「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

英国の大学院博士課程について

2018-04-12 | 英国大学院博士課程に関して
私は現在、大学院博士課程に所属しております。うちの大学院はすこし特殊なのかもしれませんが、入学は秋で、卒業は冬または夏になっており、私のプログラムは2016年秋から始まって2019年冬に卒業するスケジュールの3年間の課程となっています。ただし、博士研究の進行が遅れると、2020年夏の卒業になる可能性もあります。うちの研究室では、困ったことに、卒業が遅れるパターンが結構多いです。

英国の大学院博士課程は、プログラムによって多少異なりますが、3年あるいは4年間が一般的です。そして、学部を優秀な成績で卒業すると直接博士課程に進むことができるという特徴があるので、英国の大学院博士課程の学生はかなり若い人が多いです。早いと25歳くらいでPh.Dの博士号が取得出来ます。日本では早くて27歳くらいですから、英国は日本などの諸外国と比較して、かなり若くして博士を名乗れるわけですね。
私の同級生たちも私よりかなり年下が多いです。私と同年代あるいは目上なのは、私と同じように英国で臨床をやっているあるいはやっていた医師たちですね。日本の臨床系大学院と同じように、こちらでも臨床をしながら大学院を修了することが出来ます。その制度を利用している医師たちは思っていたよりも多かったです。

大学院博士課程1年目は、学生本人にとっても、大学にとっても、いわば「お試し期間」です。この段階で学生本人に博士課程の適性がない、あるいは他のキャリアに進む場合、大学側の指導体制の責任が問われることはありません。つまり、学生本人の問題ということで、大学側にはおとがめなしです。
オックスブリッジを初めとする多くの英国大学院博士課程では、入学後最初の3ヶ月程度でLiterature Review(博士研究テーマに関する先行研究の総括)の執筆が課されます。だいたい3000 wordsから100000 words程度で、自分の博士研究テーマについて「どこまでが判っていて、どこからが明らかではないのか」をまとめなくてはなりません。この出来が良ければ展望論文として科学誌に投稿され、そこで採択されれば出版されることもあります。
その他、大学院1年目には研究の取り組み方に関する講義(論文の書き方、文献の収集方法、学会での発表法など)、専門領域に関する系統講義(例えば博士研究テーマが「発がん」であれば、腫瘍学に関する講義など)、実習(動物実験に関する法的講習など)などを受講して、必須単位を取得することが求められます。
うちの大学の場合、5~6月の春学期終了間際に、上記の課題をちゃんとこなしたか、博士研究がちゃんと進んでいるかなどが全体的にチェックされて進級要件を満たしていれば博士課程2年次に進むことが出来ます。

2年目はとくに大きな課題はありません。大学院が開催するシンポジウムでの発表など幾つかの要求はありますが、基本的には博士研究に取り組んで、データを取得することが求められます。そして、博士論文の構成を練り、論文を完成させるために必要な実験、データをまとめていきます。5~6月の春学期終了間際に、博士研究の進行について審査があります。

3年目は博士研究の集大成です。博士研究をまとめて学位論文(100000 words目安、200 ページ以上)を執筆して、博士号にふさわしいかどうかの審査会を経て、全てクリアすれば晴れてPh.D 授与となります。しかし、規定の期間で博士論文を執筆できず、審査会が出来なかった人は、4年目以降も頑張る必要があります。

で、私の場合、ぼちぼち2年目が終わります。
今年度は昨年度に比べて、単位取得に追われることもなく、ひたすら博士研究を進めるだけという感じでした。2年目は、おそらく日本の大学院博士課程と比べても、それほど遜色ない過ごし方だったような気がしますね。ただ、研究の進め方についてはだいぶ理解が深まったというか、将来、自分が研究グループを率いる立場になった時にどうすればいいか、世界と戦うにはどうすればいいかということは最近判ってきたように思います。
来月に2年目の審査会があります。日本語でも審査されるのは面倒なのに、さらに英語でネチネチやられるわけです。
今から憂鬱ですor2

ということで、たまには大学院の愚痴を書いてみました。


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