5月24日(日)庄司紗矢香(Vn)/ジャンルカ・カシオーリ(Pf)
彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
【曲目】
1.モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ第35(27)番 ト長調 K.379(373a)
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第6番 イ長調 Op.30-1
3.ストラヴィンスキー/イタリア組曲
4.ラヴェル/ヴァイオリン・ソナタ ト長調
【アンコール】
1.シュニトケ/祝賀ロンド
2.シルヴェストロフ/ヴァイオリンとピアノのためのポスト・スクリプトゥム~第2楽章
リサイタルを聴き終わった第一声はまたしても「すごい!」の一言。この二人の組合せで聴くリサイタルは2年半振り3回目。
プログラムは多彩ではあるが、お客がたくさん集まりそうな曲目ではない。演奏はいわゆるパフォーマンスが際立つものではないし、2曲のアンコールも含めて聴衆が大喜びしそうな「見せ場」は見当たらない。それにもかかわらずホールは満席になり、会場は熱く盛り上がる。普通のデュオとは次元の異なる魅力が、魔力となってホールを支配しているかのようだ。
庄司とカシオーリはそれぞれの作品が持つ「世界」を大きく掴んで「これしかない」というものを表現する。それは実に緻密で精巧で隙がない方法と技を尽くして実現される。そこにはとりわけ庄司の「心の眼」の存在を感じる。それは、どんな瞑想的なフレーズを演奏するときでも閉じられることのない、真っ直ぐで澄んだ眼差し。そうして奏でられる音楽は崇高で静謐な美しさを獲得する。二人のやり取りを聴いていると、更に作曲家が作品に仕組んだスパイスや隠し味も知覚できる。それは決して目立つやり方ではなく自然に行われるのだが、それを浮かび上がらせるには飛びきりアクロバティックで一瞬の隙も許されないスリリングな駆け引きがあるのではないだろうか。
モーツァルトの第2楽章なんて神様の領域にまで昇華してしまったような孤高の美しさを放っていた。ベートーヴェンはカシオーリとのモザイク画の制作場面のよう。随所にはめ込まれる色鮮やかなパーツがなんと気高く映えることか!ストラヴィンスキーでは規律正しく明滅を繰り返す色とりどりの無数のライトが繰り広げるイルミネーションのショーが、いつしか意思を持って独り歩きし始めるようなリアルさ。そしてラヴェルでは肢体を滑らかにくねらせて激しく踊り狂う妖艶な舞踏… それぞれの音楽が命を授かって、実に理に叶った完璧な姿で聴き手を魅了する。そこには更に底知れぬ可能性も秘められているのを感じた。
庄司紗矢香&メナヘム・プレスラー デュオ・リサイタル (2014.4.10 サントリーホール)
庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ デュオ・リサイタル (2012.10.30 サントリーホール)
彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
【曲目】
1.モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ第35(27)番 ト長調 K.379(373a)
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第6番 イ長調 Op.30-1
3.ストラヴィンスキー/イタリア組曲
4.ラヴェル/ヴァイオリン・ソナタ ト長調
【アンコール】
1.シュニトケ/祝賀ロンド
2.シルヴェストロフ/ヴァイオリンとピアノのためのポスト・スクリプトゥム~第2楽章
リサイタルを聴き終わった第一声はまたしても「すごい!」の一言。この二人の組合せで聴くリサイタルは2年半振り3回目。
プログラムは多彩ではあるが、お客がたくさん集まりそうな曲目ではない。演奏はいわゆるパフォーマンスが際立つものではないし、2曲のアンコールも含めて聴衆が大喜びしそうな「見せ場」は見当たらない。それにもかかわらずホールは満席になり、会場は熱く盛り上がる。普通のデュオとは次元の異なる魅力が、魔力となってホールを支配しているかのようだ。
庄司とカシオーリはそれぞれの作品が持つ「世界」を大きく掴んで「これしかない」というものを表現する。それは実に緻密で精巧で隙がない方法と技を尽くして実現される。そこにはとりわけ庄司の「心の眼」の存在を感じる。それは、どんな瞑想的なフレーズを演奏するときでも閉じられることのない、真っ直ぐで澄んだ眼差し。そうして奏でられる音楽は崇高で静謐な美しさを獲得する。二人のやり取りを聴いていると、更に作曲家が作品に仕組んだスパイスや隠し味も知覚できる。それは決して目立つやり方ではなく自然に行われるのだが、それを浮かび上がらせるには飛びきりアクロバティックで一瞬の隙も許されないスリリングな駆け引きがあるのではないだろうか。
モーツァルトの第2楽章なんて神様の領域にまで昇華してしまったような孤高の美しさを放っていた。ベートーヴェンはカシオーリとのモザイク画の制作場面のよう。随所にはめ込まれる色鮮やかなパーツがなんと気高く映えることか!ストラヴィンスキーでは規律正しく明滅を繰り返す色とりどりの無数のライトが繰り広げるイルミネーションのショーが、いつしか意思を持って独り歩きし始めるようなリアルさ。そしてラヴェルでは肢体を滑らかにくねらせて激しく踊り狂う妖艶な舞踏… それぞれの音楽が命を授かって、実に理に叶った完璧な姿で聴き手を魅了する。そこには更に底知れぬ可能性も秘められているのを感じた。
庄司紗矢香&メナヘム・プレスラー デュオ・リサイタル (2014.4.10 サントリーホール)
庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ デュオ・リサイタル (2012.10.30 サントリーホール)