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藝祭2013 3日目 9月8日(日)

2013年09月08日 | pocknのコンサート感想録2013

藝祭2013公式Webサイトより
藝祭2013 3日目 9月8日(日)

作曲科1年生による作品発表会
~第1ホール~

1.中島夏樹/パガニーニの主題による《トランス―スクリプション》
2.馬鶴芳/白い薔薇
3.山本雄一/Reincarnation
4.永井秀和/Would you like Tarantella?
5.山中麻鈴/prism ~for oboe, fatotto and piano~
6.遠山若菜/万華鏡
7.富岡篤志/小品①~フルートとピアノのための
8.橋本歩実/Violin Sonate I 1mov.
9.小野龍一/Futurism
10.浦部雪/Collision
11.大橋征人/自己紹介の歌~手紙
12.藤川大晃/LINE Counterpoint
13.水上颯葵/Fanfare
14.魚返明未/ピアノのための小品 ⅢⅣ


今日は朝から息子も連れて藝祭へ。8時45分配付の整理券をもらったあと第1ホールへ。作曲科1年による作品発表は、金曜日に聴いた2,3年生の作品発表に増してアイディアも手法も様々で、多彩で面白い作品が集まった。演奏の素晴らしさも手伝ってとても楽しめた。どの作品にもそれぞれの個性が明確に刻印され、聴き手に能動的に働きかけてくる力があった。

なかでも夢中で聴き入ってしまったのは、山中麻鈴さんの"prism"。音がアクティブに語りかけ、オーボエとファゴットのスピード感溢れるスリリングなやり取りに息をのんだ。作曲者のピアノと共演した石井智章さんのオーボエと浦田拳一さんのファゴットの明確な意思を持ち、熱のこもった演奏も素晴らしかった。富岡篤志さんの「小品①」も気に入った。流麗で香り立つフルートの調べが素敵な物語を語っているようで、色彩感がある。八木瑛子さんのフルートとリード希亜奈さんのピアノ演奏も音楽を息づかせていた。

その他にも印象に残った曲、演奏が素晴らしかった作品はいくつもあった一方で、頭で構想している段階ではよくても「理」が勝って不自然になってしまったり、出だしはとても印象的で身を乗り出したけれど普通の展開になってしまったり、とてもいい曲だけれど既にどこかで聴いたような気がしたり、と感じた曲もあったが、どの作品からも「今自分が提示できる最良の姿」を見せようという気概が伝わってきて、今後の彼らの創作活動には明るい未来があると感じた。
ブラームス演奏し隊
~第1ホール~

♪ブラームス/弦楽六重奏曲第1番変ロ長調 Op.18
【アンコール】
チャイコフスキー/弦楽六重奏曲ニ短調 Op.70「フィレンツェの思い出」~第3楽章


有名な第2楽章を持つブラームス青年期の力作に、学部生・院生の6人が挑んだ。この曲が持つムンムンする熱気、心の底から歌い上げるひたむきさなど、若きブラームスの熱い思いを能動的に伝える力演だった。6人が息を合わせ、一つの生き物のように呼吸をすることは難しいが、各プレイヤーは自分のパートを精一杯磨き上げ、他のパートに積極的に働きかけ、みんなでいいアンサンブルを作って行こうという意欲が伝わってきた。アンコールはご愛嬌的な気分もあったかも知れないが、やるからにはメインと同じ気持ちで取り組んでもらえると聴き手の印象は更にアップするはず。
東京藝術大学バッハカンタータクラブ~藝祭演奏会~
~第1ホール~

バッハ/クラヴィーア練習曲集第3部~「深き苦しみの淵より汝に向かって叫ばん」BWV687
バッハ/カンタータ第38番「深き苦しみの淵より汝に向かって叫ばん」BWV38
バッハ/カンタータ第8番「最愛の神よ、われいつの日に逝くのか」BWV8


藝祭で絶対に聴き逃したくない公演はやっぱりバッハカンタータクラブ。朝の8時から整理券ゲットで息子と並び、奥さんも加わって3人で聴いた。1ホールでカンタータクラブを聴くのは初めてだったが、響きがよくまとまって聞こえ、ソロの歌や楽器の音もリアルに届いてなかなか良かった。

肝心の演奏だが、内容の濃さといい完成度といい、数ある藝祭公演のなかでも一際輝いていて、心が洗われ、いつもながら幸せな気持ちで満たされる素晴らしいものだった。

厳かなオルガン前奏に続き演奏された前奏と同名のカンタータでは、「苦難の中においても主の救いを信じ、求める」という厳粛な雰囲気が冒頭合唱からひしひしと伝わってきて演奏の虜になった。最近特に好きでよく聴いている8番のカンタータでは、死を前にした諦念から、それを受け入れることを是とする信念と喜びが歌われるが、カンタータクラブの演奏からは揺るぎない心が常に感じられ、聴いていて強い共感に結びつく。

どちらの曲でも、オーケストラは丁寧でありかつ生き生きとした息遣いで語りかけてくる。合唱も然り。特に今回のようなコラールカンタータでは、冒頭合唱からコラールの定旋律が入り、会衆の「思い」がひとつになって訴えてくることが求められるが、カンタータクラブの合唱はそうした「思い」をまっすぐに伝えてくる。それは歌っている学生達の表情にも現れていて、顔の表情がそのまま歌に乗って届いてくる。合唱団員の素敵な表情はこのクラブの伝統なのだろう。こうした表情で音楽を伝えることができるのは、やはりバッハの音楽への強い共感と愛情がこのクラブの根底で脈々と息づいているんだな、としみじみ思いながら、歌に浸って幸せを味わう。

アリアでのオブリガートソロもいつもながら見事な腕前で歌と共に「歌い」、素敵な装飾を施していたが、ソロ楽器で特に感銘を受けたのは森田叡治さんのチェロの通奏低音。フレーズのひとつひとつが格調高く、深い味わいを湛えて語りかけてきてホレボレ。歌のソロでは、テノールの金沢青児さんが、牧師の説教のように穏やかな中にも強い信念を感じる歌を聴かせ、益々の成長が感じられたのをはじめ、どちらの曲でもとりわけ女声で歌われたレチタティーヴォが、歌詞の内容が感情を伴った「言葉」として美しい声とともに伝わってきて感銘を受けた。

演奏会ではいつもながら詳しく充実したパンフレットが配られたが、開場から開演まで5分ぐらいしかなくてきちんと読めなかったのは残念。並んでいるときにもらっておけばよかった。そのパンフには来年の定期演奏会の案内が(2/16)!いつも日程がなかなかわからなくて困っていたが、今度はしっかりスケジュールに入れておける。次のカンタータクラブとの再会が楽しみ。
長唄自主演奏会
~第4ホール~

1. 外記猿
2. 秋の色種
3. 石橋


長唄は邦楽のなかでも一番好きなジャンル。能舞台になっている第4ホールは落ち着いた木の響きが、長唄の音曲にもよく合っていた。三味線の粋なお囃子に乗って歌われる唄は意味はよくわからないのは残念だが、何やら目出度い曲だとか、季節を唄った曲だとかはわかって心の琴線に共鳴し、ワクワク気分で聴き入った。

唄を受け持ったなかには賛助っぽい感じの人もいて、味わいや歌いまわしの上手さでは流石に熟達していたが、学生っぽい唄い手の唄も、清々しくいい声がスーッと心に沁みてきて心地よさを味わった。

長唄のことをもっと知っていれば、更に別の感動も味わえるんだろうな、と思いつつも行動しない怠け者のぼくみたいな人のために、ちょっとした解説をしてくれたり、初心者向けのパンフを用意してくれると嬉しいのだが…
この後、自分の演奏会の合わせがあるため、今年の藝祭の演奏会はここまで。藝大を出る前に遅めのお昼で食べた模擬店「犬浦食堂」の豚の角煮丼がとってもうまかった!

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