オコジョ、チャート・レビュー

洋楽チャートの感想や予想を長々と述べます。速報性はありません。

<コラム>洋楽の「現実感」について

2023-07-15 | コラム

 

復活...!!!

今月前半はいろいろあって記事投稿をサボっていたのですが、ようやく復活しました!

少しずつ記事作成の準備も始まった感じです。

ただ、その前にひとつ、ふと思いついたことがあったので、

それをコラムとして投稿してみようかなと思います。

 


 

タイトル:「洋楽の現実感について」

 

 音楽は基本的には娯楽であり、現実逃避の一つだと思います。しかし、そうではない、あるいはそれ以上の意味を持つ音楽もあると思っていて、むしろ聞き手に現実を突きつけるような音楽もあるでしょう。日本の主流音楽だと、アニメソングやドラマソングなど一種のサントラがチャートの上位に多いこともあって、非現実感が感じられる音楽が多いように感じられますが、洋楽はそうでもなくて、逆に現実感を思いっきり与えてくるものが多いと思います。

 

 なぜかというと、現在アメリカで主流になっている2大ジャンルのヒップホップカントリーは、いずれも現実性の強い音楽ジャンルだからです。ヒップホップでは、たとえそれが身内しか分からない話だとしても、自分の周りの現実をラップするものが非常に多いです。そもそもヒップホップはそういうもので、良かれ悪しかれ現実を吐き出したいという気持ちがそれを生んだ、とか言われたらそうなのかもしれません。自分のキャリアや高級品を自慢したり、業界の厳しい現実を吐露したり、自分の無名さを嘆いたりとリアリティだらけです。また、自分の周りの「周り」を拡大して、社会問題についてラップする曲さえあります。いわゆる「抗議ソング」「啓発ソング」ですね。ヒップホップはこのように現実を嘆いたり突きつけたりするものばかりで、逆にラップで空想上の物語を語るような曲は見たことがありません。

 

 そしてカントリーも、現実味の強いジャンルです。アメリカの地理的な話が非常に多いですね。具体的な地名はいくらでも出てきますし、調べなきゃ分からないご当地事情もたくさん出てきます。何もない田舎からカントリー・ミュージックの聖地、ナッシュビルに出てきた話とか、故郷愛を歌う内容とか、中には田舎の虚しさを語るような曲もあります。ストーリーテリングとは言いますが、カントリーのそれはたとえ作り話であっても、土地事情や農村社会の話など、何かしら現実と結びつくところがあってそこに共感してもらうことで、ヒットに繋がっているストーリーテリングが多いのかなと最近感じました。

 

 個人の意見として、音楽の主流テーマの一つ「恋愛系ソング」は非現実感が強いものだと思っていて、非現実感で売れているようなところもあるものだと考えています。ラッパーが歌を歌うようになってからは、彼らは歌唱曲ではそのような内容を歌うことが多くなってきましたし、カントリーも特に上位では「恋愛系ソング」が多いです。しかし、ラッパーはヒットさせるために敢えて一時的にメロディーある歌唱を自身の曲に取り入れ、人気テーマのそれを内容とした曲を作ったりしますし、カントリーも何かと恋愛の話に土地事情を絡めてきます。つまり、ヒップホップとカントリーのリアリティを重視するスタイルは結局揺らいでいないわけで、これら2つがアメリカのヒット・チャートを席巻しているわけだから、やはり洋楽は現実性が強いとまとめられそうです。

 

 ただ、イギリスの場合はポップ・ミュージックやダンス・ミュージックが人気ジャンルとなっていて、これらは正直、非現実感が強いジャンルだと感じています。踊って嫌なことを忘れる、というようなコンセプトのダンス・ソングにおいては、現実を語ることはむしろNGでしょう。バラードで自分の窮状を訴えたり社会問題をシャウトアウトしたりすることもありますが、基本的には現実逃避の娯楽としてとにかく楽しんでもらいたい、というコンセプトの楽曲が大半のように感じます。そのため、イギリスの洋楽は少し違うかもしれません。

 

 最後に、文章のまとまりを悪くしてしまうかもしれませんが、他のジャンルの現実感についてもちょっと考えたいと思います。思うに、ロックは最も非現実感が強いジャンルなのではないでしょうか。もちろん楽器による影響もあると思っていて、例えばリスナーを夢見心地にさせるような楽器が使われているから、と説明することもできます。しかし、歌詞も他のジャンルに比べ比喩的な表現をするものが多く、生々しく現実の問題を叫ぶような曲はロックの中でも特に少数派になってきている気がします。また、ハードロック/メタルの音楽も、歌詞では残酷なことを言ったり絶望的なことを言ったりするのですが、彼らは黒い服を着たり仮面を被ったりしてキャラを作っている(もしかしたらこの表現は不適切なのかもしれませんが)ケースが多く、そのため、「この世界はもう終わりだ」といったような絶望的な歌詞でもそのキャラの発言として捉えられて現実感を感じないことが多々あります。もちろん問題提起的なロック・ソングもあって、それが注目されることもありますが、少なくとも現在のロックの主流はそこではないのかな、と思いました。

 

 R&Bの場合は、少し微妙かもしれません。経験的に、基本的には「恋愛系ソング」など非現実が多いイメージを持っていますが、2020年のブラック・ライブス・マターの際に大物アーティストや人気上昇中のアーティストがプロテスト・ソングを出す流れがありました。これは、同じブラック・ミュージックとしてヒップホップの影響を受けているのかもしれません。ヒップホップとは違いプラスの意味で現実を表現する(自慢など)ものは少ないですが、置かれている立場の不平等を訴えるなどマイナスの意味で現実を描写するものが目立ってきたといえます。R&Bは、ヒップホップのようにリアルを伝えることがジャンルの人気となっているわけではないし、そうなる未来は個人的には無いと思うのですが、それでも「R&B音楽でもリアルを伝えられる」という規範が2020年当時、音楽業界に広まった可能性は否定できません。

 

 まとめると、下のようになります。アメリカの洋楽はヒップホップとカントリーが強いから現実性が強くて、一方でイギリスの洋楽はポップやダンス・ミュージック(EDM)が強いから現実逃避性が強いという結論ですね。手書きで説得力ありませんが、自分の主張はこんな感じです。

 

 それで...結局この記事を書いている自分は音楽の現実感についてどう思っているのかというと、はっきりいって現実逃避的な曲の方が好きです。現実性の強い、特にネガティブな意味で現実性の強い音楽は、10曲に1曲くらいでいいかな...といった感じ。ではなぜアメリカの洋楽を聴いているのかというと、他国事情だから、現実でも自分とは関係ないものとして捉えられて、ある種それも遠い国の出来事として現実逃避で聴けてしまうからです。そう考えると、英語でどんなに厳しいことを歌っていても上の空で楽しんでしまう自分が何だか申し訳なくなってしまう今日この頃です。「そっちは大変なんだな」と、高みの見物をするような気持ちになってしまうこともあって...。

 


 

UKチャートがまたちょっとアツくなってきた...!

UKチャート・レビューを今年3月にやめるといったてまえ、再開はしにくいけど、

USチャート・レビューみたいに1か月のまとめ方式にするのもいいかも。

ただ、それだと月終わりに負担が集中するから、やはりこの案も保留に...。

🦈 とりあえず、今回は以上です!読んでくださった方ありがとうございました! 🦈

 



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