実はこの記事を書くにあたって、久しぶりに一巻目の「スワンの方へ」と最後の「見い出された時」を紐どいてみました。確かに、羅列され、たたみかけられていく長い長い文章は、...(これってがガウデイ建築の内部ディテイールみたい..)..推敲に推敲が重ねられ、今読むと、すみずみまで素晴らしい描写だなあと思えます。
明らかに、あの頃より今の私の方が、文章の出来具合まで目が届きますし、そのあたりの鑑賞力はあるんだろうと思えますが...、実際、面白くもあるんですが..、
いやはやそれ故に、この膨大な描写をなぞる..には、いまさら付き合い切れないなあ...と感じた次第でした。( それでも、ときどき、ランダムにピックアップして見直してみたい誘惑にかられますけど。)
あの頃、数回は読み、気に入ったパートはさらに何度か読んだものでした。友人にも感じた思いを聞かせたり、貸したりして、結局最初の文庫本全本も欠落をきたし、その後、筑摩書房の全集を買って、それも人に貸して欠落していき、もう一回古本屋で全集を買いそろえたのでしたが、いつしかそれも手元にありません。
私のハマり癖で、例によって、当時、プルーストのお手伝いさんの口述からの伝記やら、今はもう忘れましたが、なんだかいろいろ探して読みましたっけ。今ほど、出版物は少なかったように思います。
さて、
『失われた時を求めて』を描いた作品がいくつかあります。このページでは、そのいくつかをご紹介。
*『失われた時を求めて』は、本人がミラノの貴族であり、耽美的でゴージャスな映像と深遠な作風の希代の監督ルキノ.ヴィスコンテイ( 1906年 - 1976年 )が暖めていたモチーフでした。それこそ彼に最適な題材だろうと楽しみにしているうちに、亡くなってしまって、これは実に残念でした。
実現しなかったけど,ヴィスコンテイに敬意を表して写真だけ。
*ヴィスコンテイの死後、 仏独合作のフォルカー・シュレンドルフ (ブリキの太鼓)監督の『スワンの恋」( 1983年 )がありました。期待にわくわくして見に行ったのに、これはあまり気に入りませんでした。
主演のジェレミー・アイアンズは思い出しますが、今回調べたらアランドロンが出ていたとは...!すっかり忘れています!
いずれにしても、この豪華でシックなきらびやかさが乱立するイメージをどれだけ映像に表現出来るか,またこれ程の長編を切り取って、どう料理するかは難しいかもしれませんね。
これが出来るだろうと思えるのはやはりヴィスコンティをおいて他にはいないんじゃないかと思ってしまいますが..。
そうですねぇ..?..もしかして?コッポラが、彼の作品、”ゴッドファーザー”や”地獄の黙示録”のように力を入れて創ってくれたら..、ヴィスコンテイより幅も広がって、よりメジャーな素晴らしい映画が出来るかもしれないですね。お願いしたいものです。
3部作とか5部作とか..いいですね~。
それから、
この映画はどうなんでしょうか?
割合と最近?DVDにありますがラウル.ルイス監督の
『見いだされた時~「失われた時を求めて』
この映画は残念ながら私はまだ見ていませんが、ジョン.マルコヴィッチが本の中での、格段の存在感を放っている男色嗜好者のシャリリュス男爵を演じているというのですから、
これって、ちょっとブラボーかな?
カトリーヌドヌープとエマニュエル・ベアールがそれぞれオデットとジルベルトを演じているそうですが、
しかし、ジョン.マルコヴィッチと聞いたら!これはなかなか興味深い..。かなり期待してしまいますね~。見るのが楽しみ♪
*それから、80年代の前半だったか、これ又、偉大なファッションデザイナーのイヴ.サンローランが『失われた時を求めて』をコレクションのテーマにしました。
さすがに古いのか..残念ながらそのシーズンのコレクション画像は..さして見あたりませんでしたが..これ一枚。
(ちなみにこの部屋はサンローランのお家。彼の死後、名だたる作家の絵画を含めたゴージャスな品々のコレクションがオークションで高値が付いたとか。)
*又、フランスのローランプテイバレー団が『失われた時を求めて』の創作バレーを演目に持っていて,日本でも上演しました。
これも、さもありなんですね。
それに、ローランプテイの舞台衣装をサンローランが手がけていたこともあります。
嗜好のエッセンス、その波動は同質を求めてつながって行くんですね。
そういえば!ローランプテイ日本公演、見に行ったこと、今書いていて、思い出しました!ずっと以前のことです。
衣装がサンローランというのも楽しみにして。
その時の演目はコッペリアでしたが、
ローランプテイ自身が、等身大の赤い衣装を着せた木偶の人形と踊る、それが圧巻だったこと、これまた、今、思い出しました(*^_^*)すっかり余談になりましたね。
いやはや、まさに”私”の失われた時を求めて...ですね.(笑)
(プルーストは、まさにこのように..回想して、それが読者に遠慮もなく、どこまでも回想がうねって、それもひたすら、こと細かく綴っていくんですよ!ね?)
それはそうと、
ヴィスコンティが生存中にあたためていたテキストが出版されています。
*シナリオ 失われた時を求めて(筑摩書房)
ルキノ.ヴィスコンティ著スーゾ.チェッキダミーゴ著 大条成昭(翻訳)
内容
長らく行方知れずで、突如として姿をあらわした幻のヴィスコンティ・シナリオ。完成すれば間違いなくヴィスコンティの代表作となるはずの“誰も見られない 映画”を、想像のなかで御鑑賞下さい。説明の過剰もなく暗示に富み、忠実に再現された名場面の数々があなたを夢のスクリーンへ誘います。映画およびプルー スト・ファン待望の決定訳シナリオを、ヴィスコンティの手稿、ピエロ・トージの衣裳デザイン、マリオ・ガルブリアのロケ当時の写真等と共に紹介。(「BOOK」データベースより)
これはかなり興味深いですね。
久しぶりに『失われた時を求めて』を想起したら..それにまつわるたくさんの愉しみが掘り起こされ、読んだくだりの文脈に触れて、私自身が彼の回想への回想をすることになってしまい.....。
そして、この饒舌な長編! 時がある限り、失われた時を求めての検証、愉しみはまだまだ...いくらでも埋蔵されているなあ..と。
しかし..,反面、その芳醇さをたどる愉悦、なるほど、どの部分の叙述も、
う~んと唸るんですが...回想の洞窟はどこまでも、とどまる事を知らず、
ついにはそれを追ってその世界に埋没し...こちらも時を使い果たしてしまいそう....
いや、今の私は俯瞰の位置から見ていた方がいい、そんな思いになったりもしたのでした。
おわり