Lutherstadt WITTENBERG
ベルリンに4泊するうち、1日はちょっと遠出をしてみようと選んだのは、宗教改革家マルティン・ルターが活躍したヴィッテンベルク。ここは、もうひとつのルターゆかりの町、アイスレーベンと共に世界文化遺産に登録されていて、町の正式名称は「ルターの町ヴィッテンベルク」(Lutherstadt Wittenberg)という。ベルリンから南西へ約93キロのザクセン=アンハルト州にある。
出かけたのは祝日「キリスト昇天節」”Christi Himmelfahrt”に当たる5月21日。祝日でベルリンにいてもお店は閉まっているだろうから買い物もできないし(実際はベルリンでは閉店法が緩くなっていて開いている店はいっぱいあったが…)、それならと、この世界遺産の町へ出かけることにした。
ヴィッテンベルクへ行く電車はベルリン中央駅から出ている。切符を買う時、窓口で普通列車限定の大幅な割引のある往復切符を紹介されて、それを購入した。「もし、急行(IC)とかに乗る場合は、この切符は使えないし、払い戻しもできないことだけ気をつけて!」と言われた。
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とても新しくて乗り心地も良い電車でおよそ1時間15分で着いたヴィッテンベルクの駅は、とても辺鄙ななんにもないところにぽつんとあった。駅の周辺にはハマナスがいっぱい咲いていた。
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駅前にあった案内地図を頼りに旧市街に向かって歩き出したら、旧東独時代の国鉄の名称の文字「帝国鉄道(Reichsbahn:RB)」がそのまま残った建物があった。
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壁に落書きはあったが建物はちゃんと手入れされている感じ。今はドイツ鉄道(Deutsche Bundesbahn:DB)の事務所として使われているのだろうか。
【ルターハウス】
旧市街の中心へ通じるコレーギエン通り(Collegienstraße)に入ってすぐのところにあるルターハウス(Lutherhaus)を見学した。ここは、ルターが家族とともに38年以上過ごしたという家で、全館が博物館として公開されている。入口でルターが出迎えてくれた。
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ヴィッテンベルクでルターと同時代に活躍しルターとも親交のあった画家、ルーカス・クラナッハによる「十戒」は目玉展示物の一つ。盗み、殺人、姦淫など、人の道に反する行いが、とてもわかりやすく絵で描写されていて、思わず笑ってしまう場面も… クラナッハはルターの肖像画も多く遺している。
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布教のためにルターが作曲した数々の美しいコラール(讃美歌)は、今でもプロテスタントの礼拝で歌い継がれている。バッハのカンタータ第80番でもよく知られている有名な賛美歌「神は我がやぐら」"Ein' feste Burg ist unser Gott"の譜があった!
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たっぷりと展示を見学して中庭に出ると、地下へ行く階段があった。
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地下室も展示場になっていて、ルター一家の日常の様子を伝える家具調度類などが展示されていた。食卓を囲むルター一家の等身大の人形もあった。中世の人々の生活様式を知るという意味でも地下は一見の価値がある。
【旧市街】
ルターハウスを出て、コレーギエン通りを旧市街の中心・マルクト広場(Marktplatz)へ向かって歩く。この通りは旧市街のメインストリートという感じで、石畳の広い道の両側にはいろいろなお店が並んでいた。でも、祝日ということでこれらのお店は軒並み閉店していて閑散とした雰囲気。ベルリンは日曜日も祝日も関係なく開いている店が多いが、ルターの町ヴィッテンベルクは、さすがに「安息日」を守って、厳格な閉店法が施行されているのかも知れない。
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手前は市庁舎のバルコニー
お昼は、このマルクト広場で食べることにした。祝日でも飲食店はだいたいどこも開いている。何軒かあるなか、あまり高くなさそうなお店のテラスに座った。お客は結構たくさんいた。
そこで注文したのは、地元のビールにソーセージのポテトサラダ添え、そして「ソルヤンカ」というスープ。
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このソルヤンカは、まだ統一前の東ドイツを旅したとき(1986)、たいていのお店のメニューにあった記憶がある。元々はドイツのものではなく、ロシアとか東欧から来たもので、細切れの野菜やハムが、トマト味のスープでクタクタになるまで煮込まれたもの。結構腹の足しになるのでよく食べた。
メニューにSoljanka を見つけたので懐かしくなって頼んだが、上にサワークリームがかかっていて、味もボルシチのようなまろやかさがあり、「こんなにおいしいもんだったっけ!」という感じ。東独時代と比べれば味もかなり改良されている気がした。
マルクト広場のすぐそばに建つ、ルターも説教壇に立ったという聖マリーエン市教会の堂内へ入り、クラナッハの手による「宗教改革三連祭壇画」を見た。中央の絵には、円卓で宗教改革について話し合うルターの姿が描かれているそうだが、どれがルターかよくわからなかった。でも、歴史的な出来事を後世の画家が想像して描いたのではなく、まさに宗教改革の最中にルターの同時代人によって描かれた絵というところがすごい。
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マルクト広場から、城教会(Schlosskirche)へ通じるシュロス通り(Schlossstraße)にそって、きれいな水路が走っている。行く手に見える尖塔は目指す城教会。
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石畳のシュロス通り沿いにも凝ったファサードのバロック調の家並みが続く。通りの上にはクラナッハのイベントを知らせる横断幕が掲げられていた。この辺りにクラナッハの家がある。
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広い公園の中に建つ城教会は、文字通りお城と教会がくっついたような建物。堅牢な城砦を思わせるが、戦争で破壊されて再建されたもので、お城の部分は今では博物館として使われている。
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教会ではちょうどオルガンコンサートをやっていたが、時間の都合で聴けなかった。聴きたかったな~♪
旧市街をひと巡りして、またマルクト広場に戻ってきた。絵になる風景はいくつもあったが、やっぱりスケッチはここの広場ですることにした。
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マルクト広場裏手の路地裏、フォイアーガッセ(Feuergasse)の辺りもノスタルジックな感じ。レストランなども多いが、空き家のようなボロい建物もあった。
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帰り道、駅の近くで旧東独時代を代表する車・トラバントを見かけた。この町では東独の名残りをいろいろ見たし、味わった。
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ヴィッテンベルクではすっかりゆっくり過ごして、乗ろうと思っていたベルリンへ戻る電車には間に合わなかった。普通列車しか使えない限定の格安往復切符を買っていたが、夜はベルリンでコンサートがあるので、格安切符を捨てて急行(InterCity)に乗るしかなくなった。
駅の切符売り場は閉まっていて、自販機でも切符が買えない。列車内で買うと割高になってしまうが仕方ない。有効なチケットをもたずインターシティーに乗り込んだ。検札が来るのを待っていたが、結局ベルリンまで検札はやって来なかった。インターシティーならベルリンまで40分。ラッキー!
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ベルリンに4泊するうち、1日はちょっと遠出をしてみようと選んだのは、宗教改革家マルティン・ルターが活躍したヴィッテンベルク。ここは、もうひとつのルターゆかりの町、アイスレーベンと共に世界文化遺産に登録されていて、町の正式名称は「ルターの町ヴィッテンベルク」(Lutherstadt Wittenberg)という。ベルリンから南西へ約93キロのザクセン=アンハルト州にある。
出かけたのは祝日「キリスト昇天節」”Christi Himmelfahrt”に当たる5月21日。祝日でベルリンにいてもお店は閉まっているだろうから買い物もできないし(実際はベルリンでは閉店法が緩くなっていて開いている店はいっぱいあったが…)、それならと、この世界遺産の町へ出かけることにした。
ヴィッテンベルクへ行く電車はベルリン中央駅から出ている。切符を買う時、窓口で普通列車限定の大幅な割引のある往復切符を紹介されて、それを購入した。「もし、急行(IC)とかに乗る場合は、この切符は使えないし、払い戻しもできないことだけ気をつけて!」と言われた。
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とても新しくて乗り心地も良い電車でおよそ1時間15分で着いたヴィッテンベルクの駅は、とても辺鄙ななんにもないところにぽつんとあった。駅の周辺にはハマナスがいっぱい咲いていた。
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駅前にあった案内地図を頼りに旧市街に向かって歩き出したら、旧東独時代の国鉄の名称の文字「帝国鉄道(Reichsbahn:RB)」がそのまま残った建物があった。
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壁に落書きはあったが建物はちゃんと手入れされている感じ。今はドイツ鉄道(Deutsche Bundesbahn:DB)の事務所として使われているのだろうか。
【ルターハウス】
旧市街の中心へ通じるコレーギエン通り(Collegienstraße)に入ってすぐのところにあるルターハウス(Lutherhaus)を見学した。ここは、ルターが家族とともに38年以上過ごしたという家で、全館が博物館として公開されている。入口でルターが出迎えてくれた。
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この博物館は、宗教改革関連の博物館としては世界最大規模を誇るそうで(ルターハウスのホームページ)、ルターの宗教改革に関連した貴重な資料が数多く展示されていた。ルターの生きた時代を時系列を追って展示室があり、ルターの肖像や自筆の手紙などのほか、ルターの書斎がそのまま保存されていたり、ルターが説教を行った説教壇や、着ていた修道服なども展示されていて、興味は尽きない。 | ![]() |
ヴィッテンベルクでルターと同時代に活躍しルターとも親交のあった画家、ルーカス・クラナッハによる「十戒」は目玉展示物の一つ。盗み、殺人、姦淫など、人の道に反する行いが、とてもわかりやすく絵で描写されていて、思わず笑ってしまう場面も… クラナッハはルターの肖像画も多く遺している。
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布教のためにルターが作曲した数々の美しいコラール(讃美歌)は、今でもプロテスタントの礼拝で歌い継がれている。バッハのカンタータ第80番でもよく知られている有名な賛美歌「神は我がやぐら」"Ein' feste Burg ist unser Gott"の譜があった!
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たっぷりと展示を見学して中庭に出ると、地下へ行く階段があった。
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地下室も展示場になっていて、ルター一家の日常の様子を伝える家具調度類などが展示されていた。食卓を囲むルター一家の等身大の人形もあった。中世の人々の生活様式を知るという意味でも地下は一見の価値がある。
【旧市街】
ルターハウスを出て、コレーギエン通りを旧市街の中心・マルクト広場(Marktplatz)へ向かって歩く。この通りは旧市街のメインストリートという感じで、石畳の広い道の両側にはいろいろなお店が並んでいた。でも、祝日ということでこれらのお店は軒並み閉店していて閑散とした雰囲気。ベルリンは日曜日も祝日も関係なく開いている店が多いが、ルターの町ヴィッテンベルクは、さすがに「安息日」を守って、厳格な閉店法が施行されているのかも知れない。
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マルクト広場は、ルネサンス様式の市庁舎が建ち、周囲にはパステルカラーの古い建物が並び、その後ろには堂々とした聖マリーエン市教会(Stadtkirche St. Marien)が聳え、品と風格を兼ね備えた美しい広場だ。 | ![]() マルクト広場のルター像 |
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手前は市庁舎のバルコニー
お昼は、このマルクト広場で食べることにした。祝日でも飲食店はだいたいどこも開いている。何軒かあるなか、あまり高くなさそうなお店のテラスに座った。お客は結構たくさんいた。
そこで注文したのは、地元のビールにソーセージのポテトサラダ添え、そして「ソルヤンカ」というスープ。
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このソルヤンカは、まだ統一前の東ドイツを旅したとき(1986)、たいていのお店のメニューにあった記憶がある。元々はドイツのものではなく、ロシアとか東欧から来たもので、細切れの野菜やハムが、トマト味のスープでクタクタになるまで煮込まれたもの。結構腹の足しになるのでよく食べた。
メニューにSoljanka を見つけたので懐かしくなって頼んだが、上にサワークリームがかかっていて、味もボルシチのようなまろやかさがあり、「こんなにおいしいもんだったっけ!」という感じ。東独時代と比べれば味もかなり改良されている気がした。
![]() | お腹を満たして、世界遺産の街を散策。どこを歩いても見た目は小ぎれいで、街並みの色合いも調和が取れている。絵になりそうな風景も多い。街角のあちこちに花が飾られていた。 お昼を過ぎて、街中にはそこそこ人も増えて賑わいを見せ始めた。観光客が多く団体のツアーもいるのは、やはりルター詣でが目当てなのだろう。 |
マルクト広場のすぐそばに建つ、ルターも説教壇に立ったという聖マリーエン市教会の堂内へ入り、クラナッハの手による「宗教改革三連祭壇画」を見た。中央の絵には、円卓で宗教改革について話し合うルターの姿が描かれているそうだが、どれがルターかよくわからなかった。でも、歴史的な出来事を後世の画家が想像して描いたのではなく、まさに宗教改革の最中にルターの同時代人によって描かれた絵というところがすごい。
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マルクト広場から、城教会(Schlosskirche)へ通じるシュロス通り(Schlossstraße)にそって、きれいな水路が走っている。行く手に見える尖塔は目指す城教会。
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石畳のシュロス通り沿いにも凝ったファサードのバロック調の家並みが続く。通りの上にはクラナッハのイベントを知らせる横断幕が掲げられていた。この辺りにクラナッハの家がある。
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広い公園の中に建つ城教会は、文字通りお城と教会がくっついたような建物。堅牢な城砦を思わせるが、戦争で破壊されて再建されたもので、お城の部分は今では博物館として使われている。
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どのガイドにも載っている、ルターが95ヶ条の論題を貼り出したと言われている城教会の扉。当時のものは焼失して、これは再建後の姿。 免罪符を売って金儲けをすることへの批判など、ローマ=カトリックへの95の問題が提起されたこの論題で、ルターは、人は信仰によってのみ救われること、その信仰の拠り所とすべきは聖書のみであることを訴えた。 ということで、これが宗教改革発祥の扉ということになっている。これがなければ、プロテスタントもなかったわけで、そうすると、かのバッハの受難曲やカンタータなど、あまたの名宗教作品も生まれなかったかも、と思うと、クリスチャンではない僕でも感慨深い。 | ![]() |
教会ではちょうどオルガンコンサートをやっていたが、時間の都合で聴けなかった。聴きたかったな~♪
旧市街をひと巡りして、またマルクト広場に戻ってきた。絵になる風景はいくつもあったが、やっぱりスケッチはここの広場ですることにした。
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マルクト広場裏手の路地裏、フォイアーガッセ(Feuergasse)の辺りもノスタルジックな感じ。レストランなども多いが、空き家のようなボロい建物もあった。
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帰り道、駅の近くで旧東独時代を代表する車・トラバントを見かけた。この町では東独の名残りをいろいろ見たし、味わった。
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ヴィッテンベルクではすっかりゆっくり過ごして、乗ろうと思っていたベルリンへ戻る電車には間に合わなかった。普通列車しか使えない限定の格安往復切符を買っていたが、夜はベルリンでコンサートがあるので、格安切符を捨てて急行(InterCity)に乗るしかなくなった。
駅の切符売り場は閉まっていて、自販機でも切符が買えない。列車内で買うと割高になってしまうが仕方ない。有効なチケットをもたずインターシティーに乗り込んだ。検札が来るのを待っていたが、結局ベルリンまで検札はやって来なかった。インターシティーならベルリンまで40分。ラッキー!
ウィーン&ベルリン コンサート&オペラの旅レポート 2009メニューへ
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2017年秋に行きます。ルター宗教改革500周年記念特別展があるので。
コメントありがとうございます。古い記事なので変わっているところもあるかと思いますが(特に駅周辺の様子など)、何かお役に立てれば幸いです。素敵な旅となりますように!