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田部京子「室内楽の夕べ」 ~都民芸術フェスティバル~

2010年01月21日 | pocknのコンサート感想録2010
1月21日(木)田部京子「室内楽の夕べ」
東京文化会館小ホール

【曲目】
1. シューマン/ピアノ三重奏曲第1番二短調 Op.63
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調 Op.24「春」
2. ブラームス/ピアノ五重奏曲ヘ短調Op.34
【演 奏】
Vn:矢部達哉、島田真千子(2)/Vla:井野邉大輔/Vc:山本裕康/Pf:田部京子


田部京子「室内楽の夕べ」と銘打って行なわれた都民芸術フェスティバルのこの室内楽コンサートは、ピアノの田部京子が全ての曲に登場し、磨かれた美しい音と叙情豊かで瑞々しく活き活きとしたピアノを披露した。アンサンブルの中でも要となるべく確かなリズムを刻み、先導するように能動的な演奏に終始し、まさに公演タイトルにふさわしい役割を演じた。

一方で、アンサンブルでもっと主導的な役割を担っていいはずの矢部さんのヴァイオリンが大人しすぎて、演奏全体がなかなか熱くならない。矢部さんのヴァイオリンは柔らかな美音を奏ではするが、お行儀よくこじんまりとまとまって、音が明確な意思を持って向かおうとするベクトルが弱い。

最初のシューマンのトリオではチェロの山本さんも大人しく、トリオに求められるはずの「個」と「個」のしのぎを削るぶつかり合いは聴けなかったし、次のスプリングソナタも心地好い美音はあってもデュオとしての面白さは伝わってこなかった。草食系が人気のこのご時世にはこうした演奏が好まれるのかも知れないが個人的には物足りない。

それでも今夜の演奏会のフルメンバーが揃ったブラームスのクィンテットではようやくアンサンブルの温度が上がってきて、聴いていて気持ちがステージに向かった。シューマンでは目立たなかった山本さんのチェロが熱い歌を奏で、矢部さんのヴァイオリンも粘っこい存在感を示し始めた。セカンドヴァイオリンの島田さんとヴィオラの井野邉さんも聴かせどころをしっかり押さえ、変わらず冴え渡る田部さんのピアノと共に上々のアンサンブルを響かせた。

この曲に本当は望みたい「ピアノを要に4人の弦楽器奏者が膝を突き合わして焦臭さを感じるほどの白熱した演奏」というわけには行かなかったが、充実した演奏を聴けて気分も良くなった。

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