本日、クローン羊ドリー Dorry the Sheep を1997年に発表して(ドリー自体は1996年に誕生)世界に衝撃を与えた科学者イアン・ウィルムット卿 Professor Sir Ian Wilmut が本学で受賞講演を行いました。本学では、かつて医学教育・研究に尽力された生理学者バークロフト博士 Dr Henry Barcroft の名を冠した Barcroft Medal を著明な医学研究者に毎年贈っているのですが、1997年「ドリーショック」から20年目の節目を記念してエジンバラ大学名誉教授のウィルムット卿が今年受賞されました。1997年2月27日号に英国総合科学誌Natureに掲載された論文は、言うまでもなく、哺乳類初のクローン成功の報告として世界を震撼させました。
『ドリーからヒト疾患の治療へ From Dorry to treatment of human disease』と題された講演では、クローン技術の発展の歴史を紐解きながら、未来の治療戦略への提言がまとめられました。その中で、2006年にiPS細胞を開発した山中伸弥・京都大学教授の業績なども紹介されました(余談ですが、ドリーに遅れること2年、世界初のクローンマウス作製の報告をNatureで発表したのはハワイ大学で長く活躍された発生生物学の世界的権威・柳町隆造教授のグループでした。この分野は日本人による貢献が大きいといえます)。
羊で出来たならば、いずれはヒトのクローンも出来るだろう……
当時(あるいは現在でも)、「クローン技術は許されるのか」という生命倫理学的な問いかけは大きく採り上げられました。この20年間、隆盛を誇るゲノム編集技術もそうですが、「生命を操作する」ことは技術的にますます容易になり、私たちにとってより身近なことになりました。
医療に応用することで、たしかに救われる人は増えるかもしれません。それは人類に貢献といえるでしょう。しかし、もちろん、一方では他の目的に応用されることもあるかもしれません。その場合、私たちはどう考えるべきなのか。
2002年にドリーは、肺の病気にかかり、ついに安楽死させられました。彼女の誕生も死亡も、その全ては人によって操作されたものでした。そして、その後も彼女のクローンは作られ続けており、今でもその命脈は続いています。
しかし、ドリーが遺したものは、彼女のクローンだけではありません。生命操作技術に対する多くの示唆と教訓を私たちに与えてくれたのです。
『ドリーからヒト疾患の治療へ From Dorry to treatment of human disease』と題された講演では、クローン技術の発展の歴史を紐解きながら、未来の治療戦略への提言がまとめられました。その中で、2006年にiPS細胞を開発した山中伸弥・京都大学教授の業績なども紹介されました(余談ですが、ドリーに遅れること2年、世界初のクローンマウス作製の報告をNatureで発表したのはハワイ大学で長く活躍された発生生物学の世界的権威・柳町隆造教授のグループでした。この分野は日本人による貢献が大きいといえます)。
羊で出来たならば、いずれはヒトのクローンも出来るだろう……
当時(あるいは現在でも)、「クローン技術は許されるのか」という生命倫理学的な問いかけは大きく採り上げられました。この20年間、隆盛を誇るゲノム編集技術もそうですが、「生命を操作する」ことは技術的にますます容易になり、私たちにとってより身近なことになりました。
医療に応用することで、たしかに救われる人は増えるかもしれません。それは人類に貢献といえるでしょう。しかし、もちろん、一方では他の目的に応用されることもあるかもしれません。その場合、私たちはどう考えるべきなのか。
2002年にドリーは、肺の病気にかかり、ついに安楽死させられました。彼女の誕生も死亡も、その全ては人によって操作されたものでした。そして、その後も彼女のクローンは作られ続けており、今でもその命脈は続いています。
しかし、ドリーが遺したものは、彼女のクローンだけではありません。生命操作技術に対する多くの示唆と教訓を私たちに与えてくれたのです。