オコジョ、チャート・レビュー

洋楽チャートの感想や予想を長々と述べます。速報性はありません。

<コラム>惜しくもヒットにならなかった、ヒットしてもおかしくなかったと思う曲5選

2022-10-11 | コラム

 

「ヒット」の定義について。

いろんな価値観があると思いますが、自分の価値観による定義は

「総合チャートに、ある程度持続的にランクインすること」です。

また、基本的には 総合チャート > ジャンル専門チャート です。

あ、あと最後に、これは全米チャートの話です。注釈多くてすみません。

 


 

タイトル:「惜しくもヒットにならなかった、ヒットしてもおかしくなかったと思う曲5選」

 

 全米チャートについて、自分は最初は総合チャート(Hot 100)しか見てなかったのですが、チャートにはまっていくにつれて総合チャートよりも格下の、ジャンル別の専門チャートも見るようになりました。専門チャートはたくさんあるのですが、総合チャートと連動しているチャート(Hot 〇〇 Songs)が特に見やすかったので主にそれを見ていて、そこで多くの「惜しくもヒットにならなかった曲」を知りました。専門チャートでは長く上位を維持しているのに、総合チャート進出まであと一歩なのに、結局総合チャートでヒットしなかった曲群です。その中で特に、ヒットしてもおかしくなかったと思う曲を、自分の好みをしっかり交えて2018年から今年まで1曲ずつ挙げてみようかなと思います。

 

・2018

ジェイソン・ムラーズ「ハヴ・イット・オール」("Have It All")

 振り返れば前回<コラム>を始めたとき、最後にこの曲についてちょっと言及していました。ジェイソン・ムラーズさんが2018年にアルバム『ノウ。』をリリースするにあたって、先行シングルであるこの曲が全米総合チャートにランクインした(90位)のですが、それは一時的で、その後再びランクイン、ということはありませんでした。自分がこの曲を知ったのは一時的なランクインより少し前で、当時は深く意識して聴いてたわけではなかったので、一時的だったことに対してはあまり感情を抱きませんでしたね。ただ、年月を経て何回も聴いていくうちに曲の良さがどんどん分かってきて、あの時ヒットするべきだった、とさえ思うようになりました。

(レビュー)とにかく優しくてポジティブで、気持ちいい曲!聖書の言葉がいくつか引用されているようですが、クリスチャン・ミュージックではなく、また対象を絞った曲ではありません。MV ではジェイソンさんが子供と一緒に楽しく歌ったりギターを演奏したりしていて、「明るい未来を切り開くあらゆる可能性を持ち (Have It All)、それを信じてほしい」という曲のメッセージを子供だけではなく、視聴者にも伝えています。実際の曲にも斉唱部分があり、ジェイソンさんのコーラスに華を添えていますね、気持ちいい!

 

・2019

ケイシー・マスグレイヴス「レインボー」("Rainbow")

 同曲が収録されたアルバム『ゴールデン・アワー』は2018年リリースですが、その年のグラミー賞でケイシー・マスグレイヴスさんは高く評価され、アルバムはアルバム賞の中で最も権威ある「年間最優秀アルバム賞」に輝きました。実は『ゴールデン・アワー』は2018年の間はアルバム・チャートを通して見てもそんなに目立った大ヒットにはなってなく、シングルもまったくと言っていいほどヒットしていませんでした。それが2019年、グラミー賞による高評価を受け、アルバムが再注目されます。その時ちょうど新しくシングル・カットされていたのがこの曲で、アルバムの再注目に乗じて全米総合チャートにも一時的にランクイン(98位)しました。自分はベストヒットUSAで知って好きになっていたので、総合チャートから落ちてしまってからもずっと専門カントリー・チャートで曲の動向を追っていて、再浮上して~!と祈ってましたね...叶いませんでしたが。

 カントリーの要素があまり強くない、ポップ系のバラードです。ケイシーさんはジャンルレスな音楽が人気で、それがグラミー賞にも高く評価されたとのことですが、正直グラミー賞の評価でそれを初めて知りました...。確かに聴いてみるとカントリー・ソングに特徴的な音があまり聞こえてこないですね。ちなみに去年新作『スター・クロスト』がリリースされましたが、それはグラミー賞においてカントリーの要素が足りないとしてカントリー・アルバムに認定されなかったようです。...それはともかく、"Rainbow" は万国共通のヒットになってもおかしくはなかった曲でした。メッセージはシンプルで、「どんなに辛い時でも、希望は常にある」というもの。アコースティック調で終始暗めの雰囲気ですが、メッセージをはっきりと伝えるサビの最後で少し雲が開けたような明るさを感じます。暗い気分のときに思い出して聴きたい名曲ですね。

 

・2020

ラウヴ「モダン・ロンリネス」("Modern Loneliness")

 ラウヴさんは2018年の "I Like Me Better" デビュー以降、継続的にシングルをリリースしてきていて、その中でも特に "I'm So Tired... with トロイ・シヴァン" は全英チャートTop10 入りの大ヒットになりました。同曲はそんな彼の2020年のシングルで、結論から言うとヒットはしなかったのですが、総合チャート入りに惜しいところまではいきましたね。うーん...それでも応援していたので残念でした、YouTube とかの再生回数を見る限りヒットしてる感がけっこうあったのですが。本人も積極的に同曲をプロモーションしていた印象です。("I'm So Tired..."、"Modern Loneliness" ともに当時のデビューAL『~ハウ・アイム・フィーリング~』収録)

 またもバラード!ですがタイプがちょっと違います。泣けるような切ないバラードではなく、曲の主張どおり憂うつな気分になるバラードです。「現代の孤独は、必ずしも一人でいる孤独を意味せず、常に憂うつな気分であることを言う」と歌い、ベッドに寝転がりながら気が重いことを考えては憂うつになり、SNSで一時的に気分が上がっても相手に連絡をとったりするなど面倒なことはせず、ただただ家でだらだらしてしまう、といった無気力な歌詞が続きます。パンデミックの時期だったこともあり、このけだるさは自分もすごく共感でき、多くのアメリカ人(特に若年層)もそうだったと思うのですが、惜しくもヒットには至りませんでした。こんなけだるげな感じなのに、曲は最初の最初からもうエモーショナルで、完璧な構成のもとそれはだんだん盛り上がってきて、最後には現代の若者の本音を歌うアンセムみたいになってすごくかっこいいのですが、最後の最後に落としてくるところもあってやっぱり聴いた後憂うつになります。ただ、繰り返しますが本当に完璧な構成なので、ちゃんとヒットするべきでした。

 

・2021

スエコ「パラライズド」("Paralyzed")

 前の3人に比べると圧倒的に知名度は低いのですが、スエコは2021年デビューのアメリカのラッパーで、ラッパーなのに全力でパンク・ロックを奏でている人です。マシン・ガン・ケリーのロック進出も背景にあるのでしょう、彼のロック進出を助けたブリンク182のドラマー、トラヴィス・バーカーはスエコのデビューも助けています。自分にとって(というか多分多くの人にとって)スエコは突然全米総合チャートに現れたアーティストで、事前に彼のことを知る余地はなかったと思います。なので、"Paralyzed" は結局すぐに総合チャートから消えてしまったのですが、「え?待って待って、何この曲!?」と驚いているうちにいなくなってしまった感じで、感情がついていけてませんでしたね。それでも、繰り返し聴いて同曲の完璧さを感じ続けると、彼は当時もっと売れるべきだった、と思わざるを得ません。

 最初は本当に戸惑いました、この人はラッパー?ロッカー?と。最初の優しいピアノやそれに反してサビ周辺で一気に音楽が激しくなる構成はまさにロックだなと思ったのですが、プレ・コーラス前の普通のバースはまさに最近のラッパーらしいラップとバック・ミュージック(うまく説明できなくてすみません)で、ロックがメインのアーティストがこんなラップをするとは思えなかったので、かなり困惑したのと同時に新しさも感じてすごく興奮しました。後に名目上はラッパーであることを知りましたが、彼の曲を遡っても追ってもパンク・ロックが続いています。とにかく、同曲は尺や構成が完璧なだけでなく、斬新さもあったので大ヒットするべきでした。ロックが主流の時代だったら100%ヒットしていたはずの最高のロック・チューンですね。

 

・2022

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「ブラック・サマー」("Black Summer")

 日本でもよく知られているレッド・ホット・チリ・ペッパーズの、おそらく日本でも話題になった彼らの今年の新曲。2016年以来6年ぶりの新曲で、長くバンドのギタリストを務めていた人気メンバー、ジョン・フルシアンテさんが長い離脱期間から再びバンドに戻ってきて初の新曲ということもあり、全米総合チャート78位に初登場しました。レッチリは音楽制作活動にブランクが空いてるな~とは思っていましたが全然ニュースを知らなかったので、突然チャートに現れてびっくりしましたね。結局同曲のランクインは一時的で、すぐに総合チャートから落ちてしまいましたが、その後も自分はロック専門チャートでずっと再浮上を応援してました。

 これにもちょっとベストヒットUSA関連の事情があって、番組の「"Black Summer" のリリースでバンドが久々に再始動した」というのを紹介しつつバンドについて過去作を振り返ってくれる回で、初めて彼らの "Under The Bridge" という過去のバラード・ヒットを知り、そこから自分は "Black Summer" も好きになりました。過激なライブをしているイメージがあったので、落ち着いた曲にギャップを覚え、こんな曲もあるのか!と好感を持った感じですね。まあ "Black Summer" はバラードではありませんが、全体的に曲調が落ち着いていて、すごく入りやすくて好きです。同じことを繰り返すことになりますが、ロックが主流の時代だったら絶対ヒットしていたでしょう。

 

 …以上です!2022年は早とちりかもしれませんが、とりあえず衝動のままに書いてみました!あ、衝動のままに、とはいっても一応ロックばかりにならないよう気を付けましたが...。応援していた曲が結局総合チャートでのヒットに至らないと辛いですが、それはまあ、こだわりすぎな面もあると思うので、これからも気楽に推し曲を応援していきたいですね。ヒットの個人的な定義(けっこうお堅い)にもとらわれすぎないように...と。

 


 

カントリー界の巨大なアイコン、ロレッタ・リンが90歳で逝去。

エリザベス女王やオリビア・ニュートン・ジョンもそうだけど、偉大な人物の訃報が最近多いと感じる。

そのせいで忘れそうになるけど、テイラー・ホーキンスのことも決して忘れてはいけない。

今年はもう十分だ...もうアーティストの訃報はいらない!!!

 最近の洋楽をめぐる感情がそんな感じです。ありがとうございました。 

 



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