
前回は、マニキュアによるレプリカ法と葉の表皮剥離サンプルで観葉植物の気孔を観察しました。
その結果、剥離サンプルと完全に同じ像は得られないものの、簡易的な気孔観察には適していると思いました。そこで、剥離サンプルを作るのが現実的でない多肉植物のリトープスの気孔をこの方法で観察してみることにしました。
検鏡の方法は、前回を参照してくださいな。
リトープスは形が奇妙な多肉植物です。植物の少ないナミビアあたりの乾燥地帯に生育する関係で、動物に食べられないように石ころのように擬態していると言われています。また、昆虫のように脱皮することでも知られ興味深い植物です。
気孔観察に、脱皮した皮を調べるのも良いかなとは思ったのですが、マニキュアによるレプリカ法がとても簡単だったのでこの方法で観察してみました。
野生では砂利に埋もれていることも多いため、窒息しないように気孔は空気に触れやすい上面にあるのかと予想しました。しかし・・
リトープスの上面からレプリカを作り顕微鏡の100倍で観察した画像です。5〜7角形が敷き詰められた特徴的な表面をしていました。気孔と思えるものが一つも見つかりませんでした。
400倍の画像は・・
5〜7角形の中にドーナツ型の構造でおもしろい表面です。
予想に反してリトープスの上面に気孔が見つからなかったので側面を調べてみたところ・・
100倍の顕微鏡写真。上面には無かった気孔が見つかりました。コントラストが強く唇型をしているのが気孔のレプリカです。
100倍画像を拡大してみると・・
こんな感じ。ピントの調節操作から、気孔は多角形が敷き詰められた面より少しだけ盛り上がっていました。レプリカなので、現物の気孔は、多角形表面より凹んでいることを示しています。気孔を取り囲む2〜3個の多角形が周囲と異なり黒っぽく写っています。気孔の周囲の表皮細胞の構造が他とは違っていることを示しています。
400倍で観察すると・・
気孔は閉じていることがわかりました。ちなみにサンプル調整は薄曇りの日の14時頃でした。
気孔は窪んだ底にあることがわかりましたが、いまひとつ具体的にイメージできないのでマクロレンズで撮った写真をめいいっぱい拡大してみることに・・
上面と側面の境界あたりを拡大てみます。上の写真の四角のあたりです・・
上面は粒々の構造が規則正しく並んでいました。一方、側面の領域では、盛り上がった細胞?に囲まれた小さな穴が多数見られました。白矢印の先です。写真にはそれ以外にも多数の穴が写っています。
おそらく、これらの穴の底に気孔があるのでしょう。そして穴の周りがやや隆起していることから、レプリカでは気孔の周囲数個の構造が黒っぽく写ったと考えました。
【まとめ】
- リトープスの表皮は、5〜7角形が敷き詰められた区画に粒々が盛り上がった特徴的な構造をしていました
- リトープスは野生では砂利に埋もれていることもありますが、気孔は上面には無く、側面だけに存在していました
- 気孔は表皮にある小さな穴の底にあり、穴の周りはそれ以外の部分よりわずかに隆起しているように見えました
- 今回調べた範囲では気孔は閉じていました
- 気孔が側面にしかないので土に埋もれさせて育てるのは避けたほうが良さそうだとわかりました
【今後の予定】
- 脱皮
- 花
- 楽しみ
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