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プラハ国民劇場 オペラ公演「カルメン」

2024年10月05日 | pocknのコンサート感想録2024
9月25日(水)プラハ国民劇場 オペラ公演
プラハ国民劇場


【演目】
ビゼー/「カルメン」

【配役】
カルメン:エステル・パブルー/ドン・ホセ:レオナルド・カイミ/エスカミーリョ:チャバ・コトラル/ミカエラ:カテリナ・クネジコヴァ/スニガ:ヤロスラフ・パトッカ/モラレス:ルカシュ・バラク/ダンカイロ:ヤロスラフ・ブジェジナ/レメンダード:マーティン・スレイラ/フラスキータ:金城由起子/メルセデス:シルバ・チムグロヴァ

【演奏・バレエ】
ズビニェク・ミュラー 指揮 国民劇場管弦楽団/国民劇場合唱団/プラハ・フィルハーモニー児童合唱団/国民劇場バレエ団

【スタッフ】
演 出:グリシャ・アサガロフ/舞台・衣裳:ルイージ・ペレーゴ/照明:ダニエル・テサシュ 他




(拡大可)

プラハの国民劇場は、ハプスブルク家の支配下でドイツ語を強要されていた時代、チェコ人のアイデンティティを発露するチェコ語による文化復興の拠点として建造された。現在はチェコ物に限らず古今東西の作品が上演されているこの劇場は、馬蹄形の客席を持つ豪華な造り。965席という比較的小さなキャパなので僕たちが座った上部(ⅡBalkón)でもステージは手に取るように良く見え、声もすぐ近くで聞こえた。

ここで観た「カルメン」は、全ての要素で大満足の素晴らしい公演だった。チェコ出身者中心のキャストは日本での知名度は高くないが、誰もが最高の力量を具えた名歌手達だった。最初に登場したモラレス役、ルカシュ・バラクのインパクトのある声による生き生きとした歌で、主要な役が登場する前からオペラに引き込まれた。

タイトルロールのカルメン役、エステル・パブルーは、瞬時に男をめろめろにする色気を漂わせ、奔放さよりも強い信念に貫かれた女を歌い演じた。高貴さも漂わせる声の魅力と、スポットを当てられたような存在感、全幕に渡って次々に有名な歌をハイレベルでこなすスタミナも凄い。名実ともにプリマ・ドンナと呼ぶに相応しいカルメンだった。

その相手役、ドン・ホセを担ったレオナルド・カイミも立派だった。磨きのかかった輝かしい声でカルメンへの溢れる思いを熱く歌い、引きつけた。ソットヴォ―チェで囁く柔らかな息遣いの甘い歌声でも魅了した。これほどの歌で求愛されたら、エスカミーリョになびいたカルメンの心もまた戻ってしまうのではと思うほど。

ミカエラ役のカテリナ・クネジコヴァは、まっすぐな声でひたむきさを表現した。声には太さがあり、しおらしさではない強くて熱いミカエラを描いた。フィナーレでホセに母親の元へ帰るよう促す場面も切々と熱く迫ってきた。エスカミーリョを歌ったチャバ・コトラルは、上品さを具えた名バリトンで颯爽とした強い男を歌い、カルメンを惹きつける役としても納得のいく歌唱だった。その他のソリスト達も立派な歌を聴かせてくれた。フラスキータ役で日本の金城由起子さんが出演していたのも嬉しかった。

このオペラで大活躍する合唱も素晴らしかった。女性たちが纏った色とりどりの美しい衣装と同様に趣のある色彩を放ち、華やかでパワフル。オーケストラも落ち着いた音色と香りを醸し出し、団結力を感じるアンサンブルを聴かせた。ホルンをはじめソロ楽器の妙技も見事。東欧のオケは技術よりもハートで訴えてくるイメージがあるが、ハートに加えて確かな技術も持ち合わせたハイレベルのオケという印象を持った。指揮のミュラーは、合唱とオケで盛り上がる場面で高まる緊迫感や、濃厚で熱い響きを巧みにコントロールし、ドラマとしての音楽の起伏を捉え、情熱を湛えつつ的確に纏めた。

こうした演奏に加え、美しい舞台、台本に忠実な演出で物語に没入できたことが感動を増幅した。段が層をなす大きな舞台装置を基本に、中規模な装置が情景を表し、シーンによって変化する照明の色彩に心惹かれた。女声合唱が身につけたフラメンコを思わせる細かい装飾の施された色鮮やかな衣装が美しく、全体の動きも自然で、息を呑む美しさで魅了した。音楽と舞台で「カルメン」というオペラがいかに多彩な魅力に溢れた作品であるかをあらためて実感した。

終演後の劇場は大喝采とブラボーと口笛に包まれた。カルメン役のパブルーには一際大きな反応があり、指揮のミュラーとオケへの喝采も大きかった。初めて訪れたチェコでのオペラ体験は大満足。終演後はチェコビールで乾杯した。

新国立劇場オペラ公演「カルメン」~2021.7.6~
カサロヴァの「カルメン」(マリボール国立歌劇場公演)~2014.6.18 オーチャードホール~

【フォトアルバム】




2階テラス


チェコが生んだ名匠たちの胸像より


カルメン役のパブルー


エスカミーリョ役のコトラル(左)とホセ役のカイミー(右)



(拡大可)



アフターオペラはチェコのピルスナーと黒


グーラシュ、ソーセージはニュルンベルガー



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