「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

英国の大学における階級制度

2018-11-25 | 英国大学院博士課程に関して
今日は英国の大学についてすこし。
日本や米国や欧州(大陸側)の大学と、英国の大学で異なる点の一つに、大学内における教員の階級があります。私が学部生時代にサマースチューデントとして英国スコットランドに留学していた時に驚いたことの一つに「Reader」という職位がありました。当時、Readerがどのくらいの地位の方なのかよく判らず、困惑した思い出があります。

日本では、現在、おおむね米国の大学の階級に合わせていて、

日本 USA
教授 Professor
准教授 Associate Professor
(講師)
助教 Assistant Professor
(助手)

の三階級(あるいは五階級)に分かれています。講師や助手というポジションもありますが、あまり一般的ではないようです。博士号(学位)を持たないスタッフを助手として雇う例があります。
日本においては、とくに医学部では、教授にならなければ独立した研究者あるいは教育者としては見做されないという慣習もあります。白い巨塔の教授選挙が、21世紀の今でも、時に過熱気味になるのはそのせいですね。とはいえ、医学部とそれ以外の学部とでは、かなり事情が異なります。
米国では、ProfessorとAssociate Professorが「テニュア tenure」と呼ばれる終身雇用職員となっていて、定年までその職に就くことが出来ます。それらのポジションを得て、ようやく研究者あるいは教育者として身を立てることができるわけですね。

一方、英国では、

UK
Professor(教授)
Reader(もうすぐ教授になれそうな人)
Senior Lecturer(上級の講師)
Lecturer(講師)

という四階級に分かれています。Lecturerの一部の人、Senior Lecturer、Reader、Professorがテニュアであり、Professorになれる人は一握りです。Professorの中でも色々とランクが分かれており、給与がランクに応じて異なるようです。もちろん、能力のある方でなければProfessorにはなれないので、「Prof.◯◯」というスタッフには、やはり敬意が向けられますが。

さらに欧米では冠教授 Endowed Professorhshipと呼ばれる伝統的な制度があり、篤志家の寄付によって設けられる特別な教授職があります。例えば、科学史に燦然とした名を遺すアイザック・ニュートン、ポール・ディラック、スティーブン・ホーキングらが務めた「ルーカス冠教授 Lucasian Professorship of Mathematics」は英国ケンブリッジ大学が世界に誇る冠教授ですね。350年以上の歴史を誇ります。当然、冠教授になるのは超一流の方です。

欧米では大学にも階級があり、例えば英国の場合では「教育大学」か「研究大学」で階級が異なります。日本でも旧帝国大学を由来とする大学はすこし格式がありますが、英国の場合はとくに「ラッセル・グループ」に所属する研究公立大学連合の力が強いです。

したがって、一言で「英国に留学しました~」といっても、「何処の大学で、誰の指導の下で、何を学んだか、何を研究したか」によって、当然、全く違うのですね。もちろんアカデミアにおいては、英国の場合、研究大学で、名のある教授のもとで、しっかりと修行した方が評価が高くなるわけです。そのあたりは緩いようでいて、実際はかなりシビアです。


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