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東京・春・音楽祭 メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲 他

2012年04月04日 | pocknのコンサート感想録2012
4月4日(火)若き名手達による室内楽の極
東京・・音楽祭

-東京のオペラの森2012-

石橋メモリアルホール
【曲目】
1.モーツァルト/弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 K.516
2. ブラームス/弦楽五重奏曲 第2番 ト長調 op.111
3. メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲 変ホ長調 op.20
【アンコール】
シュポワ/複弦楽四重奏曲Op.65-1~フィナーレ

【演奏】
Vn:長原幸太、西江辰郎、佐久間聡一(3/E)、三浦文彰(3/E)/Vla:鈴木康浩、大島 亮/Vc:上森祥平、宮田 大(3/E)


去年は震災で殆んどの公演が中止になってしまった東京・春・音楽祭、今年は無事に開幕して既に終盤を迎えた。今夜のコンサート会場、石橋メモリアルホールは学生時代、合唱部の毎年の定期演奏会で使った思い出深いホール、だが、最近建て替えられて全く新しくなった。新ホールに来るのは初めて。外観は全く違うが、ホール自体は以前の雰囲気を継承した感じで、初めてという気がしないほど。正面のオルガンは前のホールからの移設だろうか。音響の良さも旧ホールを継承していた。

さて、そんな新しいホールで若い日本の弦楽プレイヤー達による演奏会。メンバーには先月聴いたMAROワールドに出演した面々も多い。1曲目のモーツァルトは、その時同様に若々しく元気に溢れた演奏になると思いきや、とてもデリケートで奥行きのある、大人の雰囲気の演奏が始まった。端正で細やかな表情づけから醸し出される香りが心をくすぐる。気負いはなく、落ち着いた自然な息遣いでアンサンブルがつむがれて行く。この曲の特徴である焦燥感、切なさ、懐かしさといった深いところに潜む感覚が自然な形で表れた第1~3楽章、それとは対照的にあっけらかんとした性格が出勝ちな第4楽章だが、この演奏では、憧憬に溢れ、心の底から静かに沸き上がってくるような幸福感が伝わってきて、それまでの3つの楽章を経たうえでの帰結の意味合いを感じた。それまではお行儀の良いヴァイオリンを聴かせていたファーストの西江さんが、優美な舞いを踊りながら天に昇って行くような演奏で他のメンバーを引き連れ、至福の世界へ引き込んでくれた。

続くブラームスのクィンテットでは、ヴァイオリンとヴィオラが表と裏を入れ替え、より濃いプレイヤーが前に来たのは、濃い音楽に合わせてのことかもと思えるほどアンサンブルがより濃密で熱くなった。メンバーがお互いにより近づいたのではと思えるほど、文字通り5人が膝を突き合わせ一丸となって突進してくる演奏に圧倒された。上森さんの果敢な攻め、鈴木さんのこれでもかと言わんばかりの心を揺さぶってくる歌など、熱い表現で迫ってくる。大人の熟した味わいにも事欠くことなく、濃密なブラームスサウンドを満喫した。

こうなると、一番のお目当てのメンデルスゾーンへの期待は増すばかり。前半は登場しなかった更に若い3人のプレイヤーがそれぞれのパートの表を担当、せっかくなら素晴らしい演奏を聴かせてくれた前半のメンバーにメインのパートをやってもらいたい、なんてちょっと思ったが、演奏が始まるや、この若いプレイヤー達の実力はすぐさま明らかとなった。

この曲で一番目立ち、アンサンブルの牽引役ともなるファーストヴァイオリンの三浦さんは、強靭とも言える強力な音でアンサンブルをグイグイと引っ張っていき、高揚感を煽る。これはすごいヴァイオリニストだ。ブラームスで5人が一丸となったアンサンブルが、そのまま8人に増強され、オーケストラ的なダイナミックな振幅と、オーケストラに優るほどのリアリティで、聴き手の心を鷲づかみにした。ヴィオラの鈴木さんが中央で目配りしてアンサンブルをまとめているように見え、それが若いメンバーに安心感を与えたことが、若手が持ち味を十分に出せた要因とも思えた。フィナーレでの三浦さんと佐久間さんの楽しそうなやり取りも見もの聴きものだった。そんな心の連携プレーが密にとれたアンサンブルで、ジェットコースターに乗っているようなスリル感と爽快感を体験した。演奏している方も心から楽しんでいる様子。

大好きなメンデルスゾーンのこの曲は、演奏の機会は少ないながら、数年来ライブの機会を見つけては出かけていたが、今夜の演奏はこれまでに聴いたこの曲のライブの中でも突出して出色の出来栄えだった。

アンコールでは、若手3人がそれぞれにソロで名曲コンチェルトのさわりを聴かせてくれるという楽しい余興もあり(演奏もスゴかった!)、最後に演奏したシュポワも素晴らしかった。メンバーの益々の成長が楽しみだし、このメンバーでの演奏会を東京・春・音楽祭でシリーズ化してもらいたい!

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