藝祭2024 9月7日(土)に聴いた演奏会
事前申込みで取れた5つの演奏会を聴いた感想。その合間にピロティでチラッとだけMANTO VIVOのライブも聴きました。
チラ聴きしか出来なかったピロティでのManto Vivoライブ
作曲科1年新作室内楽
~第2ホール~
1.吉田奏子/37→24
dram:徳冨遼太/Pf:渡辺俊爾
2.龍瀧晴/「驟雨」-オーボエとピアノのための-
Ob:岩井美嘉/Pf:龍瀧晴
3.広田流衣/あなたへ
A:池田ひよ/Pf:広田流衣
4.柴田歩/狐火
龍笛:後藤宜裕/Pf:柴田歩
5.佐伯花衣/妖精からの招待状
Fl:高須蘭、長井七葉/Pf:柴田陽人
作曲科1年生5名の有志による室内楽の新曲発表。スネアドラムとピアノによる吉田さんの「37→24」は、スネアの鮮やかなバチさばきで様々な奏法を駆使し、多彩な音で喧騒や生活音の雰囲気などがよく出ていた。ピアノがもっと暴れてもいいかな。龍瀧さんのオーボエとピアノのための「驟雨」はフォーレ風の音楽。流麗なピアノと叙情的なオーボエの調べが溶け合っていた。広田さんの「あなたへ」は、アルトとピアノのための歌曲。柴田トヨさんの清らかな詩が素直に音楽になった穏やかで美しく、ユーモアもある歌。池田さんの清楚な歌がよく合っていた。深みが加わると更に良くなりそう。ピアノはもっと語ってもいいのでは?蓋を全部閉じてしまうと音がこもるので、せめて半開でよかったかも。柴田さんの「狐火」は、和の音階を使った龍笛と、スクリャービン調に書かれたピアノとのデュオ。狐火が彷徨う様子がイメージされたが、両者がそれぞれの枠に収まってしまう印象もあった。佐伯さんの「妖精からの招待状」は、2本のフルートが戯れ合い、ピアノと遊ぶロマンチックで微笑ましい平和な音楽。
藝大の気鋭の作曲科1年の新作発表ということで、サプライズを求めていた演奏会だったが、そんな挑戦的な音楽に出会うことはなく、一昔前の新作発表とは随分様子を異にしているという印象。これが彼らが書きたい音楽なのか、或いは藝祭ということで、お祭り的な親しみやすさとか、一般のお客の好みを意識したのか、はたまた大学が今やこういう音楽へと学生を向けているのか、少々疑問が残った。
命短し恋せよ乙女
~第2ホール~
1.ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
2.ビゼー/ハバネラ
3.フォーレ/夢のあとに
4.中山晋平/ゴンドラの唄
【演奏】ラブトリオ(屋代佐央里、黒澤亜佳里、日舞:井田桃香)、三輪知愛、丹生谷愛恵
3面の箏と尺八の合奏による恋を歌うクラシックの名曲に合わせて、日本舞踊の舞いが披露された。ここでは井田さんの舞いが素敵だった。「亜麻色の髪の乙女」では、たなびく布をはためかせた雅な舞い、「ハバネラ」では扇を両手に持ち熱くなまめかしい舞い、合奏だけによる「夢のあとに」に続く「ゴンドラの唄」では、か弱い少女の儚い舞いを、着物や髪型を替えて、それぞれの恋の歌に相応しい舞いを見せてくれた。日舞には詳しくないが、日舞の枠を超えるような所作もあったような。何よりもそれぞれのシーンに相応しい繊細で柔らかく、またある時は力強さも感じる四肢の動きから目が離せないほど魅せられた。尺八の調べは自然で長閑で郷愁を誘い、箏の細かい動きは雅さを伝え、両者の合奏は少々怪しいところもあったが、舞いによく合っていた。
オルガン科奏楽堂コンサート
~東京藝術大学奏楽堂~
1.ブクステフーデ/「暁の星はいと美しきかな」BuxWV223
Org:木下天音
2.バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番~Ⅰアダージョ、Ⅱフーガ
Org:牧真人
3.カウフマン/「怯むな、不安な心よ」
Org:栗田麻子/S:岩原綾子/Vn:中村洋太
4.レーガー/「モノローグ」Op.63~パッサカリア
Org:内田莉子
5.メシアン/聖霊降臨祭のミサ~第4曲「鳥と泉」、第5曲「御霊の風」
Org:土生木理紗
6.コシュロー/「シャルル・ラケ」の主題によるボレロ
Org:山司恵莉子/Perc:本間雄也、菊池幸太郎
オルガン科の学生による奏楽堂コンサートの前半を聴いた。ブクステフーデのコラールは、柔らかく控えめな音詮を使い、温かな空気を醸し出していた。バッハは落ち着きと豊かな響き、風格を感じる安定した演奏だった。オリジナルの無伴奏ヴァイオリンの曲とは異なる魅力を持つ充実した楽曲に感じられた。カウフマンでは、天から降り注ぐ淡い光を浴びているような気分に浸った。オルガン演奏台のバルコニーで演奏するソプラノとヴァイオリンはホール全体に響き渡り、オルガンの音と溶け合って得も言われぬ極上の響きを醸し出していた。このホールはステージの音が意外と客席に届きにくいと感じるが、バルコニーでの演奏は一番いい響きが得られるかも。
レーガー作品は骨太で堂々とした演奏で、重厚な響きに圧倒された。レーガーのオルガン作品はもっと演奏されていいと思った。メシアンの音楽からは色彩と光が感じられた。鳥の声を模した音楽はピアノ曲に共通するものがあるうえ、更なるファンタジーの広がりを感じた。コシュローの作品は、2人のパーカッションを配して繰り広げられるボレロ。規則正しいリズムで次第に音量を上げて大音響に達した時の迫力、それが徐々に遠ざかっていくシーンは、ラヴェルのボレロと共通点がある一方、異なるテイストも味わえた。譜面に書かれていない方の即興のパーカッションは、もう少し色々やってもいいのではとも思った。
新しい歌を・・・
~日本歌曲勉強会による新作初演~
~第1ホール~
1.原田穣/夢幻泡影
T:河村春貴/Pf:原田穣
2.長嶋文音/宮沢賢治の2つの詩による作品
S:浅野瑞月/Pf:廣畑湧亮
3.伊藤耕太/雲の信号(詩:宮沢賢治)
vocal:大野詩乃/Pf:伊藤耕太
4.青木大地/小野小町の和歌によるソプラノとピアノのためのコンポジション、抒情小曲集より(詩:室生犀星)
vocal:中村真子/Pf:青木大地
毎年「新作歌曲の会」で新しい歌曲を発表する機会を頂いている身として興味のあった演奏会。この「日本歌曲勉強会」は、大学のカリキュラムでは日本歌曲を歌ったり作曲したりする機会が殆どなく、日本歌曲の存続に危機感を抱いた声楽と作曲の学生によって結成されたグループ。日本歌曲に真摯に向き合っている学生達の発表は、詩を選定し、その詩を吟味して作曲し、声楽の学生がそれを自分の歌として仕上げて行く取り組みが、確かな手ごたえとして結実していることを感じさせる作品と演奏が並んだ。
ただ、和歌の扱いに不自然さを感じたり、ピアノパートにもうひとつ主張があってもいいのではと感じたり、思うところも少なくなかったなか、青木大地さんが作曲して中村真子さんが歌った小野小町の和歌による歌曲は、七五調の和歌の佇まいを大切に、端正でインスピレーションに富み、叙情味溢れる作品に仕上がっていた。中村さんの歌も清楚さのなかにあでやかな色香を湛え、瑞々しく豊かな表情で聴き手の心に入って来た。ピアノパートは即興性を感じ、気持ちや視線が自然と遠くの方へ向かう広がりを感じた。「抒情小曲集」も格調高く、かつ生き生きとした秀作で素敵な演奏だった。
ブラームス弦楽五重奏曲第2番に挑む
~第2ホール~
♪ ブラームス/弦楽五重奏曲第2番ト長調Op.111
【演奏】長谷山と愉快な仲間たち
熱く、前向きで能動的な演奏だった。5人が一丸となって朗々と伸び伸びと楽器を奏でる様子が気持ちいい。ヴァイオリンの2人とヴィオラの2人の応酬、第1ヴィオラの溢れる歌心と、それに絡む第2ヴィオラとの一体感、センターに座るチェロが孤高の存在感で堂々と歌う姿も格好よく、低音のピッチカートを爪弾く響きもいい。5人は物怖じすることなく弓の根元から先端まで大きく使ってダイナミックで充実したハーモニーを響かせた。それだけでなく、弱音の囁きや、静かに奏でるシーンも味があって堂に入っていて、ブラームスの魅力を十分に出した演奏だった。
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事前申込みで取れた5つの演奏会を聴いた感想。その合間にピロティでチラッとだけMANTO VIVOのライブも聴きました。
チラ聴きしか出来なかったピロティでのManto Vivoライブ
作曲科1年新作室内楽
~第2ホール~
1.吉田奏子/37→24
dram:徳冨遼太/Pf:渡辺俊爾
2.龍瀧晴/「驟雨」-オーボエとピアノのための-
Ob:岩井美嘉/Pf:龍瀧晴
3.広田流衣/あなたへ
A:池田ひよ/Pf:広田流衣
4.柴田歩/狐火
龍笛:後藤宜裕/Pf:柴田歩
5.佐伯花衣/妖精からの招待状
Fl:高須蘭、長井七葉/Pf:柴田陽人
作曲科1年生5名の有志による室内楽の新曲発表。スネアドラムとピアノによる吉田さんの「37→24」は、スネアの鮮やかなバチさばきで様々な奏法を駆使し、多彩な音で喧騒や生活音の雰囲気などがよく出ていた。ピアノがもっと暴れてもいいかな。龍瀧さんのオーボエとピアノのための「驟雨」はフォーレ風の音楽。流麗なピアノと叙情的なオーボエの調べが溶け合っていた。広田さんの「あなたへ」は、アルトとピアノのための歌曲。柴田トヨさんの清らかな詩が素直に音楽になった穏やかで美しく、ユーモアもある歌。池田さんの清楚な歌がよく合っていた。深みが加わると更に良くなりそう。ピアノはもっと語ってもいいのでは?蓋を全部閉じてしまうと音がこもるので、せめて半開でよかったかも。柴田さんの「狐火」は、和の音階を使った龍笛と、スクリャービン調に書かれたピアノとのデュオ。狐火が彷徨う様子がイメージされたが、両者がそれぞれの枠に収まってしまう印象もあった。佐伯さんの「妖精からの招待状」は、2本のフルートが戯れ合い、ピアノと遊ぶロマンチックで微笑ましい平和な音楽。
藝大の気鋭の作曲科1年の新作発表ということで、サプライズを求めていた演奏会だったが、そんな挑戦的な音楽に出会うことはなく、一昔前の新作発表とは随分様子を異にしているという印象。これが彼らが書きたい音楽なのか、或いは藝祭ということで、お祭り的な親しみやすさとか、一般のお客の好みを意識したのか、はたまた大学が今やこういう音楽へと学生を向けているのか、少々疑問が残った。
命短し恋せよ乙女
~第2ホール~
1.ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
2.ビゼー/ハバネラ
3.フォーレ/夢のあとに
4.中山晋平/ゴンドラの唄
【演奏】ラブトリオ(屋代佐央里、黒澤亜佳里、日舞:井田桃香)、三輪知愛、丹生谷愛恵
3面の箏と尺八の合奏による恋を歌うクラシックの名曲に合わせて、日本舞踊の舞いが披露された。ここでは井田さんの舞いが素敵だった。「亜麻色の髪の乙女」では、たなびく布をはためかせた雅な舞い、「ハバネラ」では扇を両手に持ち熱くなまめかしい舞い、合奏だけによる「夢のあとに」に続く「ゴンドラの唄」では、か弱い少女の儚い舞いを、着物や髪型を替えて、それぞれの恋の歌に相応しい舞いを見せてくれた。日舞には詳しくないが、日舞の枠を超えるような所作もあったような。何よりもそれぞれのシーンに相応しい繊細で柔らかく、またある時は力強さも感じる四肢の動きから目が離せないほど魅せられた。尺八の調べは自然で長閑で郷愁を誘い、箏の細かい動きは雅さを伝え、両者の合奏は少々怪しいところもあったが、舞いによく合っていた。
オルガン科奏楽堂コンサート
~東京藝術大学奏楽堂~
1.ブクステフーデ/「暁の星はいと美しきかな」BuxWV223
Org:木下天音
2.バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番~Ⅰアダージョ、Ⅱフーガ
Org:牧真人
3.カウフマン/「怯むな、不安な心よ」
Org:栗田麻子/S:岩原綾子/Vn:中村洋太
4.レーガー/「モノローグ」Op.63~パッサカリア
Org:内田莉子
5.メシアン/聖霊降臨祭のミサ~第4曲「鳥と泉」、第5曲「御霊の風」
Org:土生木理紗
6.コシュロー/「シャルル・ラケ」の主題によるボレロ
Org:山司恵莉子/Perc:本間雄也、菊池幸太郎
オルガン科の学生による奏楽堂コンサートの前半を聴いた。ブクステフーデのコラールは、柔らかく控えめな音詮を使い、温かな空気を醸し出していた。バッハは落ち着きと豊かな響き、風格を感じる安定した演奏だった。オリジナルの無伴奏ヴァイオリンの曲とは異なる魅力を持つ充実した楽曲に感じられた。カウフマンでは、天から降り注ぐ淡い光を浴びているような気分に浸った。オルガン演奏台のバルコニーで演奏するソプラノとヴァイオリンはホール全体に響き渡り、オルガンの音と溶け合って得も言われぬ極上の響きを醸し出していた。このホールはステージの音が意外と客席に届きにくいと感じるが、バルコニーでの演奏は一番いい響きが得られるかも。
レーガー作品は骨太で堂々とした演奏で、重厚な響きに圧倒された。レーガーのオルガン作品はもっと演奏されていいと思った。メシアンの音楽からは色彩と光が感じられた。鳥の声を模した音楽はピアノ曲に共通するものがあるうえ、更なるファンタジーの広がりを感じた。コシュローの作品は、2人のパーカッションを配して繰り広げられるボレロ。規則正しいリズムで次第に音量を上げて大音響に達した時の迫力、それが徐々に遠ざかっていくシーンは、ラヴェルのボレロと共通点がある一方、異なるテイストも味わえた。譜面に書かれていない方の即興のパーカッションは、もう少し色々やってもいいのではとも思った。
新しい歌を・・・
~日本歌曲勉強会による新作初演~
~第1ホール~
1.原田穣/夢幻泡影
T:河村春貴/Pf:原田穣
2.長嶋文音/宮沢賢治の2つの詩による作品
S:浅野瑞月/Pf:廣畑湧亮
3.伊藤耕太/雲の信号(詩:宮沢賢治)
vocal:大野詩乃/Pf:伊藤耕太
4.青木大地/小野小町の和歌によるソプラノとピアノのためのコンポジション、抒情小曲集より(詩:室生犀星)
vocal:中村真子/Pf:青木大地
毎年「新作歌曲の会」で新しい歌曲を発表する機会を頂いている身として興味のあった演奏会。この「日本歌曲勉強会」は、大学のカリキュラムでは日本歌曲を歌ったり作曲したりする機会が殆どなく、日本歌曲の存続に危機感を抱いた声楽と作曲の学生によって結成されたグループ。日本歌曲に真摯に向き合っている学生達の発表は、詩を選定し、その詩を吟味して作曲し、声楽の学生がそれを自分の歌として仕上げて行く取り組みが、確かな手ごたえとして結実していることを感じさせる作品と演奏が並んだ。
ただ、和歌の扱いに不自然さを感じたり、ピアノパートにもうひとつ主張があってもいいのではと感じたり、思うところも少なくなかったなか、青木大地さんが作曲して中村真子さんが歌った小野小町の和歌による歌曲は、七五調の和歌の佇まいを大切に、端正でインスピレーションに富み、叙情味溢れる作品に仕上がっていた。中村さんの歌も清楚さのなかにあでやかな色香を湛え、瑞々しく豊かな表情で聴き手の心に入って来た。ピアノパートは即興性を感じ、気持ちや視線が自然と遠くの方へ向かう広がりを感じた。「抒情小曲集」も格調高く、かつ生き生きとした秀作で素敵な演奏だった。
ブラームス弦楽五重奏曲第2番に挑む
~第2ホール~
♪ ブラームス/弦楽五重奏曲第2番ト長調Op.111
【演奏】長谷山と愉快な仲間たち
熱く、前向きで能動的な演奏だった。5人が一丸となって朗々と伸び伸びと楽器を奏でる様子が気持ちいい。ヴァイオリンの2人とヴィオラの2人の応酬、第1ヴィオラの溢れる歌心と、それに絡む第2ヴィオラとの一体感、センターに座るチェロが孤高の存在感で堂々と歌う姿も格好よく、低音のピッチカートを爪弾く響きもいい。5人は物怖じすることなく弓の根元から先端まで大きく使ってダイナミックで充実したハーモニーを響かせた。それだけでなく、弱音の囁きや、静かに奏でるシーンも味があって堂に入っていて、ブラームスの魅力を十分に出した演奏だった。
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