レイニー・ウィルソンが "Heart Like A Truck" をヒットさせて、
ハーディが "Truck Bed" をヒットさせようとしていて、
レイニー・ウィルソンとハーディはコラボ曲 "Wait In The Truck" が大ヒットした。
...いや、トラック好きすぎだろ、2人とも!🚚
トラックって、そんなにカントリーで常用語なの?もしそうだったら、すみません。
グラミー賞関連の統計を、初めてやります!
私はこのブログで毎年11月頃に「グラミー賞ノミネート予想」というのを無謀にも大規模にやっているのですが、
その助けにもなるかなと思って、グラミー賞の分析っぽいことをしてみることにしました。
今回は、グラミー賞主要部門の一、最優秀新人賞です。
過去20年くらいのデータをもとに、ノミネートの傾向とかを調べて、予想に生かしていくつもりです。
~目次~
0.最優秀新人賞について
1.形態別ノミネート分析
2.ジャンル別ノミネート分析
3.サマリー&考察
0.最優秀新人賞について
まず、そもそも最優秀新人賞とは何か、ということについて、少し説明します。その名の通り新人を表彰する賞ですが、新人の定義が曖昧で難しいです。その年に飛躍的に認知が向上した人、とか、文化や音楽市場に新しく大きな影響を与えた人、といった定義なのですが、はっきりと数字の制約が示されていないため、この人は本当に該当者か?と思ってしまう候補者がよくノミネートされます。ただ、基本的にはその定義の通りで、もはやアルバムをこれまでに何枚リリースしていようがその定義に当てはまっていればノミネートされ得るよう。また、シングルやアルバムのヒットが特になくても、社会に何かしら影響を与えた人なら幅広く対象にしているみたいです。この「影響を与えた」が曖昧だから、よく分からない人がノミネートされたりするわけですが。
1.形態別ノミネート分析
それでは、本題に移って、まずは形態別のノミネート分析です。男性ソロ・女性ソロ・デュオ / グループのどの形態が最もノミネートされやすいのか、グラミー賞2003まで遡って見ていこうと思います。下表ですが、最優秀新人賞は2003~2018年が5枠、2019~2021年が8枠、2022~2023年が10枠なので、それぞれで区切ってまとめることにしました。
まず、2003~2018年の5枠の時代ですね。こう見ると、特に2000年代は男性ソロ・アーティストのノミネートがかなり少なかったことが分かります。一方で女性ソロ・アーティストのノミネートは、年ごとにばらつきがあるとはいえ2000年代は3形態で最も多かったといえるでしょう。2010年代に入ると、今度は女性ソロのノミネートが減って、代わりに男性ソロのノミネートが増えます。デュオ / グループはその間も安定してノミネートを獲得していたので、2010年代前半はデュオ / グループが最有力でした。ただ、その後女性ソロのノミネートが回復して、男性ソロのノミネートも変わらず増え続けたことでデュオ / グループのノミネートは相対的に減り、2010年代後半はそれぞれ2:2:1といった感じになったといえます。以上、5枠時代の傾向の変遷でした。
次に、2019~2021年の8枠時代です。ノミネート枠が拡大したことで、それぞれほどよくノミネートされるようになったのかなと思いきや、この3年は明らかに女性ソロのノミネートが多いです。当時チャートを見ていた者としては、決して男性やグループの活躍がなかった3年ではない、と断言できるので、どちらかというと積極的に女性アーティストのノミネートが増えたという印象です。背景にはグラミー賞2018で主催団体のレコーディング・アカデミーが女性のノミネート・受賞が非常に少ないと批判されたことがあり、それを受けてグラミー賞2019では新人賞以外でも女性のノミネートが急増していました。まあ、個人的には極端だなあと思った選考結果でしたが...。おかげで当時ブレイクしていた男性アーティストはことごとくノミネートを逃しているわけですしね、バージーとかラウヴとか。
最後に、今年と去年の10枠時代。10枠にさらに拡大され、さすがに3形態ほどよくならされた感じです。しかしながら、相変わらず女性ソロが強い傾向は見受けられるため、近年の傾向としてやはりこれは考慮すべきでしょう。10枠になってからまだ2年なので、傾向をつかむのは難しいかもしれませんが、ひとまず女性のノミネートが多いのは確かなようで、ドミ + JDベックやウェット・レッグなどデュオ / グループに関しても昔より女性が入っているバンドのノミネート回数が増えています。なので、予想をする際は、女性や女性が入っているデュオ / グループのノミネートを中心にするべきかもしれません。...形態別の分析は以上です。
2.ジャンル別ノミネート分析
続いて、ジャンル別の分析です。私が最も興味を置くところになります。チャートではポップ、ロック、カントリー、R&B、ラップ、EDMの6つを6大ジャンルとして意識していますが、グラミー賞でもその通りなのでしょうか。とりあえず、2003~2023年の新人賞候補の全数124を分母に、124枠中どのジャンル(のアーティスト)がどれぐらいノミネートを獲得したかをグラフにしてみました。
先に述べた6ジャンルのうち、EDMを除く5ジャンルが高い構成比率で目立っています。最も多いのがポップ(・アーティスト)で、その次がR&Bですね。EDMに関しては流行っていた時代とそうでない時代があり、必ずしもずっとメジャー・ジャンルだったわけではないということと、シーンで大活躍する人が少ない(少数がたくさんヒット曲を出している)ことがノミネートの少なさに繋がっていると思われます。とはいえ、ポップ等の他の5ジャンルはグラミーでもしっかりメジャーになっていることは確認できました。なお、グラフで切れてしまっているのですが、ブルーグラスの右の赤茶色はラテン・ミュージックです。ごめんなさい。
次に、各ジャンルが21年間で何年間ノミネートされたかを表します。そのジャンルのアーティストが1人以上ノミネートされた年が、21年中何年あったかということですね。先ほどのグラフでは、例えばラップはノミネートされた20人がすべて4年間でノミネートされていたかもしれなくて、その場合はグラミー賞の最優秀新人賞でラッパーがノミネートされやすい、とかはいえないと思います。ほか17年はまったくノミネートされてないわけですからね。極端な例ですが、このようなこともありえるので、ヒストグラムみたいな感じで各ジャンルごとノミネートを受けた年数を数えてみました。
最多はポップで17年、次に多いのはR&Bで16年ですね。カントリー、ロック、ラップと続いて、やはりこのグラフでも5ジャンルの強さが確認できました。一方それ以外では、ジャズとEDMが3年ノミネートされていて、5ジャンルと差はあるものの気になります。ジャズに関してはチャートでジャズ・ソングを見たことは未だありませんが...。ちなみに、2つの図から各ジャンル1年あたりのノミネート・アーティスト数が計算できますが、5ジャンルではカントリーが少ないのが分かります。1人以上ノミネートされた年があったとして、その年の実際のノミネート数は1であることが非常に多いということですね。
最後に、時間的なことを知るため、直近10年の最優秀新人賞のジャンル別の状況を具体的に示します。表中の数字はノミネートされたそのジャンルの人数で、例えば2014年はラップ・ミュージシャンが2組候補に選ばれました。また、繰り返しになりますが2018年までが5枠で、2019~2021年が8枠、2022~2023年が10枠です。
やはり5ジャンルはノミネートを受けている回数が多いと分かりますが、近年の傾向として注目すべきは、R&Bが7年連続でノミネートされているというところです。ここまで続いていれば、来年の(ジャンルとしての)ノミネート獲得は確実とさえいえそうですね。また、ラップも4年連続でノミネートを受けていて、しかも1年あたりのノミネート・アーティスト数が多いです。これも翌年のノミネートは確実だといえるでしょう。さらに、先ほど気になると言っていたジャズも2年連続となっていて、そのうち今年は実際にジャズ・シンガーのサマラ・ジョイさんが受賞までしています。ジャズは2011年にエスペランサ・スポルディングさんがノミネートされた時も、ジャスティン・ビーバーやドレイクといった当時の大型新人を打ち負かして彼女が受賞していました。グラミー賞におけるジャズの存在感は、徐々に拡大していっている可能性が高いです。
他のジャンルも見ていって、ポップは今年はありませんでしたが、とはいえやはり回数は多いので、来年も1人以上ノミネートされる確率が高いです。カントリーも、とびとびですが今年なかったので来年はありそう。今年はカントリーの代わりに、ジャンルとして少し似ているブルーグラスのアーティスト(モリー・タトルさん)が候補に挙がっていました。他方でロックは、微妙です。個人的には1人はノミネートされてほしいですが、来年はロックが休みの年...になるかもしれません。ピンクパンサレスがノミネートされたとしても、彼女はロックにカテゴライズしにくいので...。また、ラテンも、チャート的に大盛り上がりしているので来年1人はありそうです。以上、長くなりましたがジャンル別のノミネート分析でした。
3.サマリー&考察
まとめます。形態別では、女性ソロ・アーティストがノミネートされることが多い。ジャンル別では、5ジャンル(ポップ、ロック、カントリー、R&B、ラップ)のノミネートが多くて、特にポップとR&Bが優勢。直近10年間の結果では、R&Bとラップが4年以上連続して選考を受けている...。
これらのことから考察というか、予想をすると、まずR&B枠を2つくらい設けるのがよさそうです。R&Bは全候補者のうち58%が女性ソロなので、1人以上女性ソロ・アーティストを入れるべきでしょう。そして、ラップ枠も2つほど必要です。ラップは全候補者のうち60%が男性ソロなので、今年の新人ラッパーは女性の方が活躍している気がするのですが、一応統計的には男性がノミネートされる回数の方が多いことに留意しておきます。ラテン、ポップ、カントリーも1枠は予想するのが無難でしょう。ちなみにラテンは100%が女性、ポップは57%が女性、カントリーは53%が女性です。やはりここも注意ですね。残り3枠ですが、希望を込めてロックに1枠、あとはメインストリームのチャート次第にしたいと思います。ジャズも可能性高いですが、なにせ私はジャズ・アーティストをまったく知らないので、詳しく調べなければしっかりした予想ができません。私はそれは面倒なので、とりあえず来年の最優秀新人賞の予想はこういう構成にしました。この記事、結局は自分のための分析になってしまいましたが、読者の皆さんの参考にもなっていれば幸いです。本記事を読んでくださった方、拙い分析にお付き合いいただきありがとうございました。以上です。
11/14(火)追記:第66回グラミー賞(グラミー賞2024)のノミネートが発表されました。最優秀新人賞も発表されたので、各章ごと当記事との関連で見ていきます。
まず、1章の形態別ノミネート分析に関連して、ノミネートされた人々を形態別に分けました。来年(開催のグラミー賞)は、男性3・女性4・デュオ / グループ1、といったかたちです。8枠に戻ったので、8枠時代の2019~2021と比べると、やはり女性のノミネートが最も多いですが、当時よりはならされています。男性が一気にノミネートを失うのが良くないだけで、女性が多くノミネートされること自体は決して嫌ではないし、むしろ賛成なので、この感じがずっと続けばいいと思いますね。一番ちょうどいい。
そして、2章のジャンル別ノミネート分析に関連して、ジャンル分けもしました。来年は、ポップ1・ロック1・カントリー1・R&B2・ラップ1・EDM1・アメリカーナ1、と分けられます。直近10年間のノミネートの表(上表)を見つつ、ありそうだと思っていたR&B、ラップ、ポップはやはり歌手が1人以上ノミネートされました。そのうえ、微妙だと思っていたロックやカントリーもありましたね。一方で、ジャズやラテンは一旦ストップがかかったもよう。これには、2枠分減ったことが影響していそうな気がします。ともあれ、主要5部門はとりあえずすべてノミネートを獲得しました。
最後に、3章でした考察に関して、答え合わせです。10枠ではなく8枠だったので予想の型はちょっと異なっていますが、まずR&B枠を2つ設けるという考えは見事当たりました。来年はココ・ジョーンズとヴィクトリア・モネで、両方女性です。ただ、ラップ枠は1枠で、ノミネートされたラッパーはアイス・スパイス(女性)のみ。母数が縮小されたからで、10枠だったらもう一人ラッパーがノミネートされていた...と信じたいですね。ラテンは外して(ペソ・プルマという大型がいたのに!)、ポップとカントリーの1枠は当たり。ポップはグレイシー・エイブラムス(女性)で、カントリーはジェリー・ロール(男性)でした。そして希望を込めて予想したロック1枠は、ノア・カハン(男性)がノミネートを勝ち取ってくれたおかげでここも当たり!ロックのノミネートが維持されて良かったです。ちなみに、残り2人はUK出身EDMアーティスト兼プロデューサーのフレッド・アゲイン(男性)と、アメリカーナ / フォーク・デュオのザ・ウォー・アンド・トリーティ(男女デュオ)。感想は別の記事に書きますが、ひとまず考察はあまり間違っていなかったということで、嬉しいです。まあ、それをもとに考えた具体的なノミネート予想はダメダメでしたが...。