1月24日(金)トゥガン・ソヒエフ 指揮 NHK交響楽団
《2025年1月Cプロ》 NHKホール
【曲目】
1.ストラヴィンスキー/組曲「プルチネッラ」
2.ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 Op.68
N響1月定期は、全てのプログラムでN響との蜜月関係を深めているトゥガン・ソヒエフの指揮。Cプロはストラヴィンスキーとブラームスという、全くタイプの異なる作曲家の作品が並んだが、どちらもソヒエフの力量が期待できそう。
前半のプルチネッラは室内楽的な音楽の佇まいを無理なく自然に聴かせ、軽やかでリラックスした演奏が繰り広げられた。プレイヤーそれぞれがソロの妙技を力むことなく楽しげに交わし、その中で思いっきりのいいアプローチで攻める場面も映えた。終曲ではトゥッティが弾けたが、全体的にそれぞれの楽曲がもう少し強い個性を主張してもいいのではとも感じた。
後半はブラ1。ソヒエフは全体を丁寧に、懐深くに抱き込むようにじっくりと吟味して、大きな織物に仕上げていった。演奏の基本はたっぷりとしたレガート。遅めのテンポで一つ一つの音をソステヌート気味に十分に保ち、次の音へと受け渡し、アンサンブル全体が熱くて深い呼吸を繰り返す。アプローチはあくまでも柔らかく、節度を保ち、激烈に訴えかけてきたり、押し付けてきたりすることはない。ヴォルテージをグイッと上げてくると思っていたところで、むしろ声を潜めるような表現もあったが、これがソヒエフが表現したいブラームスなのだろう。
ブラームスの4つの交響曲のなかで最も重く熱いイメージの最初のシンフォニーが、室内楽やピアノの小品でブラームスが晩年に至った彼岸の境地の作品のようにも聴こえた。心拍数が上がり身体が熱く火照るような演奏を期待していたが、こういうブラ1もあるんだと教えられた思い。
そんなソヒエフのアプローチに、N響は最高のパフォーマンスで応えたと云っていい。濃厚で香り高い弦楽合奏、随所で惚れ惚れする歌を聴かせてくれた吉村さんのオーボエ、何ともデリケートで弱音の美しいクラで魅了した松本さん(かな?)、マロさんのソロはオケにほどよく溶け込みながらくっきりと映え、甘美だけれどロマンチックになり過ぎず、優美な調べを奏でた。
そのマロさんはこのCプロがN響定期の最後のステージということで、ステージに登場する時は盛大な拍手が起こり、終演後はソヒエフと親し気に握手を交わすマロさんに、一段と大きな拍手と共に「マロさ~ん!」「マロ~!」の掛け声も飛んだ。28年の長きに渡ってN響のコンマスを務めてきたマロさんは、まさにN響の顔。お堅いN響のイメージを一新し、柔らかく優美なオケ作りに大きく寄与しただけでなく、後進の育成にも情熱を傾け、また、素晴らしい音楽仲間の輪を作り上げ、客層も大きく広げるという、コンマスの枠を超えて尽力した功績も大きい。N響でのマロさんはもう聴けないが、これからも様々な場面で生きた音楽、ワクワクする音楽を聴かせてくれることだろう。ありがとう、マロさん!お疲れさまでした。
N響の機関誌「フィルハーモニー」には、1月Cプロがマロさんの最後の定期とのお知らせと、マロさんの挨拶文が掲載されていた。他のオケでは慣例とも云えるが、フィルハーモニーに掲載されたのはマロさん効果だろう。これを機に、退団する楽員のステージ情報は今後も載せてもらいたい。
楽員退場後もステージに呼び戻されるマロさん
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前半のプルチネッラは室内楽的な音楽の佇まいを無理なく自然に聴かせ、軽やかでリラックスした演奏が繰り広げられた。プレイヤーそれぞれがソロの妙技を力むことなく楽しげに交わし、その中で思いっきりのいいアプローチで攻める場面も映えた。終曲ではトゥッティが弾けたが、全体的にそれぞれの楽曲がもう少し強い個性を主張してもいいのではとも感じた。
後半はブラ1。ソヒエフは全体を丁寧に、懐深くに抱き込むようにじっくりと吟味して、大きな織物に仕上げていった。演奏の基本はたっぷりとしたレガート。遅めのテンポで一つ一つの音をソステヌート気味に十分に保ち、次の音へと受け渡し、アンサンブル全体が熱くて深い呼吸を繰り返す。アプローチはあくまでも柔らかく、節度を保ち、激烈に訴えかけてきたり、押し付けてきたりすることはない。ヴォルテージをグイッと上げてくると思っていたところで、むしろ声を潜めるような表現もあったが、これがソヒエフが表現したいブラームスなのだろう。
ブラームスの4つの交響曲のなかで最も重く熱いイメージの最初のシンフォニーが、室内楽やピアノの小品でブラームスが晩年に至った彼岸の境地の作品のようにも聴こえた。心拍数が上がり身体が熱く火照るような演奏を期待していたが、こういうブラ1もあるんだと教えられた思い。
そんなソヒエフのアプローチに、N響は最高のパフォーマンスで応えたと云っていい。濃厚で香り高い弦楽合奏、随所で惚れ惚れする歌を聴かせてくれた吉村さんのオーボエ、何ともデリケートで弱音の美しいクラで魅了した松本さん(かな?)、マロさんのソロはオケにほどよく溶け込みながらくっきりと映え、甘美だけれどロマンチックになり過ぎず、優美な調べを奏でた。
そのマロさんはこのCプロがN響定期の最後のステージということで、ステージに登場する時は盛大な拍手が起こり、終演後はソヒエフと親し気に握手を交わすマロさんに、一段と大きな拍手と共に「マロさ~ん!」「マロ~!」の掛け声も飛んだ。28年の長きに渡ってN響のコンマスを務めてきたマロさんは、まさにN響の顔。お堅いN響のイメージを一新し、柔らかく優美なオケ作りに大きく寄与しただけでなく、後進の育成にも情熱を傾け、また、素晴らしい音楽仲間の輪を作り上げ、客層も大きく広げるという、コンマスの枠を超えて尽力した功績も大きい。N響でのマロさんはもう聴けないが、これからも様々な場面で生きた音楽、ワクワクする音楽を聴かせてくれることだろう。ありがとう、マロさん!お疲れさまでした。
N響の機関誌「フィルハーモニー」には、1月Cプロがマロさんの最後の定期とのお知らせと、マロさんの挨拶文が掲載されていた。他のオケでは慣例とも云えるが、フィルハーモニーに掲載されたのはマロさん効果だろう。これを機に、退団する楽員のステージ情報は今後も載せてもらいたい。
楽員退場後もステージに呼び戻されるマロさん
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