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大野和士指揮 東京都交響楽団/Vn:庄司紗矢香

2012年06月19日 | pocknのコンサート感想録2012
6月19日(火)大野和士 指揮 東京都交響楽団
~第737回 定期演奏会Aシリーズ~
東京文化会館

【曲目】
1.シェーンベルク/浄められた夜
2.シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲第1番
Vn:庄司紗矢香
3.バルトーク/管弦楽のための協奏曲

大野和士と庄司紗矢香が出演し、プログラムも面白そうだったので一回券を買って聴きに来た都響の定期だが、会場の東京文化会館は台風の大接近にも関わらず満員の盛況。都響の人気の高さを知った。

最初のシェーンベルクは透明感のある精巧な演奏で、大野の細やかな気配りが弦楽合奏の隅々まで行き渡っているのを感じたが、この曲は妖しげでムンムンと漂う色気も欲しいな… なんて思っているうちにウトウト。夢見心地のなかでとりあえず音は聞こえているぐらいの状態だったので、詳しいコメントはパス。この曲は多分どんな演奏でいつ聴いても、ずっと覚醒していられる自信はない。

さて次は庄司さんが登場。この曲は初めて聴く。オケは大編成なだけでなく楽器の種類も多い。オケパートはこれを活かして多彩で華やか。音楽は大きな呼吸が主体に進んで行くが、庄司のヴァイオリンはそんな大きく波打つオケという大海の波に上手く乗り、巧みなオールさばきでぐんぐんと進んで行く小舟のよう。小舟とはいってもその存在感は大海と競い合うほど大きく、常に天から一条の光を受けているように映えている。高音が主体のヴァイオリンが、大きく深い息遣いで極上の美音を聴かせる。妖精のようでもあるが、もっと大きな存在感のある女神の歌と言ったほうがいいかも知れない。

庄司紗矢香はストイックに完璧な音楽を追求するヴァイオリニストという印象が強かったが、今夜の演奏を聴いて色気でも並々ならぬものを感じた。オケは華やかな音色や、ヴァイオリンと一緒に奏でるホルンやクラやオーボエなどの管楽器のソロなどが聞きものだったが、ここでもシェーンベルクのときと同様になまめかしい表情が欲しいなと思った。

休憩のあとのバルトークは、今からもう30年ぐらい前の、やはり大野/都響での素晴らしい演奏の記憶がいまだに残っているので期待してしまう。そして、今回の演奏も素晴らしかった。

第1楽章冒頭の低弦のしなやかで濃厚な表現からすでに耳が引かれたが、決定的だったのが第2楽章。隙のないリズムが活き活きと息づき、ソロ楽器たちが抜群の表情付けで楽しげに踊る様子はディベルティメントのよう。ミュートをつけて微妙な色合いをかもしだしていたトランペットがミュートを外して金管のコラールを歌い上げる音色と表情の劇的な変化にも息を呑んだ。第3、4楽章もソロ、トゥッティがそれぞれの持ち味を発揮していたし、両者の軽妙なやり取りも聴きものだった。第3楽章でのピッコロが孤高の存在感を示していたが、これもオケとの対話がうまくできていた証しだろう。第5楽章では大野/都響の実力がフルに発揮され、颯爽とした鮮やかな快演が聴けた。

大野は音楽のディテールと全体の大きな構造のどちらをも的確に把握しつつ、最も理想的に響き、進行するように緻密に練り上げ、更にライブならではの即興的な煌めきを加えて感動を与える。こうした卓越した手腕はサヴァリッシュを思わせる。これに応える都響の技量も大したものだ。

終演後、満員の会場は万雷の拍手とブラボーコールに包まれた。都響の会員も熱い。N響の会員としては、こういう熱いお客がもう少しN響にもいてくれればなと思う。

会場を出ると外は台風の暴風雨圏内に入っていてずぶ濡れの帰宅となった。

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