「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

英国の大学院修士課程への留学について

2018-04-13 | 英国大学院博士課程に関して
昨日は大学院博士課程のことを書きましたが、今日はMasterコース(修士課程)についてもすこし触れておきたいと思います。

イギリスの修士課程は、以前にも書いた通り、期間としては1年あるいは2年であり、主に講義受講コース(taught)と研究コース(research)の2つがあります。他には、資格取得コースもあります。
日本から英国への大学院留学というと、おそらくほとんどの場合が1年間の修士課程で講義受講コースになると思います。1年でMasterが取得出来るとはいえ、昨日申し上げた通り、優秀な学生は学部から博士課程に直接入りますので、Masterという学位は、日本の修士号と比べて、すこし程度が低く見られています。実際のところ、Masterは一応「学歴」にはなりますが、残念ながら、学術的にはあまり価値がありません。
英国の一般的な国立大学ではEU外からの留学生には「とても高額な学費」を求めており、円と£のレートにもよりますが、1年間で文系で約200万くらい、理系で250万くらいになります。これは国立大学でほぼ一律ですが、日本の学費と比べると、アホみたいに高いです。この学費に見合う価値が本当にMasterにあるのかどうか、その判断は人それぞれでしょうけれども。

「イギリス大学院留学」というと格好良く聞こえるかもしれませんが、内容はピンからキリまで分かれており、とくに修士課程留学については注意する必要があります。
修士課程のような短期留学の場合、留学というよりも「英国内に滞在しているだけの遊学」になっているパターンも多く、実際、目的意識をはっきり持って具体的な到達目標を定めて留学している学生は少ないです。残念ながら、「英国留学というハク付け」のために大金をかけて留学する自費留学(あるいは自費遊学)が多いのですね。最近では中国からこの種の大学院留学が殺到しており、英国内の有名大学でも修士課程は中国をはじめとするアジアからの留学生で一杯です。
イギリスの大学側でも、多額の学費を納めてくれて、たとえそれに見合った教育を施さなくても、ただ「英国に来ている」というだけで満足してくれるお気楽なアジア人留学生を積極的に受け入れています。「留学生を採れば採るほど大学が儲かる」という、いわゆる留学ビジネスってやつですね。さらに、アジアからの留学生が増えると「国際大学ランキング上は有利になる」ので(そのために英国某会社が作っている国際大学ランキングでは必ず留学生の割合が高く評価されるようになっています)、大学の名声を高めるためにもアジアからの学生をどんどん採るのがトレンドです。

もちろん、中には色々と戦略的に考えて、「英国でしか学べないこと」を勉強に来ているアジア人留学生もいらっしゃいます。私の知る幾人かの優秀な修士学生は、英国文化を学ぶためであったり、英国で認定される資格取得のためだったり、色々な具体的目標を掲げて頑張っていました。
そして、留学は、古今東西、蒙を啓く自己研鑽のためにはとても有用な機会であることは間違いありません。外国での生活はそれだけで色々な刺激があります。様々な可能性が広がります。この機会をしっかり活用できれば、素晴らしいキャリアパスになるでしょう。

上記を踏まえて、もしも私がこれからイギリスへ留学することを考えていらっしゃる方々に助言をさせて頂くならば、
「具体的な目標をしっかり設定すること」(Youは何しにイギリスへ?)
「その目標は英国でしか達成できないのかよく検討すること」(日本で出来ることならば日本でやればいいでしょう)
「留学費用の算段をちゃんとつけること」(お金は大事です)
を挙げます。

昔『スラムダンク』という漫画がありました。
その中で、バスケットボール留学でアメリカに渡った日本人プレーヤーの矢沢が「バスケットの国アメリカの、その空気を吸うだけで僕は高く跳べると思っていたのかなあ…」と手紙に書くシーンが出てきます。矢沢はしっかりした目的意識を持たないままアメリカに渡ったため、ただアメリカに滞在したというだけで、結局、技術的な向上がないまま終わるのです。そして、矢沢を指導していた安西先生も矢沢の米国でのプレー動画を観て「(日本に居た頃に比べて)まるで成長していない…」と落胆します。
実は、イギリスの大学院への留学も、それと全く一緒です。大学院にただ在籍するだけで、イギリスに居るだけで満足していては、成長がありません。要は自分次第ということですね。

次回は、英国の大学院への留学奨学金について、すこしだけ触れたいと思います。


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