最近はパール・バックの『大地』という小説を鞄に入れて持ち歩いている。以前実家にあったものでずっと前に亡くなった母が「読んだから上げる」と言ったのでもらってきてそのままになっていたのだ。
全4巻。辛亥革命の前後あたりの時代に、極貧の農民でとても普通の結婚はできない主人公が近所の富豪の家に奴隷として「飼われて」いた女を嫁にもらったところから話は始まる。妻は非常に不器量であったために富豪の家でも誰からも見向きもされず半ば虐げられて暮らしていたが、その分人間やその営みをつぶさに観察していたからか、主人公と結婚してからはその知恵で主人公を助けどんどん豊かになっていく、という物語。「あげまん」ってこういう人のことを言うんだなと思った。
遅読なのでまだ1巻を読んだばかりなのだが、ぐいぐい引き付けられる。2巻からは主人公の息子娘たちの物語に次第に移っていくが、革命も近く、まだまだ彼らは運命に翻弄されそうだ。
あくまで私見だが、いい長編小説というのは読みながら主人公と同じ時間や時代を生きた気持ちになれるもの。この『大地』と言う小説はそれができる小説。好きな長編小説ベスト3のうち2つまでは決まっていたが最後の1席に見事に滑り込んだ。
あとの2作はヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』と三島由紀夫の『豊饒の海』。どれも主人公と同じ時間を過ごした気持ちになれる小説だった。
『レ・ミゼラブル』は10数年前ロンドンでミュージカルを観る前に事前準備で読んでいったのだが、本当に読んで行ってよかったと思った。ミュージカルやヒュージャックマンの映画版で描かれているのは、小説のほんの一部だということがまずわかるし、ミュージカルを観ていると目の前で繰り広げられている物語に加えて、端折られている物語がかえって生き生きと頭に浮かんでくる。
『豊饒の海』は人間の身体は滅んでも精神が連綿と、時に狡猾に続いていく様をまざまざと見せつけられる主人公に、自分が同化して感動したり恐怖したりした。
とにかく引き込まれるのである。
と、ここまで書いておいて、一部の方をドン引きさせる事実をお知らせすると、僕は重度の村上春樹ファンで彼の本は全て殿堂入りしているので、上の長編ベスト3には入れていない。
世の中の読書家、文芸ファンの方にはなぜかとことん嫌われている村上春樹(笑)。でも僕はすごく好きなんですよね。登場人物の心の動きとか、行動とか、読んでいると非常に共感できることが多くて。
でも群れるのが窮屈であまり好きではないので、「ハルキスト」と言われる人々はあまり好きではない(笑)。
で本題に戻ると、『大地』いいですよ。出版されたのは1931年で、この作品でパール・バックはノーベル文学賞を取った。本の後ろの方の広告を見ていたら、この人の小説の多くを少し前の朝ドラ「花子とアン」のモデルになった村岡花子さんが翻訳されていることを考えても古い時代の作家だということがわかる。
著者のパール・バックはバージニア州出身のアメリカ人で、宣教師だった親に連れられて中国にわたりそこで育って、「中国人として」のアイデンティティもお持ちだったらしい。それくらいじゃないと書けないほど中国人の登場人物たちの描写が精緻で丁寧だなと思った。
隙間時間を見ながら読んでいるのでまだしばらくかかると思うが、残り3巻。楽しもうと思う。
全4巻。辛亥革命の前後あたりの時代に、極貧の農民でとても普通の結婚はできない主人公が近所の富豪の家に奴隷として「飼われて」いた女を嫁にもらったところから話は始まる。妻は非常に不器量であったために富豪の家でも誰からも見向きもされず半ば虐げられて暮らしていたが、その分人間やその営みをつぶさに観察していたからか、主人公と結婚してからはその知恵で主人公を助けどんどん豊かになっていく、という物語。「あげまん」ってこういう人のことを言うんだなと思った。
遅読なのでまだ1巻を読んだばかりなのだが、ぐいぐい引き付けられる。2巻からは主人公の息子娘たちの物語に次第に移っていくが、革命も近く、まだまだ彼らは運命に翻弄されそうだ。
あくまで私見だが、いい長編小説というのは読みながら主人公と同じ時間や時代を生きた気持ちになれるもの。この『大地』と言う小説はそれができる小説。好きな長編小説ベスト3のうち2つまでは決まっていたが最後の1席に見事に滑り込んだ。
あとの2作はヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』と三島由紀夫の『豊饒の海』。どれも主人公と同じ時間を過ごした気持ちになれる小説だった。
『レ・ミゼラブル』は10数年前ロンドンでミュージカルを観る前に事前準備で読んでいったのだが、本当に読んで行ってよかったと思った。ミュージカルやヒュージャックマンの映画版で描かれているのは、小説のほんの一部だということがまずわかるし、ミュージカルを観ていると目の前で繰り広げられている物語に加えて、端折られている物語がかえって生き生きと頭に浮かんでくる。
『豊饒の海』は人間の身体は滅んでも精神が連綿と、時に狡猾に続いていく様をまざまざと見せつけられる主人公に、自分が同化して感動したり恐怖したりした。
とにかく引き込まれるのである。
と、ここまで書いておいて、一部の方をドン引きさせる事実をお知らせすると、僕は重度の村上春樹ファンで彼の本は全て殿堂入りしているので、上の長編ベスト3には入れていない。
世の中の読書家、文芸ファンの方にはなぜかとことん嫌われている村上春樹(笑)。でも僕はすごく好きなんですよね。登場人物の心の動きとか、行動とか、読んでいると非常に共感できることが多くて。
でも群れるのが窮屈であまり好きではないので、「ハルキスト」と言われる人々はあまり好きではない(笑)。
で本題に戻ると、『大地』いいですよ。出版されたのは1931年で、この作品でパール・バックはノーベル文学賞を取った。本の後ろの方の広告を見ていたら、この人の小説の多くを少し前の朝ドラ「花子とアン」のモデルになった村岡花子さんが翻訳されていることを考えても古い時代の作家だということがわかる。
著者のパール・バックはバージニア州出身のアメリカ人で、宣教師だった親に連れられて中国にわたりそこで育って、「中国人として」のアイデンティティもお持ちだったらしい。それくらいじゃないと書けないほど中国人の登場人物たちの描写が精緻で丁寧だなと思った。
隙間時間を見ながら読んでいるのでまだしばらくかかると思うが、残り3巻。楽しもうと思う。