オコジョ、チャート・レビュー

洋楽チャートの感想や予想を長々と述べます。速報性はありません。

<コラム>今年のポップ・ヒットは優しい!?

2022-08-30 | コラム

 

チャートと直接の関係はなく、また短く終わる場合もあると思いますが、

洋楽関連で思ったことについてごくたまに「コラム」を作って書いていこうと思います。

つい先日終わってしまいましたが、

MTV ビデオ・ミュージック・アワードなど洋楽の一大イベントの感想とかが主な対象です。

MTV、完全に忘れてた...。

 


 

タイトル:「今年のポップ・ヒットは優しい!?」

 

 もちろんすべてのポップ・ヒット曲を知っているわけではなく、また一つ一つの曲に関してもすごく詳しいわけではないのでこれは統計的な話からはほど遠いのですが、今年は例年より何だか優しい曲が多いように感じます。優しい、というのは消極的に言うとトゲトゲしておらず、誰も傷つけないような曲のことで、積極的にはメンタルヘルスになるような曲のことをいうのかなと思っていて、具体例を挙げつつちょっと振り返ってみます。

 

 まず、ヒットするポップ・ソングの王道といえば近年は失恋ソングや「相手を振り切る曲」で、もちろんラブ・ソングもありますが個人的にはその2つの存在感が大きいかなと思います。オリヴィア・ロドリゴが印象的ですが、考えてみるとこのテーマでヒットしているアーティストは、やっぱり多い。

 

 ところが、今年はこれらがあまり見受けられず、少なくともメインになっている感じはありません。失恋ソングに関してはローレン・スペンサー・スミスの "Fingers Crossed" が、「相手を振り切る曲」に関してはゲイルの "abcdefu" がその代表例としてあったと思いますが、これらのテーマは今年の流行にはならなかったように思います。

 

 では何が流行なのか、と聞かれるといろんなテーマの曲がヒットしているので難しいのですが、一概に言うとすれば「優しい曲が多い」ということになるのかな、と。チャーリー・プースの "Light Switch" では主人公が恋愛に苦しんでいる感じもあるものの、サビでは前向きになって「君は僕にやる気を起こさせる」と言っています。自分を惑わす存在に対しネガティブな表現(○○さえいなければ...など)をしつつ恋愛にはまっていくような曲はよくありますが、"Light Switch" ではそれに対し感謝していて、かなりポジティブに捉えています。曲の明るさともシンクロしていますね。以下、このように思いつくものを列挙していこうと思います。

 

 カミラ・カベロの "Bam Bam feat.エド・シーラン" は失恋ソングの類に入る曲ですが、失恋ソングにありがちな「恨み節」がほとんどなく、全体的には落ち込んだ自分を鼓舞しようとするメンタルヘルスのような曲です。曲のはじまりから終わりにかけての盛り上がりは、失恋で落ち込んだ主人公がだんだん元気になっていく様子を再現していると捉えることもできます。なので、源はカミラさんのパーソナルな話なのかもしれませんが、結果的に挫折した人々を励ます優しい曲になっていますね。

 ジャスティン・ビーバー "Ghost"。亡くなった大切な人への思いをつづる、しんみりした曲。2分半の短さと曲全体の疾走感からは想像できませんでしたが、かなり重い曲でした。「自分の命よりも貴方が恋しい」と歌うほど悲しい曲ですが、自分を大切にしてくれる人を(いなくなる前に)大切にしよう、というメッセージでもあります。上の定義でいうと消極的ですが、収録アルバム『ジャスティス』の「正義」というコンセプトに合致する一曲ですね。

 ハリー・スタイルズの大ヒット "As It Was" に至ってはサビが意味深で、アーティストの「歌詞をいろんな意味に解釈してほしい」という考えがそのまま表れているような感じがあります。「この世界のあらゆる物事はこれまでと同じであるとは限らない」と諸行無常を主張するものですが、もし今が「悪い状態」ならこの歌詞は正の意味を帯びます。少なくとも今はコロナ渦で世界的に「良い状態」が出来上がっているとはいえず、「悪い状態」という認識がある程度共通認識になっていると思います。なので、「この状態もいつかは終わる」と解釈しても良いのではないでしょうか。その意味で大変な時代を生きる人々、そして自分を励ます明るい曲だと捉えても大きな間違いはないでしょう。

 その一方で、直接リスナーを励ます感じではないヒットもありました。ジャンルは違いますが、心を壊した人のメンタルヘルスになるといわれた曲がジ・アングザエティーの "Meet Me At Our Spot"。これはどちらかというと去年のヒットなので今年ではありませんが、今年もメンタルヘルスの役割を果たしうるヒット曲が出ました。エム・ベイホールドというポップ・シンガーの "Numb Little Bug" で、これは本人のうつ病の経験を歌にしたものですが、正直個人的にかなり共感できます。「人生に疲れた」「気持ちを立て直すのに疲れた」と歌う際、必ずその前に a little bit(「少し」)をつけるのですが、これがすごいホンモノ感を出していて、うつで疲れているときは何かを強く感じることがなく、自分が疲れていることすらそれを強く感じない、ということがいえると思います。あまりにも的確で具体的なため一部のリスナーを排除してしまっている可能性もありますが、この曲は「自分だけではない」という共感によって間接的に人々の心を癒しているのではないでしょうか。

 その他エド・シーランの "Shivers" や "The Joker And The Queen" は毒素のない純粋なラブ・ソングですし、エルトン・ジョン × デュア・リパの "Cold Heart (PNAU Remix)" も「冷たい心」というタイトルがついてはいますがミュージック・ビデオの世界は(変だけど)平和そのもの。歌詞の解釈は難しいですが、こういう風にも捉えられる、と考えると今年は優しい内容と捉えることができる曲が多いということが分かりました。もちろんまだ8月なので今年これからどんな流行が発生するかは分かりませんが、とりあえず前半期のポップ・ミュージックの傾向については何となく分かった気持ちになれました。

 

 最後に、刺激のある曲もいいですがこんな時代にはやっぱり優しい曲も嬉しいです。これまではそういう曲を強く意識していませんでしたが、コロナ渦になって無意識にそういう曲を求めていました。2018年にリリースされたジェイソン・ムラーズの "Have It All" は優しい曲と聞いて一番にイメージするものでしたが、頭の中では地味な位置づけでした。しかし、パンデミックに入って真剣に歌詞を読んだのを覚えています。求めているときにそれが供給されると当然嬉しいわけで、特に人々の心をつかむのに成功した曲がヒットしたんだと思います。個人的にはこの傾向、続いてほしいですね。

 


 

歌詞の解釈についてですが、

和訳サイトを参考にさせてもらうこともけっこうあります。

基本的には調べるのが面倒なのでこんな感じ?で済ませてしまいますが、

こんな感じ?にも至らない曲に関してはいろいろ参考にしてます。...決して和訳が得意ではないので。

🐢 今月は以上です。ありがとうございました。 🐢

 



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