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単発Webノベル

2008年04月01日 19時41分28秒 | つぶやき
「鉄の小部屋」

木々の間から眩しい光がこぼれる。
小鳥達が歌い、
近くからは小川の流れる音が聞こえる。
驚くほど透明な水に素足を浸すと足の間を小さな魚がすりぬけてゆく。
冷たい…。

風がゆるやかに体をとおり抜けていく。
河原では、子供たちが遊んでいる。
幸せな日々。
生きていて良かった。
妻への、息子への愛おしさが胸の中にあふれだした。


目が覚めると、そこには鉄の壁とモニター画面が輝く小部屋だった。

家庭用シェルター。
核の恐怖から家族の命を守るための商品。
核爆発にも耐えるこの商品は、ユーザーの生命を維持するめに、高性能な空気浄化装置を備えている。
また、排泄物を食料や水に変換し、外部の放射能レベルが下がるまでの間、この狭い空間の中で生活することができる。
高額なために、日本でも少ししか流通していないだろうこのシェルターを、まさか使用する日が来るなんて…

最初でこそ外部の生存者をネット経由で探そうとしたが、こんな状態でサーバーが生きているはずはなく、外部との通信は不可能な状態だった。
あの日、妻と些細な事で喧嘩になった。
このシェルターは、いつも僕の隠れ家になっていて、何かあるとここに逃げ込み、妻の怒りが鎮まるのを待った。

そこまではいつもどおり。
突然けたたましいブザーが鳴り、アラートが表示された。ハッチがロックされる。
画面が真っ赤になり、オートで緊急モードにはいったのだ。
妻を…息子を、外に残したまま、僕一人が助かったのだ…
緊急モード。
シェルターのレーダーが発射された核ミサイルを感知した時に作動する。

なんで…僕だけ生き残っても意味ないのに…

世界に取り残された僕。
涙がまた溢れてきた。


また眠る… キレイだった頃の世界の夢。
不満ばかり言って喧嘩ばかりしていた日々が懐かしい。

僕の目をさましたのは、モニターに映し出された警告メッセージだった。

シェルターに故障。5分後にハッチのロックが外されるとの表示が…
外は、まだ放射能で汚染されてるはず…
妻と、息子のところへ行けるのか…

死までの5分は長く感じられた。
ハッチがゆっくり開いていく…

…あれ?
外には、いつもの景色と、妻と息子の姿があった。

「あなた、三日間も閉じ込められてたのよ」

このシェルターには不良が発見されており、誤作動で緊急モードにはいる事があったのだ。
メーカーの人が半日かけてセキュリティを解除し、ハッチを開けてくれたそうだ。
僕は、家族との再会を喜び抱き合った。
幸福な日々が戻ってきた。

…またシェルターから緊急モードのブザーがなる。
また故障だな。
みんな、入ると綴じ込められるぞ…。

僕ら家族の前でシェルターのハッチが静かに閉まる。

玄関のチャイムが鳴った。
…さっき帰ったシェルターメーカーの修理員さんだ。

「スイマセン、こちらにサインいただくのを忘れてました。」

手渡された紙は、シェルターの不良を無料で修理したという証明書だった…。

世界が平和でありますように。


…いや、なんとなく書いてみました。
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