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東京二期会 宮本亜門演出シリーズ「フィガロの結婚」

2006年09月18日 | pocknのコンサート感想録2006
9月18日(月)東京二期会オペラ劇場公演 ~宮本亜門演出シリーズ~
オーチャードホール

【演目】
モーツァルト「フィガロの結婚」K.492

【配役】
伯爵:黒田博(Bar)、伯爵夫人:佐々木典子(S)、フィガロ:山下浩司(Bar)、スザンナ:薗田真木子(S)、ケルビーノ:林 美智子(MS)、バルトロ 鹿野由之(B)、マルチェリーナ:竹本節子(MS)、ドン・バジリオ:経種廉彦(T)、ドン・クルツィオ:牧川修一(T)、アントニオ:筒井修平(B)、バルバリーナ:赤星啓子(S) 他

【演出】宮本亜門 【装置】ニール・パテル 【衣装】前田文子

【演奏】
マンフレッド・ホーネック指揮 読売日本交響楽団/二期会合唱団

2002年にプレミエとなった宮本亜門演出の「フィガロ」の再演。その後も宮本亜門の演出するオペラはよく話題に上るが、特に奇抜とか斬新というものではなく、かといって伝統を重んじたようなものでもない。正攻法的な現代風演出で、この物語を分かりやすく表現していたように思う。

サイズの違う大きな枠を使った簡略化された舞台装置をいろいろに動かし、またそこに当たる照明などで効果を与え、場面の情景と登場人物の心理状況を描く。人物の動きはかなりのオーバーアクションで、感情表現がストレート。それは視覚的な印象だけでなく、歌手達の歌唱表現にも及んでいたようにも感じた。婚礼の場面の舞台上のチェンバロ弾きのすごいアクションには何の意味があるのか、など多少の疑問は感じたが、オペラを分かりやすくする、という意味において概ねこうしたアクションにも好感を持った。

ただ、この演出で「フィガロ」のどのような全体像を描こうとしたかったのか、といった大きなヴィジョンはよく見えてこなかった。オペラはまずは楽しめることが一番、というのがぼくのオペラ上演に求めることではあるが、どんな演目にしてもモーツァルトの良い公演に接すると、人間愛がひしひしと伝わってきてジーンとなるところが、楽しかっただけで終わってしまったようなところが多少気にはなった。

歌手達の多くは若い世代から集められ、今後の活躍が益々期待できる粒ぞろい。薗田さんがスザンナ役に抜擢されたのは嬉しい。賢く、機転の利く、チャーミングなスザンナを演じていた。伯爵を演じた黒田博も貫禄があり表現力にすぐれ、一番存在感を感じさせた。マルチェリーナを歌った竹本節子は懐の深い歌唱と演技で大健闘。伯爵夫人の佐々木典子、ケルビーノの林美智子も艶のある美声でたっぷりとした歌を聴かせてくれたが、音の先端まで神経を行き届かせてコントロールできると更に印象深くなろう。フィガロ役の山下浩司はよく役柄をこなしていたが、声にも表現力にももうひとつ頼もしさが欲しい。その他の歌手たちもよく健闘していた。抜きん出た存在、という点では多少の物足りなさも感じたが、アンサンブルは大変充実していて、オペラの肝心な場面を盛り上げていた。

ホーネック指揮読響も表情豊かで好印象。テンポよく進み、軽やかで、ウィットに富んだ表現をあちこちで聴かせてくれた。とても良いとは思ったが、聴き終わってみるとオーケストラの印象が意外と薄い。「これだ!」と言うような惚れ惚れするような歌とか、色気がなかったのかな… なんて言うのは贅沢な望みかも知れない。

ちょっと注文もつけてしまったが全体としてのレベルは高いし、面白く仕上がっていたと思う。個人的にとても応援している薗田真木子さんが、この大舞台を機に益々活躍されることを祈っています。

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