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Willkommen, Bach! (ライプツィヒ・トーマス教会コンサート)

2023年10月04日 | pocknのコンサート感想録2023
9月16日(土)Willkommen, Bach! (ようこそ、バッハ!)
ライプツィヒ・トーマス教会


【曲目】
1.シャイン/神よ、我ら汝を褒めたたえん
2.シャイン/ビーナスの冠~カンツォン第24番
3.シェレ/深き淵より
4.クーナウ/我が魂、汝を褒めたたえん
5.クニュプファー/神よ、われを調べ
6.シャイン/「音楽の饗宴」~組曲17番
7.バッハ/正しき者は滅びしも BWV(deest)
8.ローゼンミュラー/恐れることなかれ
9.ローゼンミュラー/われらのもとに留まりたまえ
10.バッハ/ミサ曲ロ短調~ドナ・ノービス・パーチェム
(アンコール)
♪ バッハ/イエスは我が喜び

【演奏】合奏:ミヒャエル・プレトリウス、アンサンブル1684/合唱:ゲヴァントハウス合唱団、聖トーマス声楽スクール聖歌隊、トーマス教会少年合唱団年少部(3年次生)、聖トーマス声楽スクール少年合唱団/S:マリア・ライストナー、アンナ・ゴルガルツェ/Org:ヨハネス・ラング/指揮:グレゴール・マイアー、ユーディト・ゲルハルト、アンナ・ゴルガルツェ

今年はバッハがトーマス教会のカントルに就任して300年を迎える年。ライプツィヒでは記念の催しが多く行われるなか、トーマス教会で"Willkommen, Bach!(ようこそ、バッハ!)"という夜のコンサートを聴いた。トーマス教会ゆかりの演奏団体が一堂に会し、バッハより以前にトーマス・カントルを務めた作曲家の作品でバッハの到来を待ち望むという、この年この場所ならではの演奏会だ。

最初のシャインのコラールは、1番から12番まで歌詞があって演奏の組み合わせを替えつつ進み、最後の12番では聴衆も歌に加わり、教会に居合わせた全員による合唱と合奏が堂内に響き渡った。華やかなオープニングの後は、シャインのオルガン独奏曲が穏やかに響き、それからは歌と器楽による多彩な音楽が演奏された。
若い音楽家グループの「ミヒャエル・プレトリウス」と「アンサンブル1684」は、古楽器を用いて古風な趣の調べを自然な表情で聴かせた。生き生きとリズムを刻み、時代を越えても変わることのない感情を素直に表現した。管楽器の腕前も見事。

合唱ではゲヴァントハウス合唱団が艶と輝きのある響きで深い表情を歌い上げ、トーマス教会少年合唱団予備軍の年少の子供たちによる合唱は、音程に不安定なところがあるものの、柔らかく澄んだ歌声が綺麗に響いた。他に聖トーマス声楽学校の2団体の合唱が加わった。2人のソリストの歌は全体のなかでくっきりと美しく浮き立ち、細やかで優しい表情の歌を聴かせた。

トーマス教会は豊かな残響があり、天国的な美しい響きが生み出される。そのなかで歌詞もきちんと聴こえてくるのは、今夜の演奏団体がこの聖堂で演奏する術を心得ていて、無理なく最良の響きを作り出すためだろう。入場時に「ラッキーでした」と云われて渡された最後の1冊となったパンフレットには、演奏曲目全ての歌詞が載っていたのも鑑賞の助けとなった。


バッハより100年遡るシャイン、そこから75年下ったクーナウまで、バッハより前に生まれた5人の歴代トーマスカントルの作品は、時代を下るに連れて、素朴で真っ直ぐに魂に訴えてくる音楽に、細やかで多彩な綾が加わってくる。そして、バッハ直近の前任者クーナウの曲をバッハが編曲したモテット「正しき者は滅びしも」では、内声のハーモニーや動きがにわかに豊かになるのを感じた。

ローゼンミュラーの「われらのもとに留まりたまえ」が、この後のバッハの曲を待ち望む気持ちを高め、バッハの「ドナ・ノービス・パーチェム」が満を持して堂内に響いた。それまでの歴代カントルの作品もそれぞれ素晴らしかったが、これを聴くと、バッハがいかに桁外れの卓越した作曲家であるかを実感せずにはいられなかった。厳かななかに温かな光が溢れ、クライマックスへと向かう中でこの上ない至福で満たされ、ティンパニが入って音楽が最高潮に達すると、全身にトリハダが立った。この響きの中にいつまでも身を置いていたい気持ち。

余韻が完全に収まってからも静寂が続いたあと、聴衆は立ち上がって振り返り、大喝采と大歓声。アンコールは、管・打楽器が華やかに加わったアレンジによる「主よ、人の望みの喜びよ」。トーマス教会で育まれた作品の数々と、バッハの音楽に浸る喜びを味わい尽くす夜となった。




鈴木雅明:音楽講演会「バッハとライプツィヒ」
バッハのカンタータ第147番「心と口と行いと生活」のコラール

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