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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

マレイ・ペライア ピアノリサイタル

2013年10月17日 | pocknのコンサート感想録2013
10月15日(火)マレイ・ペライア(Pf) 
すみだトリフォニーホール
【曲目】
1.バッハ/フランス組曲第4番 変ホ長調 BWV815
2. ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 Op.57「熱情」
3. シューマン/ウィーンの謝肉祭の道化 Op.26
4.ショパン/即興曲第2番 嬰へ長調 Op.36
5. ショパン/スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
【アンコール】
1. ショパン/ノクターン ヘ長調 Op.15-1
2. ショパン/エチュード 嬰へ短調 Op.10-4
3. ショパン/エチュード 変イ長調 Op.25-1「エオリアンハープ」

ペライアのリサイタルを初めて聴いてすっかり魅了されたのは、5、6年前ぐらいだったかと思って調べたらとんでもない、演奏会の感想をブログに載せるようになるより遥か昔の15年も前のことだった。何ということだ!そのときの演奏は今でも記憶に刻まれているが、今回はそれに比べて不完全燃焼で終わった。それでも、3曲目にやったシューマンは印象に残ったので、まずはその感想から。

「クライスレリアーナ」や「子供の情景」が作曲された翌年に書かれた、この比較的規模の大きな作品はあまり演奏される機会はないし、僕にとってもなじみが薄いが、瑞々しさと詩情に溢れた魅力的な作品だ。ペライアは弾力性のあるしなやかなリズムに乗せて、自由で伸びやかに新鮮な息吹きを振り撒いた。第2曲「ロマンス」の、はにかんだような表情には懐かしい温もりが包み込まれていてずっと聴いていたかったし、第4曲「間奏曲」から聞こえる「問いかけ」もシューマンらしさを色濃く伝えていた。

最終楽章はカーニバルらしい賑やかで浮かれた気分が全開、音同士が手を取り合って踊りまわっていた。ペライアの演奏には、映像的な臨場感だけでなく、カーニバルというお祭りの根底にある血が騒ぐような熱い民族臭が発せられているのが感じられた。

シューマンに比べて他の曲目の演奏は印象が薄い。フランス組曲は、バッハの鍵盤作品のなかでも穏やかでポリフォニーの絡みも声部が少ない分緩やかなだけに、15年前のリサイタルでイギリス組曲を聴いて「暗闇に灯ったろうそくの明かりのように 、暖かくて柔らかく、心の深いところまで染みてくるよう」と感想を記したような演奏を期待したが、穏やかで落ち着いてはいるが、淡白な印象で、しっとり感も楽し気な戯れも伝わってこなかった。

ベートーベンの「熱情」からも強いメッセージが伝わってこない。第1楽章終盤のエネルギー迸る重量感や、第3楽章終盤では火のついた激しい燃焼が胸に迫ってきたが、それが逆に「どうして他のところもこういう風にやってくれなかったのか」という疑問を生んだ。

アンコールも含めると5曲弾いたショパンは、切り口が鋭く、熱いパッションを感じる存在感のある演奏ではあったが、前回聴いたリサイタルの感想で「垂涎ものの煌めく美音の躍動」と記したほどの強い印象は受けなかった。

15年も前に聴いたリサイタルで深く感銘を受けた記憶がいまだに残っているし、今も人気・実力共にピカイチのペライアのリサイタルを聴いてこんな感想しか持てないのはどうも腑に落ちない。座った席は3階の後方で、視覚的にも聴覚的にもかなり遠い感じがしたので、それも影響したかも。だけど、1階のど真ん中に座って音がよく届いてこない経験があったので上のフロアにしたのだが・・・ トリフォニーは見た目は素敵なホールだが、どうも音響の印象はよろしくない。ペライアにとっても演奏しにくかったとなれば、今日の冴えない印象も納得できてしまうが、その真偽はともかく、もし今度またペライアを聴く機会があったらトリフォニーではないホールで聴いてみたい。

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