10月3日(木)葵トリオ
~Pf:秋元孝介/Vn:小川響子/Vc:伊東裕~
ピアノ・トリオ・フェスティヴァル2024-Ⅱ
紀尾井ホール
【曲目】
1.ツェムリンスキー/ピアノ三重奏曲ニ短調 Op.3
2.コルンゴルト/ピアノ三重奏曲ニ長調 Op.1
3.シェーンベルク/シュトイアーマン編/浄夜 Op.4(ピアノ三重奏版)
【アンコール】
♪ モーツァルト/ピアノ三重奏曲ト長調 K.564~第3楽章アレグレット
完璧とはこういう演奏を云うのか、と云いたい演奏をする葵トリオ。無音から音がどう立ち現れ、歌い、消えて行くか、そこにどんな熱量が注がれ、どんな香りや色合いを施すのか、そして3人がどう対話するのか、全てが周到に、一分の狂いもなくコントロールされ、完璧なアンサンブルを作り上げる。3人のアンサンブルは常にしっくりと滑らかに融合する。力みなぎるアスリートの美しい動きを精巧なスローモーションで見ているような感覚。葵トリオは音だけでなく、目からの情報でも完璧な音楽を「奏でる」。ヴァイオリンの小川響子の優美な演奏姿、それに応えるように連動するチェロの伊東裕とピアノの秋元孝介の姿を見ているだけで、うっとりする音楽が伝わって来る。
後期ロマン派の爛熟した空気を多分に運んでくるツェムリンスキーとコルンゴルトの音楽を、葵トリオは崩壊寸前のぎりぎりのところでフォルムを壊すことなく、自然な呼吸でデリケートに描いてみせた。これらの曲にこれ以上の表現を望めるだろうか。あまりに非の打ちどころのない演奏に、このトリオに乱れとか狂いはないんだろうか… なんて、出来過ぎな演奏に反って反発めいたものを感じそうになったコルンゴルトの終盤、アンサンブルは益々白熱して、最後の最後で勢い余って勇み足みたいなわずかなズレが聴こえたような… でもこれが聴き手にとってはライブの醍醐味となって引き込まれてしまった。やるな!としか言いようがない。
そして後半のシェーンベルクでは、「完璧な演奏」の更に上を行くようなシーンを体験することになる。曲のタイトルを思わせる青い照明でほのかに照らされた暗いステージに3人が登場。客席から結構な拍手が聴こえたが、葵トリオとしては拍手なしで始めたかったのではないだろうか。そんな暗い中で演奏された「浄められた夜」、僕はこの曲がこれまで苦手だった。細かく分かれ過ぎたパートがいつも苦しく喘ぐように和音を鳴らしている印象がつき纏っていた。
けれどピアノトリオ用のこの編曲では3つのパートがくっきり浮かび、響きがすっきりと整理されて聴こえる。葵トリオはこのアレンジを最大限に生かした。響きがとにかくピュアで美しい。ステージを青白く照らす光のような妖しさも秘めている。そして、小川のヴァイオリンと伊東のチェロに割り振られたメロディーを聴いていると、こんな美しいメロディーがあったと気づくこともしばしば。これに秋元のピアノが柔らかく香りづけをする。そして終盤のむせ返るような情熱。物語の情景がありありと目に浮かび、この曲に初めて陶酔してしまった。
そんな薄明の情景から、光で満たされた天上界へと連れて行かれたアンコールのモーツァルトも極上だった。葵トリオ、天井知らずの恐るべしアンサンブルだ。
シューマン 室内楽マラソンコンサート第4部 2024.2.23 東京オペラシティ
ごほうびクラシック 葵トリオ 2023.10.9 第一生命ホール
葵トリオ ピアノ三重奏の世界 2022.6.8 ブルーローズ
紀尾井レジデント・シリーズ I 葵トリオ 2022.3.16 紀尾井ホール
葵トリオ & 磯村和英 ~日本モーツァルト愛好会例会~2022.1.19 自由学園明日館
キラめく俊英たちⅢ 葵トリオ 2021.6.19 ブルーローズ
pocknのコンサート感想録について
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「繭とお墓」(詩:金子みすゞ)
拡散希望記事!
コロナ禍とは何だったのか? ~徹底的な検証と総括を求める~
コロナ報道への意見に対する新聞社の残念な対応
やめよう!エスカレーターの片側空け
~Pf:秋元孝介/Vn:小川響子/Vc:伊東裕~
ピアノ・トリオ・フェスティヴァル2024-Ⅱ
紀尾井ホール
【曲目】
1.ツェムリンスキー/ピアノ三重奏曲ニ短調 Op.3
2.コルンゴルト/ピアノ三重奏曲ニ長調 Op.1
3.シェーンベルク/シュトイアーマン編/浄夜 Op.4(ピアノ三重奏版)
【アンコール】
♪ モーツァルト/ピアノ三重奏曲ト長調 K.564~第3楽章アレグレット
完璧とはこういう演奏を云うのか、と云いたい演奏をする葵トリオ。無音から音がどう立ち現れ、歌い、消えて行くか、そこにどんな熱量が注がれ、どんな香りや色合いを施すのか、そして3人がどう対話するのか、全てが周到に、一分の狂いもなくコントロールされ、完璧なアンサンブルを作り上げる。3人のアンサンブルは常にしっくりと滑らかに融合する。力みなぎるアスリートの美しい動きを精巧なスローモーションで見ているような感覚。葵トリオは音だけでなく、目からの情報でも完璧な音楽を「奏でる」。ヴァイオリンの小川響子の優美な演奏姿、それに応えるように連動するチェロの伊東裕とピアノの秋元孝介の姿を見ているだけで、うっとりする音楽が伝わって来る。
後期ロマン派の爛熟した空気を多分に運んでくるツェムリンスキーとコルンゴルトの音楽を、葵トリオは崩壊寸前のぎりぎりのところでフォルムを壊すことなく、自然な呼吸でデリケートに描いてみせた。これらの曲にこれ以上の表現を望めるだろうか。あまりに非の打ちどころのない演奏に、このトリオに乱れとか狂いはないんだろうか… なんて、出来過ぎな演奏に反って反発めいたものを感じそうになったコルンゴルトの終盤、アンサンブルは益々白熱して、最後の最後で勢い余って勇み足みたいなわずかなズレが聴こえたような… でもこれが聴き手にとってはライブの醍醐味となって引き込まれてしまった。やるな!としか言いようがない。
そして後半のシェーンベルクでは、「完璧な演奏」の更に上を行くようなシーンを体験することになる。曲のタイトルを思わせる青い照明でほのかに照らされた暗いステージに3人が登場。客席から結構な拍手が聴こえたが、葵トリオとしては拍手なしで始めたかったのではないだろうか。そんな暗い中で演奏された「浄められた夜」、僕はこの曲がこれまで苦手だった。細かく分かれ過ぎたパートがいつも苦しく喘ぐように和音を鳴らしている印象がつき纏っていた。
けれどピアノトリオ用のこの編曲では3つのパートがくっきり浮かび、響きがすっきりと整理されて聴こえる。葵トリオはこのアレンジを最大限に生かした。響きがとにかくピュアで美しい。ステージを青白く照らす光のような妖しさも秘めている。そして、小川のヴァイオリンと伊東のチェロに割り振られたメロディーを聴いていると、こんな美しいメロディーがあったと気づくこともしばしば。これに秋元のピアノが柔らかく香りづけをする。そして終盤のむせ返るような情熱。物語の情景がありありと目に浮かび、この曲に初めて陶酔してしまった。
そんな薄明の情景から、光で満たされた天上界へと連れて行かれたアンコールのモーツァルトも極上だった。葵トリオ、天井知らずの恐るべしアンサンブルだ。
シューマン 室内楽マラソンコンサート第4部 2024.2.23 東京オペラシティ
ごほうびクラシック 葵トリオ 2023.10.9 第一生命ホール
葵トリオ ピアノ三重奏の世界 2022.6.8 ブルーローズ
紀尾井レジデント・シリーズ I 葵トリオ 2022.3.16 紀尾井ホール
葵トリオ & 磯村和英 ~日本モーツァルト愛好会例会~2022.1.19 自由学園明日館
キラめく俊英たちⅢ 葵トリオ 2021.6.19 ブルーローズ
pocknのコンサート感想録について
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「繭とお墓」(詩:金子みすゞ)
拡散希望記事!
コロナ禍とは何だったのか? ~徹底的な検証と総括を求める~
コロナ報道への意見に対する新聞社の残念な対応
やめよう!エスカレーターの片側空け