7月11日(水)リッカルド・ムーティ指揮 PMFオーケストラ
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1.ヴェルディ/歌劇「運命の力」序曲
2.モーツァルト/オーボエ協奏曲 ハ長調 K. 314(285d)
Ob:マルティン・ガブリエル
3.シューベルト/交響曲 第8番 ハ長調 D. 944「ザ・グレイト」
【アンコール】
ヨーゼフ・シュトラウス/天体の音楽
バーンスタインが提唱して始まったPMFは、世界中から若くて優秀な学生や音楽家をオーディションで選び、札幌を舞台に世界的な名演奏家達がレッスンをしてその成果を演奏会で披露するという音楽祭。そのPMFオーケストラ東京公演の今年の指揮はムーティ!いやがうえにも期待が高まる。
まずはムーティにぴったりの「運命の力」序曲で幕開けだ。運命の一撃に続くざわめき沸き立つような弦の、何と臨場感溢れる能動的な問いかけ。オペラ全体が見えてくるようなまとまりと劇的な表現に、冒頭からゾクゾクきた。
続くモーツァルトではオーケストラの柔軟性と色彩感に脱帽。明るい高原で風にそよぐ森のざわめき、森の木々の落とす影からは印象派の画家が影に様々な色彩を見出したように、多彩な色を感じた。チャーミングな歌いまわし、自然な表現のなかに要所要所に施される薬味のような緊張感… 若いオーケストラがムーティの指揮でリラックスした自然な呼吸のモーツァルトを奏でる。マルティン・ガブリエルの柔らかく優美な歌のオーボエソロももちろん素晴らしく、すっかり幸福感に浸ってしまった。
さて、メインの「グレート」がまた極めつけの名演となった。これまでに生で聴いたムーティではヴェルディのレクィエムとか、プロコのロミオとジュリエットとかパワー全開の曲が多かったが、こうした泰然自若とした音楽に見せるムーティの光るセンスと懐の深さも絶品だ。世界中から選りすぐられた若いメンバーによる臨時オーケストラは、何の気負いも変な緊張もなく、伸び伸びと心から音楽することを楽しんでいるように柔軟で瑞々しい演奏を繰り広げる。新緑に覆われ雄大な裾野を広げた名山の趣き。
ムーティは才能ある若いプレイヤー達から自然にその持ち味を最大限に引き出すようにリードして行く。弦の軟らかなハーモニー、とりわけ内声の心憎いような歌いまわしがたまらない魅力を醸し出す。金管群も音を荒げることなく、軟らかく充実した響きを基調にしてこの音楽の奥深さを描き出す。
そして第1楽章のコーダとか、第3楽章やフィナーレなどのここぞというときに見せるムーティの絶妙なドライブの妙。あの畳み掛けるようなタイミングとか息遣いはムーティの棒なくしては考えられない。それがいかに聴く者を心を高揚させていくことか。力任せのパワーとは一味も二味も違う力強さでこの大曲が締めくくられた。若くて瑞々しい息吹きに溢れた幸せ感いっぱいの演奏は「血気盛んな若者達の音楽」という次元を凌駕したいつまでも心に残るような感動を与えてくれた。
アンコールでは珍しいヨーゼフ・シュトラウスの音楽が、やはりチャーミングで絶妙な歌心とともに届けられた。コンマス席のヒンクをはじめ、オケのあちこちにPMFの講師陣のウィーン・フィルの首席奏者達を配したオケ(モーツァルトだけは生徒だけの編成)でこんな音楽を聴いていると、何だかウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを聴いているような気分になった。
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1.ヴェルディ/歌劇「運命の力」序曲
2.モーツァルト/オーボエ協奏曲 ハ長調 K. 314(285d)
Ob:マルティン・ガブリエル
3.シューベルト/交響曲 第8番 ハ長調 D. 944「ザ・グレイト」
【アンコール】
ヨーゼフ・シュトラウス/天体の音楽
バーンスタインが提唱して始まったPMFは、世界中から若くて優秀な学生や音楽家をオーディションで選び、札幌を舞台に世界的な名演奏家達がレッスンをしてその成果を演奏会で披露するという音楽祭。そのPMFオーケストラ東京公演の今年の指揮はムーティ!いやがうえにも期待が高まる。
まずはムーティにぴったりの「運命の力」序曲で幕開けだ。運命の一撃に続くざわめき沸き立つような弦の、何と臨場感溢れる能動的な問いかけ。オペラ全体が見えてくるようなまとまりと劇的な表現に、冒頭からゾクゾクきた。
続くモーツァルトではオーケストラの柔軟性と色彩感に脱帽。明るい高原で風にそよぐ森のざわめき、森の木々の落とす影からは印象派の画家が影に様々な色彩を見出したように、多彩な色を感じた。チャーミングな歌いまわし、自然な表現のなかに要所要所に施される薬味のような緊張感… 若いオーケストラがムーティの指揮でリラックスした自然な呼吸のモーツァルトを奏でる。マルティン・ガブリエルの柔らかく優美な歌のオーボエソロももちろん素晴らしく、すっかり幸福感に浸ってしまった。
さて、メインの「グレート」がまた極めつけの名演となった。これまでに生で聴いたムーティではヴェルディのレクィエムとか、プロコのロミオとジュリエットとかパワー全開の曲が多かったが、こうした泰然自若とした音楽に見せるムーティの光るセンスと懐の深さも絶品だ。世界中から選りすぐられた若いメンバーによる臨時オーケストラは、何の気負いも変な緊張もなく、伸び伸びと心から音楽することを楽しんでいるように柔軟で瑞々しい演奏を繰り広げる。新緑に覆われ雄大な裾野を広げた名山の趣き。
ムーティは才能ある若いプレイヤー達から自然にその持ち味を最大限に引き出すようにリードして行く。弦の軟らかなハーモニー、とりわけ内声の心憎いような歌いまわしがたまらない魅力を醸し出す。金管群も音を荒げることなく、軟らかく充実した響きを基調にしてこの音楽の奥深さを描き出す。
そして第1楽章のコーダとか、第3楽章やフィナーレなどのここぞというときに見せるムーティの絶妙なドライブの妙。あの畳み掛けるようなタイミングとか息遣いはムーティの棒なくしては考えられない。それがいかに聴く者を心を高揚させていくことか。力任せのパワーとは一味も二味も違う力強さでこの大曲が締めくくられた。若くて瑞々しい息吹きに溢れた幸せ感いっぱいの演奏は「血気盛んな若者達の音楽」という次元を凌駕したいつまでも心に残るような感動を与えてくれた。
アンコールでは珍しいヨーゼフ・シュトラウスの音楽が、やはりチャーミングで絶妙な歌心とともに届けられた。コンマス席のヒンクをはじめ、オケのあちこちにPMFの講師陣のウィーン・フィルの首席奏者達を配したオケ(モーツァルトだけは生徒だけの編成)でこんな音楽を聴いていると、何だかウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを聴いているような気分になった。