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野田暉行 追悼演奏会

2024年12月26日 | pocknのコンサート感想録2024
12月18日(水)野田暉行 追悼演奏会
東京文化会館小ホール


【曲目】
1.フルートと打楽器のための「エクローグ」(1970)
Fl:多久潤一朗/Perc:藤本隆文
2.ギターのための「グランドコンソレーション」(2007)
G:福田進一
3.ヴァイオリンとピアノのための「庭園にて」(1986)
Vn:植村理葉/Pf:岡田博美
4.ピアノのための「モノドラマ」(1994)
Pf:岡田博美
5.尺八、筝、チェロのための「リフレクション」(1976)
尺八:黒田鈴尊/筝:平田紀子/Vc:山澤慧
6.弦楽四重奏曲 (1986)
クァルテット・エクセルシオ
(アンコール)
♪ ヴァイオリンとピアノのためのSMILE (2019)
Vn:植村理葉/Pf:岡田博美

2022年に亡くなった野田暉行氏の三回忌にあたる今年、「野田暉行追悼演奏会実行委員会」が結成され、日本のトップアーティストたちによる野田作品の個展が実現した。僕にとっての野田作品との出会いは、小学校の映画鑑賞教室で観た「空がこんなに青いとは」のなかで繰り返し歌われていた同名の合唱曲。この曲がとても気に入って、音楽の先生にお願いして授業で取り上げてもらった。野田が気鋭の現代作曲家であることを知ってからは、器楽曲や管弦楽曲も聴くようになり、1983年に草津で聴いた個展(野田氏が急遽指揮を担当)は今でも覚えているし、合唱曲「青春」は、自分で歌うことは叶わなかったが、何て素晴らしい歌なんだろうと楽譜も購入して繰り返し聴いた作品だった。

そんな野田暉行の1970年代から2000年代までの器楽、室内楽作品をまとめて聴く機会となったこの演奏会で感じたのは、どの曲も古典的といってもいいほど構成がしっかりしていて、緻密な作りでメッセージ性が強いということ。古典的と云っても、前衛音楽が最も元気だった頃の中心的存在だった野田の音楽は、アグレッシブで挑戦的なものが多い。そのうえに、ある種のロマンティシズムが漂っているのは、僕が親しんでいた合唱曲の作曲家であることを思い起こさせた。この演奏会には、そんな野田作品の真価を最高の形で音にしてくれるアーティストが集まり、ハイレベルの演奏が繰り広げられた。

フルートと打楽器のための「エクローグ」は、即興的な息吹が迸る音楽で刺激的だった。ピアノのための「モノドラマ」は岡田博美の見事なピアノ演奏が、緻密に構成された厳しい音楽に命を与え、しなやかで柔軟な呼吸を生んだ。できれば岡田が委嘱したという野田の遺作となってしまったソナタも聴いてみたかった。

尺八、筝、チェロのための「リフレクション」は、今夜のプログラムで最も感銘を受けた音楽。和楽器を使いながらも、和のテイストを越えて楽器の持つ特性が最大限に生かされたグローバルな音楽だと感じた。弦楽四重奏曲は特に第1楽章が印象深かった。デリケートで色彩感があり、自由な動きのある作品を、クァルテット・エクセルシオの各メンバーが柔軟に歌を交わしつつ緻密で能動的なアンサンブルを築いた。2楽章以降は少々型にハマった音楽という印象を受けたが、エクセルシオがここからも音楽の魅力を最大限引き出していたと思う。アンコールでは野田氏の心温まる一面を聴かせてくれた。

「野田暉行追悼演奏会実行委員会」は是非今後も活動を継続し、オーケストラやコンチェルトなど、大規模な作品も含む野田作品の全貌に光を当ててもらいたい。

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