facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

太魯閣 ~ケタ外れのスケールの渓谷と滝めぐり~(台湾旅行2014)

2015年03月13日 | おもしろすぎる台湾

台湾旅行2014
太魯閣 ~ケタ外れのスケールの渓谷と滝めぐり~


今回の台湾旅行での最大のハイライトは、台湾が世界に誇る屈指の景勝地、太魯閣(たろこ)渓谷を訪れることだった。せっかくの絶景も霧で何も見えなかったりしてはつまらないので、花蓮には2泊して、2日目がダメなら3日目に行けるようにしておいた。2日目の朝、昨夜の雨は上がり、空の半分ぐらい青空が広がっていて遠くの山も見えていた。テレビの天気予報では降水確率が50%と出ていて雨マークがあるのが気になったが、概ね大丈夫そう。

太魯閣渓谷のエリアは広くてビューポイントがいくつもある。見どころは車窓からではなく、自分の足で歩いて絶景を堪能したい。そこで、往路はタクシーをチャーターして、要所では車から降りて遊歩道などを歩いて見学しつつ太魯閣観光終着点の天祥まで行き、そこから更に白楊瀑布という大きな滝までハイキングして、帰りはバスを使う、という計画を立てた。

タクシーのチャーターはホテルのフロントで頼んだ。天祥までの片道は一律1700元(約5000円)。迎えに来たタクシーの運転手さんは人の良さそうなオバちゃん。「日本語ができると嬉しい」とホテルには伝えていたが、日本語は殆どわからずほぼ中国語オンリーとなった。「今日は雨が降るって聞いたけど…」と向けると、「雨が降るのは夜。今日は良い天気よ」と言ってくれた。確かに青空は更に広がってきて、遠くの高い山肌もくっきりと見えている。



タクシーは海辺をしばらく走ったあと内陸へと道を分け、約30分で太魯閣国立公園の入口にある門へやって来た。

門は撮影ポイントになっていて、タクシーはしばらく停まってくれた。奥の山々を眺めるにもいい場所だ。門と一緒に写真におさまるには車道へ出なければならないので要注意。

この道は太魯閣の最奥まで通じているだけでなく、更に台湾中央部にはだかる3000m級の険しい山岳地帯を貫いて西側の台中までを結ぶ「中部東西横貫公路」の起点でもある。

山と渓谷を眺めながらのドライブが始まった。太陽の光を受けた木々の緑が目に染みる。門から5分ほど行ったところにある立派な橋の手前で一旦車を降りた。

砂卡礑歩道
橋の下には砂卡礑歩道という遊歩道がある。周囲の山はまだそれほど高くなく、渓谷も太魯閣でイメージしていた断崖という感じではないが、渓谷の大きな岩や、頭上に迫る大理石の大岩を潜り抜けたりするところに太魯閣を感じた。


遊歩道は全長4.5キロもあるそうだが、ここよりももっと「これぞ太魯閣!」と思えるところを歩きたいので早々に引き返し、橋の向こうの駐車場で待っていてくれたタクシーに再び乗車。

続く見学ポイントだった長春祠は、大雨の落石被害による復旧が終わっておらず立入禁止となっているので残念ながら通過。道はだんだんと険しさを増し狭くなってきた。


燕子口
途中でタクシーのおばちゃんだけ車を降りて、道端の係りの人からヘルメットをもらって戻ってきた。この先の燕子口歩道を歩くときにはヘルメット着用が必要とのこと。そして燕子口歩道の入口でタクシーを降りた。全員ヘルメットをかぶり、太魯閣観光の核心部とも言える燕子口散策に出発!


燕子口では車は新しくできた左のトンネルを走り、右側の旧道が歩行者用の遊歩道となっている。人力で掘って作られたというトンネルを抜けると断崖の縁へ出る。


そこからの眺めは、見上げれば目の前の岩壁が垂直に空高く聳え、下を覗けば谷底深くに流れる渓谷の乳青色の水が光っていた。これぞ想像していた太魯閣の大絶景だ。


燕子口付近の岩壁には下の写真のようにたくさんの穴があいているのが見える。これらの穴は、ここに生息するイワツバメが作った巣だと言われていたことから、ここが燕子口と呼ばれるようになったそうだ。

実際にはツバメが穴を掘ったわけではないようだが、この辺りにはたくさんのツバメが飛び交っていて、岩の出っ張りや穴の中で羽を休めているツバメもたくさん見かけた。


太魯閣渓谷は、燕子口のあたりから谷の形態がV字型からU字型渓谷に変わるが、それは渓谷を組成する岩石の種類が片麻岩から石灰岩地質に変化するためだそうだ。



渓谷の両側の岩壁の間隔はいよいよ狭まり、それだけにそそり立つ絶壁の迫力が伝わってくる。絶壁は垂直どころか、高くなるほどせり出している。まさに太魯閣の核心部に身を置いていることを実感する。


錐麓斷崖
遊歩道の途中でタクシーが待っていてくれたが、そこでは乗らずに終点まで歩いてから乗車。そこから少し行ったところで再び降車。ここは錐麓斷崖という名のついた巨大な1枚岩の大理石の絶壁で、遥か天空までそそり立つド迫力。この岩壁は幅が1200メートル、高さは600メートルもあるそうだ。この迫力、写真ではとても伝えきれない。


再びタクシーで断崖の道を進む。岩壁をくり抜いたいくつものトンネルを通り抜けるたびに、よくもこんな道を作ったものだと驚いてしまう。工事は何と手作業だったとか。

太魯閣渓谷で一番の見どころと言われている九曲洞も崖崩れの影響で立入禁止。太魯閣の見学ポイントの状況がわかるこのサイトで前もってわかってはいたがやっぱり残念。ただ、台中までつながるこの中部東西横貫公路は、本来は道など作れない厳しい自然環境に抗って建設されたという。そのため、台風や地震、集中豪雨などの度に道は壊滅的な打撃を受け、その度に大規模な工事で再建するという、大自然とのいたちごっこを繰り返している。

なので、太魯閣の見どころはいつだってどこかが通行止めだ。太魯閣の主な見どころを一度の訪問で全部見ようというのがそもそも不可能ということなのだ。

天祥
険しい断崖の連続から視界が開け、太魯閣観光の終点に位置する天祥に到着した。ここでタクシーとはお別れ。親切でちょっと遠慮がちなタクシーのオバちゃんと記念撮影をしたかったのだが、すごく恥ずかしがって「いやいや、ダメよー」と断られてしまった。お金を渡し、タクシーを見送った。ここからは4人だけでの行動開始だ。

天祥は標高485メートル。お土産屋や食べ物屋、ホテルなどが並ぶちょっとした集落だ。お昼を食べるにはまだちょっと早かったので、山の中腹に見える中華チックな塔まで行ってみることにした。

橋を渡ったところに朱色の立派な門があり、そこをくぐって石段を上がっていくと途中に橙色の瓦屋根がいい味を出しているあずま屋があった。


だんだん大きくなる塔を眺めながら、木々が茂る山道の石段を上って行く…


そして、塔の真下までやってきた。ここは天峯塔という名の七重の塔で、入口の扉は開いていた。

管理人とかはおらず、自由に登れそう。階段が2つあったので、上りと下りで別の階段なのかも知れないがわからない… 

そこへ西洋人のおにいちゃんが下りてきたので「from here up? or from here?」と尋ねてみると「どちらでも大丈夫だと思います」と返事され、「そうか」と思ったところで「ん?日本語じゃないの!」

このおにいちゃん、カリフォルニア出身で三鷹に住み、東大に1年間留学していたとのこと。びっくり!しばらく台湾や日本のことなどをおしゃべりした。そして、らせん階段を延々と登っていくと…

素晴らしいパノラマが目の前に開けた。天祥は山々に囲まれて緑が豊か。渓谷が大きく蛇行している様子も手に取るように見える。


天峯塔は祥徳寺という尼寺の塔ということだが、自然豊かな山そのものがお寺の境内になっている。

塔を下りて、帰りは来たのとは別の道を降りた。その途中に、真っ白な大きな観音像(白衣観音像)が立っていた。高さは「26尺」ということは9メートル弱かな。

台湾の観音像はカラフルで表情もはっきりした表情のものが多いが、こちらは山の懐にひっそりと抱かれた観音様という感じで白一色。品のある穏やかな姿が周囲の自然ととてもマッチしていた。

タクシーを降りたバス停広場へ戻ってランチタイム。少数民族風のおばさんが日本語で呼び込みしていたお店のメニューには、食べたかった竹筒飯があったのでそこに入った。

頼んだのは2種類の竹筒飯(白飯と赤飯)、香腸(腸詰め)、野菜の炒め物、紅焼豆腐、それに筍スープ。竹筒飯は竹の香りがほのかにして美味。他もどれも上品な味つけでおいしかった。

白楊歩道
腹ごしらえも済み、ここからは自分たちの足で太魯閣の大自然に触れるハイキングに出発。目的地は白楊歩道という片道2.1キロのコースの終点にある白楊瀑布。

最初は渓谷を右下に見ながら車道に沿ってしばらく歩く。道端には日本ではみかけない草花が生えている。

眼下にはダイナミックに蛇行する渓谷。


谷側が開けている半トンネルの途中に白楊歩道の入口があった。遊歩道はいきなり真っ暗で長いトンネルで始まっている。

白楊歩道にはトンネルがたくさんあり、トンネル内に照明がないので懐中電灯があるといいと調べたサイトに書いてあった。ヘッドライトを持ってきたが、出口のわずかな光だけを頼りに歩くのも面白い。伊豆の旧道の天城トンネルを思い出す。

最初のトンネルは380メートルと、この遊歩道のなかで最も長くて作りも立派。真っ暗のなか、湿った路面を「ヤッホー!」なんて叫びながらゆっくり歩き進んで行く。

長いトンネルを出ると、今度はもっと荒削りな感じのトンネルが…


遊歩道はずっと緩やかな登り。道幅は広めでギャップも少なく、よく整備されていて林道のよう。それもそのはず、この道は、当初は水力発電用のダム建設のために作られたものだそうだ。結局太魯閣の景観と自然を守るためにダム建設は中止され、遊歩道として使われることになったという(参考サイト)


渓谷を眺めながらの快適なハイキング。すれ違う人たちも結構いる。野鳥の囀りが聞こえ、緑が目に沁みる。ヒラヒラとアサギマダラ?も飛び交っていた。




遊歩道の道端には花がいっぱい咲いていた。台湾でよく見かける南国チックなものではなく、高山植物のように小ぶりで、色も薄めのものが多い。


クリックで拡大

白楊瀑布
トンネルをいくつも通り、小一時間ほど歩いて来た頃、水音がズンズンと大きくなってきた。橋に差しかかると、遊歩道の間近で大きな滝が水しぶきを飛ばし、轟音を上げていた。すごい迫力!


クリックで拡大

更に長い吊り橋が架かっていて、正面の山の高いところから大きな滝が幾段にもなって落ちている。白楊瀑布だ! 吊り橋の先が観瀑台になっている。ゆらゆらと揺れる吊り橋から白楊瀑布の全容が姿を現した。落差は約200メートルあり、太魯閣国立公園内で最大の滝だそうだ。壮大な眺めにただただ息を呑む。


クリックで拡大

水簾洞
さて、白楊歩道はここが終点ではない。吊り橋の手前に「水簾洞」の標識がでている。ネットで調べていた「洞窟の滝」へ更に歩を進める。

トンネルをもう一つ通り、吊り橋から10分ほどでこの遊歩道の最終ポイント「水簾洞」の入口にやってきた。真っ暗な洞窟の入口の穴がぽっかりと開いていて、その前にはカッパを着けた人達がたくさんいて大賑わい。洞窟の手前はゲートで通せんぼしてあって一応立ち入り禁止らしいのだが、みんなそこに出入りしている。

これは行くっきゃない!! 裸足になり、ズボンの裾をまくりあげ、傘とヘッドライトを携行していざ洞窟の滝へ!


洞窟内の右側には路肩があって、最初のうちは足元がビショビショしている程度だったが、やがて水かさが増してきてジャボジャボと歩かなければならなくなる。周囲は真っ暗闇になり何も見えなくなった。ヘッドライトの灯りだけを頼りに進んで行く。洞窟内に響き渡っている滝の音がどんどん近づいてきたと思ったら、いきなり傘が壊れるほどの大量の水が降りかかってきて、情け容赦なく傘を打ちつける。傘をしっかり握りしめ必死に耐えながら進んで行くと、やがて反対側から射し込んできた光に滝が照らされた。とても幻想的!


洞窟の滝は出口近くまでずっと続いていた。これは大自然のド迫力のアトラクションだ!


水簾洞には台湾人のグループが何組もいたし、西洋人も何人も見かけたが、日本人は白楊瀑布でさえ見かけなかった。日本で市販されているガイドブックには、太魯閣は載っていても、こんなに面白いスポットは紹介されていないが、天祥まで来たなら絶対にここまで来なければ損だ。

来た道を戻り、もう一度観瀑台から白楊瀑布をゆっくり眺めた。


台湾では今まで見た覚えがないモミジの木。この辺りはもしかして紅葉がきれいなんだろうか。


太魯閣をたっぷり満喫して、天祥からの帰りは花蓮駅行きの路線バスで戻った。

太魯閣を世界遺産に!
帰り道のバスの車窓から、再び太魯閣渓谷の巨大な断崖を目の当たりにした。

2億年もの太古から何万年もの気の遠くなるような時間をかけて地殻変動や浸食を繰り返して作り上げられたこの大自然の巨大な造形作品の持つパワーを感じずにはいられない。

今回、落石などで見学できなかったところだけでなく、この太魯閣国立公園には見所が無数にある。繰り返し訪れれば訪れるだけ、その奥深い魅力を見せてくれるのだろう。

これほどの場所ならユネスコの世界自然遺産に登録されていてもおかしくないはずだが、台湾はユネスコに加盟することができないため世界遺産の指定も受けられない、というのは理不尽ではないか!

台湾はこんな小国でありながら、世界に誇る大自然や歴史的価値の高い文化財がたくさんある。台湾はこれらをユネスコの支援も受けられず、自分たちだけの手だけで守り、子々孫々へ伝えて行かねばならないことになるが、世界がこれを支援することはできないのだろうか。

そんなことを思いながらネットを検索していたら、「日本から台湾の世界遺産登録を応援する会」という社団法人があることを知った。ユネスコに加盟できくても、台湾の自然や文化財を世界遺産として登録できるように運動しているとのことで、会員登録やネット署名で、台湾の名勝を世界遺産登録するための応援ができるようだ。今や地球全体が運命共同体とも言える。台湾にある貴重な、私たちの地球の遺産を守るため、自分もまずはネット署名で協力し(現在準備中とのこと)、会員登録も検討したい。

花蓮 ~「日本」が残るパワーストーンの町をチャリで巡る~
野柳 ~奇岩の海岸~ & 金山 ~活気ある老街~
台北町歩き ~國立故宮博物院、台北101、台北郵局、北門、饒河街夜市ほか~
台湾旅行2014 メニューページへ


おもしろすぎる台湾


にほんブログ村 海外生活ブログ 台湾情報へにほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ミュージック・フロム・ジャ... | トップ | 「歓喜に寄せて」レクチャー... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

おもしろすぎる台湾」カテゴリの最新記事