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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ル・ポエム・アルモニーク

2014年11月13日 | pocknのコンサート感想録2014
11月13日(木)ル・ポエム・アルモニーク
~ルソン・ド・テネブル(聖週間のための朝課)~
王子ホール

【曲目】
作者不詳/フォーブルドンによる讃美歌 「主よ、われ御身に依り頼みたり」
ド・ラランド/聖木曜日のための第3ルソン
シャルパンティエ/第7瞑想、第9瞑想
ド・ラランド/ミゼレーレ

テオルボ:ヴァンサン・デュメストル(音楽監督)/S:クレール・ルフィリアートル/カウンターT:ブルノ・ル・ルヴルール/T:セルジュ・グビウ/B:ジェフロイ・ビュフィエール/バス・ヴィオル:ルカス・ペレス/Org&Cem:マルアン・マンカル・ベニス

今夜のコンサートは演奏者も曲目もよく知らず「声楽を含む古楽グループが何やら珍しいものをやる」程度の認識で出かけた。けれど、王子ホールの主催で行われるこの手のものに「外れ」はない、という確信めいたものはあった。

ろうそくの光を思わせるほの暗い照明に浮かび上がった演奏者達が繰り広げるフランスバロックのストイックな曲目からは、時空を飛び越えて古のフランスの情景が目に浮かぶようだった。ごく小編成による器楽アンサンブルのごくごく控え目な合奏に乗って、淡々と歌い継がれて行く歌世界。そこからは極上のデリケートさと深い祈りが立ち上ってくる。

キリストの受難後、復活前の「四旬節」と呼ばれる節制と悔悛が問われる期間のために書かれたという音楽は、表面上は控え目でも、深く、親密な心の拠りどころが感じられ、ヨーロッパのカトリック教会でよく見る煌びやかな装飾や華やかなステンドグラスのイメージとは対極の清貧の静けさに包まれていた。時代も様式も異なるが、アルヴォ・ペルトに通じるものを感じる。

「ル・ポエム・アルモニーク」は慎ましい演奏でありながら、その純度の高さ、表現の繊細さ、語りかけの妙味は抜群で、そこで歌われるソプラノのクレール・ルフィリアートルの温かく柔らかな声と表情は、暗い会場にぽっと燈った静かな炎のよう。その炎と、それを取り囲む小さな炎たち(カウンターテナーを含む男声3人の声楽アンサンブル)をじっと見つめているうちに、教会のクリプタ(地下礼拝堂)で一人祈りを捧げている気分になった。

ソプラノのソロと男声三重唱が交互に歌いかわすド・ラランドの「ミゼレーレ」では、男声コーラスを舞台袖から聴かせて遠近感を出し、仄暗い照明の演出効果と相まって聖堂にいる気分を高めた。客席がとても暗いためプログラムの歌詞カードを読むこともなく、ただただ静かな祈りの音楽にどっぷりと浸かる1時間だった。

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