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小菅 優 “ソナタ・シリーズ” Vol.3「愛・変容」

2024年10月06日 | pocknのコンサート感想録2024
9月29日(日)小菅優(Pf) 
~ソナタ・シリーズVol.3「愛・変容」~
ひまわりの郷ホール(横浜市港南区民文化センター)

【曲目】
1.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 Op.109
2.矢代秋雄/ピアノ・ソナタ
3.シューマン/ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調 Op.14
【アンコール】
♪ モーツァルト/ピアノ・ソナタ ハ長調 K.330~第2楽章

欠かさずに聴きたい小菅優のリサイタルシリーズの東京公演の日は、既に他の演奏会の予定が入ってしまっていたので、プラハから帰国した翌日、同じプログラムで行われるリサイタルを聴きに上大岡まで出かけた。時差ボケで頭のふわふわ感はあったが、素晴らしいピアノをしっかりと聴いた。

ソナタシリーズの3回目となる今回のテーマは「愛・変容」。愛を囁くようなベートーヴェンの作品109のソナタで始まり、シューマン、そして矢代秋雄のソナタへと「変容」する愛の姿を捉えた選曲ということだろうか。

その最初のベートーヴェン、柔らかく愛を語りかける第1楽章の冒頭から、くっきりと彫りの深い造形美を聴かせた。強い意志は第2楽章ではもちろん、瞑想的な第3楽章にもピーンと貫かれ、明確な目標を求めて進んで行く様子に熱いものが伝わってきた。

続く矢代のソナタは進取の気性に溢れた挑戦的な音楽。この音楽の魂を小菅はブレることなくストレートに伝えて来る。明晰な切れ味だけではなく、熱い血が通っていることも感じられ、また一方で静謐な気高さも具えていて、前衛的な音楽でありながら明確なフォルムを持った音楽の構成美も伝わる演奏だった。これは繰り返し聴いてみたい名ソナタだ。

プログラム後半はシューマンの第3ソナタ。シューマンならではの叙情やファンタジーが迸り、それと共にソナタとしての様式の美しさ、全体の統一感も伝わって来る。小菅の作品を俯瞰する厳しく確かな眼があることを感じた。細かい動きを緻密にコントロールして、いくつにも分かれた声部それぞれに相応しい表情を与え、更にそれらが大きなひとつの波となって迫って来た。

今日のリサイタルでは、初稿では入っていて改訂時にカットされ、通常は演奏されないというスケルツォを入れて演奏したということだが、冗長な印象を与えることは全くなく、このソナタにこのスケルツォは不可欠と思う必然性さえ感じた。これも、小菅の作品への深い読みと追求あってのことだろう。普段聴く機会のない形でこのソナタを聴くことが出来たのは、「ソナタ」を銘打ったリサイタルシリーズに相応しい。

アンコールのモーツァルトも、小菅のそんなアナリスティックな目が光った演奏に聴こえたが、これは以前聴いた柔らかな光で包まれたファンタジックな演奏で聴きたかったかな。

小菅 優 “ソナタ・シリーズ” Vol.2「夢・幻想」~2023.11.14 東京オペラシティ~
小菅 優 “ソナタ・シリーズ” Vol.1「開花」~2023.3.10 和光大学ポプリホール鶴川~
小菅 優「自分が今一番向き合いたい作品」~2022.1.21 東京オペラシティ~
小菅 優 ピアノリサイタル Four Elements Vol.4 Earth~2020.11.27 東京オペラシティ~

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