「ビビを見た!」 大海あかし 124頁
『ビビを見た!』は1974年理論社刊で2004年に再刊された。
文も版画も大海さんの手になるもので、
よしもとばななさんをはじめ熱烈な要望により復刊された。
この児童書のインパクトたるや絶大で避けられない。
不条理で説明のつかない物語と赤や黒等の少色のみを使って
飛び込んでくる不気味な原色の挿絵版画が合間って、
当時の読者の小学生に一度読んだらゼッタイ忘れない、
というトラウマとカリスマを叩き込んだ本なのです。
真っ黒なページに白抜きの文字で始まる不思議。
「七時間だけ目が見えるようにしてやろう」
三月も終わりのある日、生まれてから目が見えないホタルに、
突然声が頭の中に聞こえた。
何故なのかの説明は一切ないまま物語は転がります。
ホタルの目が痛み始め、目が見えるようになる瞬間、
「ホタルのまぶたに、たくさんの、すごく小さい、
あやしい虫が羽音もたてずにたかる」ーそれが光だった。
初めて目で世界を赤ん坊のように見ることに驚くホタルで
あったが、気がついてみると、ホタルの他の人々は母親を
はじめ、皆、目が見えなくなっていた。
ホタルの目が見えるようになったと同時に何か非常事態が発生しているようだ。
正体不明の敵が訪れたとアナウンサーがテレビで告げている。
何と残酷なことだろう。
限られた時間に、もっともっと見たいものがあるだろうに、
何ものか分からない敵から逃げ出さねばならず
追われるホタル一行。
美しい世界を見る余裕もなくホタルは疎開の特急コガラシ号
に乗る。
そこで、美しい緑色の少女ビビに出会う。
残された時を惜しむように、ホタルはビビを見つめる。
ビビもどういう理由か目が見えているようだ。
特急を地平線の彼方から謎の醜い超巨人が追いかけてくる。
どうやらビビを掴まえたいようである。
巨人は殺戮と破壊をもたらしまくるがビビ以外の人間は
虫ケラ以下としか目に映らない
この本は胎児の絵に始まり、地蔵菩薩像の絵に終わる、
どちらも他に色彩も絵もなく黒一色でホタルの盲目の世界
を表しています
繰り返しますが多くの不条理な出来事は全て中途半端、
説明の無いまま物語は終わってしまいます。
巨大なインパクトを受けながら困惑し考え込む読者達。
確かにこれは一度読んだらゼッタイ忘れられません。