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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ブーレーズ指揮 ロンドン交響楽団(ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995)

2016年01月10日 | pocknのコンサート感想録(アーカイブ)
pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~

1995年5月19日(金)
ピエール・ブーレーズ指揮 ロンドン交響楽団~ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995~
サントリーホール

1.ブーレーズ/弦楽のための本        ☆
2.ベルク/7つの初期の歌           ㊝
3.ベルク/アルテンベルク歌曲集Op.4    ㊝
S:ジェシー・ノーマン
4.ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
5.ドビュッシー/交響詩「海」             

 指揮者として今、大いに話題を呼んでいるブーレーズのオーケストラ・コンサートを初めて聴いた。まずブーレーズ作曲の「弦楽のための本」は、色彩感とテクスチュアの多彩さが大変良く表現され、デリケートで緻密な演奏。音楽としての完成度の高さが十分に伝わってきた。
 ジェシー・ノーマンをソロに迎えたベルクの歌曲集は、今夜のコンサートの頂点を成すものだった。ノーマンを生で聴くのは初めてだが、これまでにCDやFMで聴いた強い印象を更に強める素晴らしい体験となった。ノーマンの声はその大きな身体にふさわしいボリューム感たっぷりの声。声量的なボリュームももちろんだが、声の濃さという意味でのボリューム感がすごい。弱音から伝わるメッセージの多さ、存在感はすごい。
 ノーマンの歌はやわらかく溶かしたチョコレートのように、なめらかで味が濃くて深い。声に淀みがなく流れて行く。それがベルクの人間臭い歌にたいへんふさわしい。明瞭で美しいドイツ語も、詩の世界を伝えるのに一役買っている。ノーマンの歌は聴く者を強く太い力で引きつけて離すことがない。大歌手の条件はいかに存在感があるかということだろう。
 このすばらしいノーマンに付いたブーレーズ/ロンドン響がまた素晴らしい。七変化という言葉でもまだ語り尽くせぬベルクの豊かで多彩な色彩感に溢れるオーケストレーションが、まさに理想的に具現された。精巧でありデリケートであり、そしてノーマンの「熱い歌」を支える人間的な温もりのある息遣いが伝わってくる。技術、表現、表情、どれをとっても文句なしの完璧な出来だ。
 次のドビュッシーも従って大いに期待したのだが、その期待とは一致しなかった。隣の客が話していた「作曲家の指揮」という言い方が頷ける。簡単に言ってしまうと面白くないのだ。演奏は精巧で常に冷静。心の底から溢れるような人間的なメッセージが伝わってこない。これがブーレーズの演奏と言ってしまえばそれまでだが、ベルクで聴いた人間的な温もりがやっぱり欲しい。





「ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995」の総合プログラム

 前日のポリーニに続き、この日はジェシー・ノーマンが登場。ブーレーズがロンドン交響楽団を指揮する… このブーレーズ・フェスティバルが、いかに魅力ある演奏家を集めて来ていたかが覗える。
 感想を読み返すと、ノーマンの歌には感動して絶賛しているが、ブーレーズのドビュッシーでは「面白くない」と一蹴してしまっている。この後ブーレーズがN響を指揮するコンサートを聴いて、ブーレーズの指揮者としての魅力と実力を思い知ることになる。 
(2016.1.9)

ブーレーズの訃報に接して

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