子を乗せる。
→舟の運航とともに景色が変わる。
→眠ってる森へのトランスポーテイション。
→「パノラマ」である。
チャイコフスキーといえば、
甘美なメロディ、巧みなオーケストレイション、
というのが、一般的な評価である。が、
チャイコフスキーの真骨頂は、ハーモニーなのである。
なにも調性音楽における和声の極限をつきつめたり
限界を破壊して無味な音楽モドキを作ったわけではない。
ごく普通の和音を用いて、しかも、
舌を巻くようなお見事な和声進行を、
各楽器の音色も加味して「コンポウズ」する才能、
に満ちあふれてたのが、チャイコフスキーなのである。
[Andantino、6/8拍子、1♯(ト長調)]
このナンバーは、
[2小節の序奏→A主題(16小節)→B主題(8小節)
→A'主題→B主題→A'主題→13小節の結尾]
という小ロンド構成になってる。A、B、とはいっても、
まったく異なる素材の主題だというわけではなく、
律動はほとんど同じである。
[序奏]
低弦のピッツィカート、
オーボエ2管+クラリネット2管+ファゴット2管の16分音符刻みの主和音
(この和音の各音への楽器配置も絶妙)、
ハープの主和音のアルペッジョに導かれて、A主題が
両翼vnのオクターヴ・ユニゾンによって奏でられる。
(このブログで「カタカナ音符」を書くときの♪の前の*印は、
「カタカナ音符」の文字の音価を表してます。音符の数の逆数を
2のべき乗で表したときに*の数がそのべき乗数になってます。
たとえば、二分音符は全音符の1/2=1/(2^1)なので*♪、
四分音符は全音符の1/4=1/(2^2)なので**♪、
八分音符は全音符の1/8=1/(2^3)なので***♪、
十六分音符は全音符の1/4=1/(2^4)なので****♪)
[A主題]***♪(ここでは一文字が八分音符の音価で書いてあるということです)
(a)ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│<ドー>シ・ー>ラー│
(b)>ソー>ファ・ーーー│
(c)>ミー>・レー>♯ドー│<レー<・ミー<ファー│
(d)<ラー>ソ・ー>♯ファー│<ソーー・ー<ラ>ソ│
(a)<ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│<ドー>シ・ー>ラー│
(b)>ソー>♯ファ・ーーー(この♯ファ=cisをシと置き換えてニ長調)│
(a)<どー<れ・ー<みー│<そー>ふぁ・ー>みー│
(e)みー>れ・ー<みー│>どー・ーー(*)●●♪
((*)この「ど」=dをソと置き換え再びてト長調)
この両翼vnがpで奏でる主題の向こうで16分音符の刻みを吹かせる
管楽器の組み合わせを、チャイコフスキーはそれぞれ、
(a)=オーボエ2管+クラリネット2管+ファゴット2管
(b)=ホルン4管
(c)=ホルン4管+ファゴット1→2管
(d)=ホルン4管+ファゴット2管+コルノ・イングレーゼ
(e)=オーボエ2管+クラリネット2管+ファゴット2管+コルノ・イングレーゼ
(細かくいえば、交替する小節の冒頭8分音符はそれまでの楽器が残る)
と振り分けてるのである。その間、
主題の4小節めごとにハープが爪弾かれる。
なんというクールな楽器の使いかた・使い分けなことだろう。
その箇所ごとに見事に適合した音色である。
大作曲家といわれてる作曲家の中でも、これほどに
音楽・音質のセンスに長けた作曲家はいない。
(a)ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│<ドー>シ・ー>ラー│
までの3小節の間ずっとオーボエ2管+クラリネット2管+ファゴット2管が
主和音を16音符で刻み続け、旋律の流れとともに、
全体として1の三和音→1の7の和音→6の7の和音などと揺れ動き、
適度に「溜め」てからやっと4小節めで
刻みの和音を2の三和音「ラ-レ(-ファ)」に交替させるのである。しかも、
刻む楽器をホルンだけに交替させ、4拍以降でハープに分散させる、
という周到さである。
[B主題]***♪
(*)ラー>ソ・ー>ミー、│<ソー>フ・ァー>レー、│
<ラー>ソ・ー>ミー、│<ソー>ファ・ーーー、│
<ラー>ソ・ー>ミー、│<ソー>ファ・ー>レー、│
<ラー>ソ・ー、>ファ>ミ、│>レ>ド<レ、・<ファ>ミ>レ、♪
両翼vnが3度重ねでこの主題を奏する。そして、そのオクターヴ上を
チャイコフスキーはフルート2管に3度重ねで吹かせてる。まったくもって、
あざやかすぎる絶妙な音色の組み合わせが響くのである。いっぽう、
コントラバスが属音をpで通奏する。そのオクターヴ上の属音を
ホルン1管が吹き、ティンパニがトレモロでpppでロウルする。そのまたオクターヴ上の属音を
コルネット1管がやはり16分音符音符で刻む。
ヴィオーラとチェロが両翼vnのB主題に反行する音型を奏する。が、
それもまた3度重ねになってる。
4流作曲家が残した薄っぺらいスカスカなポピュラー音楽とまったく異なる。
このあと、[A主題]→[B主題]→[A主題]と繰り返され、
1小節の前置き(ハープが主和音のアルペッジョを上下して爪弾く)があって、
[結尾]***♪
♭シー>ラ・ー<♭シー、│>ラー>♯ソ・ー<ラー、│
>♭ラー>ソ・ー<♭ラー、│>ソー>♯ファ・ー<ソー、│
♭シー>ラ・ー<♭シー、│>ラー>♯ソ・ー<ラー、│
>♭ラー>ソ・ー<♭ラー、│>ソーー・ーーー│
ーーー・ーーー│ーーー・ーーー│ーーー・<<ドーー│ー●●・●●●(フェルマータ)♪
このとき、
この結尾の1小節乃至3小節の第6拍から次小節の第1拍にかけて、
***♪ソ│<ド♪、♪ド│<ファ♪、♪ファ│<ド♪
という至極短く単純な合いの手がハープによって入れられるが、
それらにはすべて管楽器が併せられる。しかしそれはまた、
フルート2管のオクターヴ・ユニゾン→フルート2管+オクターヴ下のコルノ・イングレーゼ
→クラリネット2管のオクターヴ・ユニゾン、
オーボエ1管→ホルン1管→トランペット1管、
というふうになってる。その絶妙な音色の橋渡しにも冴えわたる
チャイコフスキーのセンスには、まったく舌を巻くばかりである。
ところで、
このナンバーは全曲をとおして6/8拍子なのに、ほとんどが
「一小節が四分音符×3つ」である。だから、これを
「これを6/8拍子で振ると必ず無理がくるから、
非常に優れた指揮者は3/4拍子で振る」
なんていう6拍子も突拍子もないことを言うむきが
出てきてしまうおそれがある。
そんなむきにチャイコフスキーはどだい無理である。といっても、
アセロラ体操の仲里依紗女史が久本雅美女史だと思ってたほど、
人の顔の区別ができない程度の拙脳なる私の感想にすぎない。
このナンバーがどんな速度標語に指定されてるか、よく
考え併せてみると、真のチャイコフスキー愛好者、
チャイコフスキー大好き人間になら、
「見えて」くる。が、そうでない者には所詮解らない。
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」において、
[Andantino(アンダンティーノ)][6/8拍子]
といったら「リラの精の主題」の専売である。それに、
なにしろこのナンバーは、
「リラの精の小舟」が進むスィーンなのである。いっぽう、
第3幕ではオロルはめでたくデスィレと結婚の運びとなる。
「パ・ドゥ・ドゥ」は、
調性は、ト長調→ハ長調(→イ短調)→イ長調→ホ長調、
という、いかにも「リラの調」のような流れである。が、
その「アダージョ」(ハ長調)では、
「6/8拍子」でテンポも実質はおなじなのに、
[Andantino(アンダンティーノ)]ではなく、
[Andante non troppo(アンダーンテ・ノン・トロッポ)]なんていう、
奇天烈な速度標語でチャイコフスキーは差異を示してるのである。
[リラの精の主題]***♪
●ソ>ミ、・【ミ>レ>♯ド、│<レ<ミ<ファ】、・<ソーー│
ー、<ラ<シ、・<ド>シ>ラ、│>ソー>レ、・レーー♪
[パノラマの主題]***♪
ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│
<ドー>シ・ー>ラー│>ソー>ファ・ーーー│
>【ミー>・レー>♯ドー│<レー<・ミー<ファー】│
<ラー>ソ・ー>♯ファー│<ソーー・ー<ラ>ソ♪
つまり、この「パノラマ」の主題は、
「リラの精の主題」が素材になってるのである。
パノラミックな視界を持たないくせに
すぐに色眼鏡で面前の風景だけを見て
恣意的に歪めてしまうようなむきに、
チャイコフスキーは無理なのである。
ところで、
(1幕)第7曲で「成人したオロル姫」が登場する場面は、
[Allegro giusto、2/4拍子、無調号(ハ長調)]****♪
レーッ●●・>♯ドーッ●●│<レーッ●●・<ミ>レ>♯ド<ミ♪
で始まる。この[レ>♯ド<レ<ミ]は、上記、
【ミ>[レ>♯ド<レ<ミ]<ファ】
に内包されてるのである。この場面のすぐあとに、
オロル姫は紡錘に指を刺して倒れる。そして、
カラボスが予言した死をリラが100年の眠りに軽減する。つまり、
チャイコフスキーは[レ>♯ド<レ<ミ]という音型を使って、
この箇所ではオロルはリラの庇護下にあることを示してたのである。
ハ長(はちょう)といえば、
この「パノラマ」はト長であるが、チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の
傑作なナンバーの中でも、珠玉の輝きをとりわけ放ってる。ちなみに、
おもにアルカリ金属やアルカリ土塁金属などの各金属の最外殻電子の
炎色反応でさまざまな波長の色を帯ビタル現代の花火とは違って、
江戸時代の花火は硝石が低温で燃えるときの放射熱による
暗赤色の光しか見えなかった、ということらしい。
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