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小説「キム」に出て来る、個性豊かな登場人物の何人かは、グレイトゲームの主要なプレイヤーである実在のパンデットや、彼らを訓練し、スパイとして現地に送り出していた実在のイギリス将校がモデルと言われています。
『大ヒマラヤ探検史 』
”インド測量局とその密偵たち”
薬師 義美「 (白水社)
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この本は、グレートゲームをリアルに演じたプレイヤーたちとその活動の詳細を見ることが出来ます。
地図とにらめっこしてわくわくしながらの、『大ヒマラヤ探検史』は、ことさらに面白かった!
イギリスのインド測量局が訓練し、仕込んだ現地人のスパイ、彼らを”パンデット”と称
するのですが、その一人一人の素性や性格も含め、その困難な探検の足取りと、歩くこ
と(訓練した正しい歩幅)で量った距離や、杖に仕込んだ携帯用の測量器でヒマラヤやカラコルムの高峰の測量、その結果作られた各地方の地図、また、その後の彼らの運命が、記録を収集して克明に書かれています。
写真の中のサー.フランシス.ヤングハズバンドは探検家でもあり、軍人としてグレイトゲームの中で、とりわけ大きな役を演じた人物です。
余談ですが、この人も最終的には精神世界への道の探検に至ったといお話。(私は,ずっと以前にスピリチュアルの本の中に彼と奥さんの名前を読み,名前がヤングハズバンド!?ってことで覚えていたんです!)
つまり、その当時の彼らの命をかけた働きによって、やっと、我々はエヴェレストやカンチュンジュンガ、K2などの存在を知り、圧倒的なその高さを知ったんですね。それは、なんとも感慨深いことです。
現地の人々にはチョモランマと呼ばれていた山が、イギリスのインド測量局によって,世界最高峰と確認されて、測量局の前長官ジョージ.エベレスト大佐に因んで、そのとき、エヴェレストと名ずけらたのだそうです。
曲がりくねった大河、マニプトラ河(ヤルツアンポ河)の流域、それはどのように流れているのか、周辺の険しく妖しい神秘的な周辺の調査の為の探検....
ほの暗い湿度ムンムンの,密林で、身を潜めながら..(想像するだに、わくわくしますが..)うろうろしてるのが見つかったりしてて、運が悪かったら、そのあたりの原住民に殺されることだってあります。(実際そうだった)
また谷や、裾野は、虎やその他の猛獣の出没するジャングル、そこはマラリアの巣窟だとか言われていて...と戦いつつ..、
沢山の人が命をかけて、そして命を落としています。無事に帰って来ても、
その後マラリアで亡くなった人も多かったんですね。
グレイトゲームの背後の密偵パンデットたちのリアルな冒険、艱難を超えて
出来上がっていく地図をたどる...これが読み手としても面白いんです。
測量というのは,敵を制する為には、もちろん、大事な作戦なんですね。
河口慧海と接点があったインド人チベット学者、サラット・チャンドラ・ダースは、
まさにイギリスの秘密諜報員だったのです。
慧海もスパイと見なされ、這々の体でラサから一直線でダージリンに逃げ帰ります。
一回目のチベットへの旅でした。
なるほど、結果的に諜報合戦だったのが、チェスに見立てての、
The Great Gameと呼ばれる所以だったんですね。
Sir Francis Edward Younghusband(1863-1942)
中央アジアとチベットの利権をめぐって英露清がしのぎを削っていた19世紀末—。当時の紛争地をことごとく踏破し、虚々実々の駆け引きを繰り広げた英国の 軍人・探検家、フランシス・E.ヤングハズバンドの生涯を、残された日記と膨大な資料をもとに生き生きと描いた初の評伝。 (白水社)
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