響きあうA"LIFE & ~『ピッコロの冒険』~

ピッコロの自分探し、広大な内なる意識へと冒険の旅の物語
&つれづれの内なる対話、 A"LIFE&ONENESS

プルースト~失われた時を求めて~2

2011-02-18 00:55:19 | プルースト
Copyright @ramni



実はこの記事を書くにあたって、久しぶりに一巻目の「スワンの方へ」と最後の「見い出された時」を紐どいてみました。確かに、羅列され、たたみかけられていく長い長い文章は、...(これってがガウデイ建築の内部ディテイールみたい..)..推敲に推敲が重ねられ、今読むと、すみずみまで素晴らしい描写だなあと思えます。

明らかに、あの頃より今の私の方が、文章の出来具合まで目が届きますし、そのあたりの鑑賞力はあるんだろうと思えますが...、実際、面白くもあるんですが..、

いやはやそれ故に、この膨大な描写をなぞる..には、いまさら付き合い切れないなあ...と感じた次第でした。( それでも、ときどき、ランダムにピックアップして見直してみたい誘惑にかられますけど。)


あの頃、数回は読み、気に入ったパートはさらに何度か読んだものでした。友人にも感じた思いを聞かせたり、貸したりして、結局最初の文庫本全本も欠落をきたし、その後、筑摩書房の全集を買って、それも人に貸して欠落していき、もう一回古本屋で全集を買いそろえたのでしたが、いつしかそれも手元にありません。

私のハマり癖で、例によって、当時、プルーストのお手伝いさんの口述からの伝記やら、今はもう忘れましたが、なんだかいろいろ探して読みましたっけ。今ほど、出版物は少なかったように思います。

 

さて、
『失われた時を求めて』を描いた作品がいくつかあります。このページでは、そのいくつかをご紹介。

*『失われた時を求めて』は、本人がミラノの貴族であり、耽美的でゴージャスな映像と深遠な作風の希代の監督ルキノ.ヴィスコンテイ( 1906年 - 1976年 )が暖めていたモチーフでした。それこそ彼に最適な題材だろうと楽しみにしているうちに、亡くなってしまって、これは実に残念でした。

実現しなかったけど,ヴィスコンテイに敬意を表して写真だけ。

 

*ヴィスコンテイの死後、 仏独合作のフォルカー・シュレンドルフ (ブリキの太鼓)監督の『スワンの恋」( 1983年 )がありました。期待にわくわくして見に行ったのに、これはあまり気に入りませんでした。

主演のジェレミー・アイアンズは思い出しますが、今回調べたらアランドロンが出ていたとは...!すっかり忘れています!


いずれにしても、この豪華でシックなきらびやかさが乱立するイメージをどれだけ映像に表現出来るか,またこれ程の長編を切り取って、どう料理するかは難しいかもしれませんね。

 

これが出来るだろうと思えるのはやはりヴィスコンティをおいて他にはいないんじゃないかと思ってしまいますが..。

そうですねぇ..?..もしかして?コッポラが、彼の作品、”ゴッドファーザー”や”地獄の黙示録”のように力を入れて創ってくれたら..、ヴィスコンテイより幅も広がって、よりメジャーな素晴らしい映画が出来るかもしれないですね。お願いしたいものです。

3部作とか5部作とか..いいですね~。

 

それから、
この映画はどうなんでしょうか?

割合と最近?DVDにありますがラウル.ルイス監督の

『見いだされた時~「失われた時を求めて』

この映画は残念ながら私はまだ見ていませんが、ジョン.マルコヴィッチが本の中での、格段の存在感を放っている男色嗜好者のシャリリュス男爵を演じているというのですから、

これって、ちょっとブラボーかな?

 

カトリーヌドヌープとエマニュエル・ベアールがそれぞれオデットとジルベルトを演じているそうですが、

しかし、ジョン.マルコヴィッチと聞いたら!これはなかなか興味深い..。かなり期待してしまいますね~。見るのが楽しみ♪

 

*それから、80年代の前半だったか、これ又、偉大なファッションデザイナーのイヴ.サンローランが『失われた時を求めて』をコレクションのテーマにしました。

さすがに古いのか..残念ながらそのシーズンのコレクション画像は..さして見あたりませんでしたが..これ一枚。

 

(ちなみにこの部屋はサンローランのお家。彼の死後、名だたる作家の絵画を含めたゴージャスな品々のコレクションがオークションで高値が付いたとか。)

 


*又、フランスのローランプテイバレー団が『失われた時を求めて』の創作バレーを演目に持っていて,日本でも上演しました。
これも、さもありなんですね。
それに、ローランプテイの舞台衣装をサンローランが手がけていたこともあります。

 嗜好のエッセンス、その波動は同質を求めてつながって行くんですね。

 

 

 

そういえば!ローランプテイ日本公演、見に行ったこと、今書いていて、思い出しました!ずっと以前のことです。

衣装がサンローランというのも楽しみにして。

その時の演目はコッペリアでしたが、

ローランプテイ自身が、等身大の赤い衣装を着せた木偶の人形と踊る、それが圧巻だったこと、これまた、今、思い出しました(*^_^*)すっかり余談になりましたね。

いやはや、まさに”私”の失われた時を求めて...ですね.(笑)

(プルーストは、まさにこのように..回想して、それが読者に遠慮もなく、どこまでも回想がうねって、それもひたすら、こと細かく綴っていくんですよ!ね?)

 


それはそうと、
ヴィスコンティが生存中にあたためていたテキストが出版されています。

 

*シナリオ 失われた時を求めて(筑摩書房)

ルキノ.ヴィスコンティ著スーゾ.チェッキダミーゴ著 大条成昭(翻訳)

 

内容

長らく行方知れずで、突如として姿をあらわした幻のヴィスコンティ・シナリオ。完成すれば間違いなくヴィスコンティの代表作となるはずの“誰も見られない 映画”を、想像のなかで御鑑賞下さい。説明の過剰もなく暗示に富み、忠実に再現された名場面の数々があなたを夢のスクリーンへ誘います。映画およびプルー スト・ファン待望の決定訳シナリオを、ヴィスコンティの手稿、ピエロ・トージの衣裳デザイン、マリオ・ガルブリアのロケ当時の写真等と共に紹介。(「BOOK」データベースより)

これはかなり興味深いですね。

 

 

久しぶりに『失われた時を求めて』を想起したら..それにまつわるたくさんの愉しみが掘り起こされ、読んだくだりの文脈に触れて、私自身が彼の回想への回想をすることになってしまい.....。

そして、この饒舌な長編! 時がある限り、失われた時を求めての検証、愉しみはまだまだ...いくらでも埋蔵されているなあ..と。


しかし..,反面、その芳醇さをたどる愉悦、なるほど、どの部分の叙述も、

う~んと唸るんですが...回想の洞窟はどこまでも、とどまる事を知らず、

ついにはそれを追ってその世界に埋没し...こちらも時を使い果たしてしまいそう....

 

いや、今の私は俯瞰の位置から見ていた方がいい、そんな思いになったりもしたのでした。

 

 

 

 

おわり





 

 

 


プルースト~失われた時を求めて~1

2011-02-15 15:17:20 | プルースト

 

 Marcel Proust(1971−1922)

失われた時を求めて 
À la recherche du temps perdu

 

さて、いよいよ『失われた時を求めて』プルーストです。
この本は、ファッションデザイナーになって、社会人一年生の頃..

20代のマイブームのひとつです。

この本は、若い時に読むにかぎります。この作者の文章に、この長編を通して付き合えるのは、若さ故の悩みは尽きないにしても、未だ人生に繁雑な要素が伴わない20代じゃないかと思います。(とは言っても、見識も体験も,理解度も充分な熟年になってからの方が、芳醇な文脈も、浮かび上がる構想、からまる構造も、より深く愉しみ味わえるのも確かですが.)

この作品が出版されて以来のもっぱらの定評は、画期的、偉大かつ難解、かつ長い(小説も長いけど、文章も長い、おまけに改行がほとんど無い!)これを読み通した人は、そのことを名刺に書いてもよいくらいだと言われたりしているらしい?


が、この作者の心境をぐじゃぐじゃとなぞる語り口は、 20代そこそこの私には、自働書記的に書き綴る自分の日記と書き方が似てるじゃない?って、そのぐちゃぐちゃ想うことに共感し、読み始めたんですね。もちろん質のほどは天と地以上の隔たりではありますが。

プルーストは『失われた時を求めて』で、現実や回想、夢想を交えて一瞬一瞬の情念思考の流れなど、メタファを織り込んだあらゆるシーンの描写を、物の書き手として、莫大なエネルギーをかけて挑戦している...どこまで迫れるか、命をかけたこれらの叙述が、結果的に壮大な構想となって、このシンフォニックな、またはトッカータとフーガのような、ゴシック建築の乱立のような....読後そのように感嘆させられてしまう...んですが..、その時代!ベルエポックの創り手たちとあの時代の息吹を描ききったんですね。


貴族やブルジョアジー、芸術家のさんざめくサロン、社交界が主軸の舞台となっていて、その中での個性的な人物(実在の人物をモデルにしている)たちの関係性の綾が展開されていく...のです。

登場人物たちの耽美的であったり、デカダンな嗜好的な面では、もちろん恋愛感情の機微起伏.....レスビアンあり,男色あり、それらはストレイトな関係性とも交錯して、登場人物の社交界の華やかな表の顔とうらはらに、その嗜好ゆえの哀れさも漂って...これまた交響楽的模様なのであります。

そうそう、スノッブ、スノビッシュという言葉、概念も、この時、私の気負った若さに取り込まれましたっけ。

 

サロン文化の華やかさに憧れ、自ら、そこに仲間入りするべくパスポートを得つつも、プルーストは、自分をも含め?そこにスノビッシュという浅薄な精神性を見据えています。

 

主要な登場人物に、それぞれ実在の人物がモデルになって投影されているのも興味深いです。

歴史背景をひもどき、彼らの存在をのぞき見ると、ベルエポックな日々を彷彿とさせてくれますね。

 

特に存在感を放ち、印象的な、またこの本のテーマを象徴しているかのような人物がシャルリュス男爵。昔読んだシリーズの中で唯一掲載されていたシャルリュス男爵のモデルになったモンテスキュー伯の肖像画は脳裏に刻まれています。

 

下は一番有名な主人公スワン、そしてその妻となる高級娼婦だったオデットのモデルとなった二人。

 

語り手の『私』の初恋はスワンとオデットの娘ジルベルト。

いずれ(それまでに紆余曲折ありますし、その後も....。なにせ同性愛者同士だったりですから)そのジルベルトと結婚するゲルマント家のプリンス サン.ルーのモデルは?

さすがにハンサムぞろいです!

 

 

 

なんと言っても、
私が影響を受け、感謝している要素の最たることは、その時代、ベルエポックを担った人々や事件など、その後も時代に影響を与えた、名だたるクリエイターたちを含む文化人たちが、リアルにリアルタイムで登場することでした。

たとえば、
パリを夢中にさせた「ロシアバレェ団」バレェリュス(Ballets Russes)の公演(1909年パリで旗揚げ)、その興行主のセルゲイ.デアギレフ、驚異的跳躍力の前衛的踊り手ニジンスキーなどは、この本で始めてその存在を知ったのでした。

 

その舞台の緞帳をデザインしたのがピカソであり、音楽はストラビンスキーであり、サテイであり、舞台美術は衣装を含めて、レオン.バクスト、その他綺羅星の如く...

 

左<レオンバクストが描いたニジンスキー、牧神の午後のプログラム>

右はジャン.コクトーとデアギレフ

 

この「ロシアバレェ」という、ひとつの括りだけでも、その後、彼らの伝記や、その周辺にまつわる本やヴィジュアルな情報とかを読みかつ漁ることになりました。

 

その他にも、彼が傾倒した画家たち、フェルメール、ルノアール,モロー、グレコ等、プルーストはそうとう思い入れがあったなあって記憶があります。読者であるまだ幼い私は、ふむふむそうなんだ...と聞き入って、彼のパッションに追随して、その後のいつかの日々に、プルーストが熱っぽく語っていた人々や作品に、自分なりに触れることになるんですよね。


20代という未熟な時代ながら、『失われた時を求めて』にちりばめられた、これらのエポックな時代の圧倒的な分量の印象...感動、興奮を、まだ、世界に対して体験も少なく、文化的土壌もいまだ未熟ゆえに、より憧れを持って受けとめられるんでしょうね。

迷路のように曲がり、うねった膨大なデティールの描写から、実は、 読み終えたとたん、いくつもの尖塔を持ったゴシックの大伽藍が,そこに、すっくと建ち現れてたのです.

 

私にはその瞬間、そこにははっきり音楽が聞こえているようでした。

大伽藍の崇高な高低差のあるの尖塔から小節ごとにわき起こる、トッカータとフーガ....のような..。それは歓喜に似た驚嘆でした。

今、思うと、その大伽藍のイメージとは、プルーストが、この本の中でことさらに、

感嘆をもってページを割いていた「シャルトルの大聖堂」..この印象が私の無意識に転化して浮かんだんでしょうか?

そう..まさにこんなイメージでした。

<シャルトル大聖堂>

(今どきは、このシャルトルの大聖堂もユーチューブで観ることができますが、外も中も彫像もアーチも凄いです!とりわけ、ステンドグラスは有名でシャルトルブルーと呼ばれています。)

 

この本から得たさまざまな情報、印象、感動が、私の文化的精神的土壌を耕し、たくさんの種を蒔いてくれて、その後にそこから枝葉を伸ばす歓びを促してくれたのです。

人生を豊かにしてくれたプルーストの『失われた時を求めて』
命をかけたかぐわしい文学と、特筆すべき人々、芸術、建築など音楽等、

さまざまな方面への興味と理解の土台を作ってくれ、

好奇心と楽しみのヴァージョンを増やてくれた、

『失われた時を求めて』に感謝して...

 

プルーストへのオマージュ

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

http://ja.wikipedia.org/wiki/失われた時を求めて

http://ja.wikipedia.org/wiki/マルセル・プルースト

 

このサイトはイタリー語ですが沢山の写真その他お宝資料がそろってます。http://www.marcelproust.it/proust/indice.htm

その中のプルーストの写真館のページをだしておきましょう。ページの下の方のボタンをクリックして行くと見れます。

http://www.marcelproust.it/gallery/immag_1.htm

 

シリーズ:ちくま文庫
失われた時を求めて 全10冊セット
マルセル・プルースト 著 , 井上 究一郎 翻訳


ramni わくわくワールド<本.アート.冒険者たち>

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