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早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団第76回定期演奏会

2017年06月08日 | pocknのコンサート感想録2017
5月28日(日)松岡 究 指揮 早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団
~第76回定期演奏会~
杉並公会堂


【曲目】
1.ウェーバー/「魔弾の射手」序曲 Op.77
2.シューベルト/交響曲第7番「未完成」ロ短調 D.759
3.リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」Op.35

「早稲フィル」こと早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団は、子供達が通っていた小学校の音楽鑑賞教室に毎年来てくれて、子供が卒業してからも地域住民として聴いている馴染みの学生オケだ。上手いし、子供たちと積極的に関わってくれる姿勢も好ましく、いつか定期演奏会を聴きたいと思っていた。去年冬の定期演奏会を聴こうとしたらチケットは既に完売だったので、今回は早くからチケットを予約して夫婦で聴いて来た。期待はしていたが、それを遥かに上回る素晴らしい演奏会だった。

最初の「魔弾の射手」でいきなり圧倒された。物語の開始を告げる弦の分厚いユニゾンが充実した音で鳴り響き、一気に引き込まれた。森の彼方から聞こえるようなホルンの美しいハーモニーの序奏部に続いて始まった提示部は、かっちりと音を刻んで勇ましく進む。アインザッツが迷わず物おじせずに飛びかかり、音をしっかり捉える弦、充実した金管の響き、思い切りよくくっきりと歌う木管、それにパーカッションが加わって生み出すトゥッティの強音の、何と堂々とした響き!鳥肌が立った。いかにもドイツ!という感じの、しっかりした土台に音が積み重ねられ、しなやかな音像が描かれて行く。指揮の松岡氏はオペラの世界でも活躍しているというが、いくつもの山を越えながらクライマックスを築いて行くドラマチックな音楽作りに共感を覚えた。短い音楽だが、そこに込められた巨大なエネルギーが迫ってくる名演だ。

続いて名曲の誉れ高い「未完成」。この曲のようにあまりに有名な音楽は反って演奏が難しいものだが、ここでも早稲フィルはやってくれた。厳しさと、天上的な幸福感という、この曲が併せ持つ魅力を、鮮やかに、堂々と、深い表情を湛えて伝えてくれた。「未完成」は、作品自体から底知れない深遠さとか神々しさ、深刻さで貫かれた「非現実性」を感じるが、松岡/早稲フィルの演奏からは、そうした姿がリアルに伝わってきた。第1楽章の第2主題を奏でるチェロの歌が、なんと深い抒情を湛えていたことか、また第2楽章での、どこでブレスを入れているのかわからないほど息が長く、高いテンションを保って寂寥感を伝えるクラリネットは達人並み!こういう「名人」が、このオケには何人もいるのだ。こんな「未完成」を聴けて幸せだった。

最後の「シェエラザード」も見事。このオケの素晴らしいところは、全員が一丸となって全力で演奏に向かっている姿が感じられるところ。弦楽器にしても、一番後ろのプルトのプレイヤーに至るまで、弓を大きく使って積極的に挑んでいるのが見て取れる。そうした姿勢が、演奏にエネルギーを与え、表現力を高める。トゥッティの響きも相変わらず充実の極みだし、そこに散りばめられた各管楽器のソロの妙技にも惚れ惚れで、オーケストレーションに長けたリムスキー=コルサコフの音世界による波乱万丈の音楽劇を鮮やかに具現して行き、聴いていて何度も鳥肌がたった。そして、曲中度々登場するヴァイオリン・ソロを受け持ったコンミスの山田百香さんの演奏は、美しく、なまめかしく、吟遊詩人のごとく語りかけ、歌いかけてきた。山田さんのソロを聴いていたら、メンデルスゾーンのコンチェルトなんかを聴いてみたい!と思うほど、ソリストとしての魅力を感じさせた。

3曲を通じて早稲フィルの演奏は、音楽の持つ魅力を再発見させてくれるハイレベル、ハイテンションで感動もの。「上手い」と言われている伝統ある一部老舗的な学生オケは入場料も高いが、早稲フィルは前売り500円という低設定で、健全なアマチュア精神に則って活動している素晴らしい団体だ。次の定期も聴きたい!

早稲田大学フィルハーモニー管弦楽団 in 落六 2016.6.11
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さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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