自民党の麻生副総裁が12日の安倍晋三・元首相の葬儀で、友人代表として述べた弔辞の詳しい内容は出席者によると、
以下の通り。
安倍先生、今日はどういう言葉を申し上げればよいのか、何も見つけられないまま、この日を迎えてしまいました。
参院選の街頭遊説のさなかに凶弾に倒れた。いくら何でもそれはなかろう。
この事態は私にとって、到底受け入れられるものではありませんでした。
そしてまた、多くの国民もやり場のない怒りや悲しみに暮れております。
誰もがどうお悔やみを申し上げればよいのか、その言葉すら知りません。
ただただ、ご冥福(めいふく)をお祈りするばかりであります。
振り返りますと、先生と私は随分長い時間、お付き合いをさせて頂いたことになります。
時に官房副長官と政調会長、時に総理と幹事長、時に総理と副総理として、先生とは政策、また政局において様々な課題に取り組んで参りました。
そこにありましたのは、先生との信頼関係。
いかなる局面においても、日本という国、及び国益を最優先する信念、先生と私をつなぐ一番の絆であることを確信しております。
少々、かっこよく言い過ぎたのかも知れません。
普段はお酒を酌み交わし、ゴルフ場で冗談を言いながら回る。
むしろ、そんないつもの光景の、そこにあった安倍先生の笑顔が目を閉じれば浮かんでまいります。
総理としてのご功績は今更私が申し上げるまでもなく、多くの方々の知るところであります。
内政はもちろんのこと、外交において、間違いなく、戦後の日本が生んだ最も優れた政治家ではなかったか、そう確信するものであります。
戦後最長となられた在任期間を通じ、積極的な安倍外交は、あなたの持ち前のセンスと、守るべき一線は譲らない類まれなる胆力によって、各国の首脳からも一目置かれ、日本のプレゼンス、存在を飛躍的に高めたと確信しております。
あなたが総理を退任された後も、ことあるごとに「安倍は何と言っている」と、各国首脳が漏らしたことに私は日本人として誇らしい気持ちを持ったものであります。
世界が今、大きな変革の下に、各国が歩むべき王道を迷い、見失い、進むべき羅針盤を必要とする今この時に、あなたを失ってしまったことは日本という国家の大きな損失にほかならず、痛恨の極みであります。
先生はこれから、(父親の)晋太郎先生の下に旅立たれますが、今まで成し遂げられたことを胸を張ってご報告をして頂ければと思います。
そして、(祖父の)岸信介先生も加われるでしょうが、政治談議に花を咲かせられるのではないかとも思っております。
ただ先生と苦楽を共にされて、最後まで一番近くで支えて来られた昭恵夫人、またご親族の皆様もどうかいつまでも温かく見守って頂ければと思います。
そのことをまた、家族ぐるみのお付き合いをさせて頂きました友人の一人として心からお願いを申し上げる次第であります。
まだまだ安倍先生に申し上げたいことがたくさんあるのですが、私もそのうちそちらに参りますので、その時はこれまで以上に冗談を言いながら、楽しく語り合えるのを楽しみにしております。
正直申し上げて、私の弔辞を安倍先生に話して頂くつもりでした。
無念です。
令和4年7月12日 元内閣総理大臣 友人代表 麻生太郎