あらためてフランシス.ベーコンとは
フランシス.ベーコン(1561−1626)(Francis Bacon)
イングランド近世(ルネサンス期)のキリスト教神学者、哲学者、法律家である。
父親はエリザベス1世の国璽尚書を務めたニコラス・ベーコン。母親アンはギリシャ語、ラテン語、フランス語、イタリア語に堪能な才女であり、ベーコンは、幼い頃からとびきりの教育を受けていた。12歳でケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに入学。その後、ロンドンのグレイ法曹院で法律を学ぶ。
23歳で国会議員となり...中略.、1605年に『学問の進歩』を出版する。1606年、45歳のときに14歳の少女と再婚!(これってよく分からない?それにベーコンは同性愛者だったとも言われているし)
1607年に法務次長になったことを皮切りに順調に栄達し、1617年に国璽尚書、翌年には大法官となる。
1621年、汚職の嫌疑を受けて失脚。4日間ではあるが、ロンドン塔に閉じ込められもした。この時代の宮廷つとめの偉い人たちは、多かれ少なかれ一度は投獄されています!
これが、ジィニアスなベーコンにしては、ちょっと残念な人生の終わり方なんですが..
隠退生活の中、鶏に雪を詰め込んで冷凍の実験を行った際に悪寒にかかり、それがもとで亡くなったと。
以上がベーコンの一般的な、ざっと経歴。
さて、シェイクスピアはフランシス.ベーコンだと主張するベーコン派は、伝統的に様々な面白い説を資料に基づいて提示しています。
最近の別人説では、ベーコンの重厚な文体とシェイクスピアの洒脱な文体は相容れないとされる傾向が強く、一般的には、別人説から逸脱しているかも..なんですが、それでも彼らベーコン派は、We love Francis Bacon! まさに、愛して止まないのです。
ここでは、別人説というより、彼にまつわる謎のいくつかをルポしてみました。
*まず一つ目の謎は?
フランシス.ベーコンは、エリザベス1世とレスター伯ダドリーの隠し子である。
レスター伯ロバート.ダドリーはエリザベスの幼なじみで、結婚を考えたほどの恋仲だったのは周知の事実。
しかし、周りの反対は強硬で,結果的には、1560年9月にダドリーの当時の妻が階段から転落して死亡すると、大きなスキャンダルとなり、多くの人々が女王と結婚するためにダドリーが妻の死を企てたと疑った。
ダドリーとエリザベスの共謀説が流れたため、結婚を断念。実際は乳がんを患っていたとか、自殺説とか、真相は分かっていないらしいですが。
エリザベス女王とレスター伯ダドリー ベーコンの本当の両親?
しかしながら、
1560年、女王がレスター伯の子を宿したという噂が立ちました。
噂を流したというかどで、実際に、何人かが投獄されています。
ベーコンが生まれたのは、まさにその翌年。
さて、その頃にエリザベスの妊娠してたかも?!という肖像画がこれ!
この謎に充ちた絵はハンプトンコートにあるそうです。
マタニテイドレスのクイーンエリザベス? 右下の額縁様の中に書かれているのがベーコンの、不当な運命にたいする泣き言ソネットらしいのです。実際、この絵にコメント出来る人は、関係筋でもいないらしい。これは時空をを超えた王室の秘密か
それにこんな絵もあります。女王と愛しげな一人の子供が!
"A Queen and Her Son," a drawing attributed to NicholasHilliard (1547-1619), from the British Museum.
確かに、この肖像画はミステリアスですね。書かれた年代といい、書いた画家といい、
まして、タイトルが
"A Queen and Her Son"
由来としては、由緒正しく思えますし、どんな意味が込められていたんでしょうか?
それから、
ベーコン派はこのようにも..。
フランシス.ベーコンの目の色はブラウン。
しかし、ベーコンの両親の目の色は、二人ともグレイ、その子供がブラウンになることは突然変異に等しく、その確率は10万分の1以上だという。
それに対して、エリザベス1世、ダドリー共に目の色はブラウンだと。
若き日のベーコン。可愛いですね。
これを描いたのも上の肖像画と同じ作者。時の宮廷画家Nicholas Hilliard (1547-1619)です。
ベーコン派は似てると言うんですけど、どうでしょう?
ベーコン(左) 噂の父親、エリザベスの恋人、レスター伯ダドリー(右)
もちろん、それだけではなく、誇り高く伝統あるベーコン派は、いくつかのソネットや、ベーコンの手紙などで、この説を支えています。
ベーコンの出生は秘密にされて、彼がそれなりの処遇をされなかったことを、悲しみ恨んだ..らしい複数のソネットを、彼がエリザベスとレスター伯の隠し子だという根拠の一つとして、ベーコン派は揚げています。
また、ベーコンが18歳での父親を亡くした時、充分な遺産相続を受けなかった。
遺産は彼の母親が相続し、ベーコンには、一切、情けをかけなかったとか。
母親からも冷たくされたのは、本当は女王の子だから、女王がめんどうを見るだろうと期待されたからだと。
なるほどね..割合と説得力あります。私もベーコンがエリザベスの隠し子なら..面白いなと思っていますが..。あり得る事じゃないでしょうか..ね?
ちなみに、通説の両親、ニコラス.ベーコンとアン.ベーコンはこれです。
よくわかりませんが^-^ まあ、似てる..?
それにしても、ベーコンが実の子だとすると、ずいぶん冷たい母親ということになりますね。父親が死んだ途端に、ベーコンは経済的に窮乏し、留学先から帰国せざるを得ないほどだったんですから!
*二つ目の謎
フランシス.ベーコンとエセックス伯ロバート.デュヴァルは実の兄弟である。
ベーコン派によるとエリザベス女王と象徴と暗示的な二人の子供の肖像画をあげています。
この肖像画からのベーコン派の謎解きはと言うと?
この二人の子供とは?
船の櫂を持っているのがベーコンを表わしている...彼はエリザベスの跡取りとして王座を約束されていたという。何故なら船の櫂は、国を治め、国を導くという象徴であると。
また、
殉教や苦難を暗示する羽根を持っているのが、エセックス伯ロバート.デュヴァルを表わしていると。
彼は女王の寵愛を受けていたにもかかわらず、謀反を起こし、最終的にロンドン塔で処刑されました。そのとき女王は涙にかきくれたということです。
エセックス伯ロバート.デュヴァル(1566−1601)とは?
初代エセックス伯ウォルター・デヴァルーとレティス・ノリス(Lettice Knollys)の子として、カンブリアに生まれた。ただし、父親はエリザベス1世の寵臣を長く務めた初代レスター伯ロバート・ダドリーだという説もある。
母方の曾祖母メアリー・ブーリンは、ヘンリー8世の2番目の妻でエリザベス1世の母親であるアン・ブーリンの姉だった。(映画になりましたね”ブーリン家の姉妹”)
なるほど..少なくとも、エリザベス1世とも血縁ということになりますね。
つまり、噂のレスター伯ダドリーがエセックス伯ロバートの父親なら、エリザベスとも血縁であると同時に、ベーコンとロバートは異母兄弟ということになるんですね。
しかし、やはり、ベーコン派はそれでは済ませません。
エセックス伯ロバートが処刑されたロンドン塔の内部の壁にロバート.チューダーというサインが彫られているのです。調査によると、ロバート.チューダーなる人物が投獄されたという記録は無いというんですね。
これは、エセックス伯が、エリザベス1世に連なるチューダーの家系だということを、最後に世間に知らせたんじゃないかという見方が出来る..ベーコン派は、これは、れっきとした証拠じゃないかと。
そして、エリザベス1世のふたりの息子、長男はフランシス.ベーコン、次男がエセックス伯ロバート.デュバルは直系のチューダー兄弟だというわけです。
ベーコンも、また、自分の祖父はヘンリー8世、(つまりエリザベスの父親)と書いているそうですし、チューダー家のシンボル白薔薇を、出版物などに使っていたそうです。
(う~~ん、確かに生まれ育ちがふたりとも、ちょっと複雑かもしれない..。父親を早く亡くしたり...それに、たしか、ふたりの後見人はエリザベス1世の宰相、バーリー卿ウイリアム.セシルだったしね。この人は別人説の筆頭候補、オクスフォード伯の後見人でもあり、自分の娘をオクスフォードに嫁がせている。別人説に連なる人物たちにも、様々な影響を及ぼした、ウイリアム.セシルは極めて、重要な登場人物です!そうそう、また、バーリー卿はベーコンの叔父にもあたります)
それはそうと、
レスター伯ダドリーと結婚するとき、レティス.ノリスは妊娠中で、前夫、初代エセックス伯ウオルターとの子供が宿っていて、ダドリーとの結婚では、ロバートは彼女の連れ子となっているんですが、これがまたもや、ベーコンの時と同様に、実はレスター伯ダドリーとエリザベスとの二人目の子だったってことでしょうか?!
秘密裏に、そのようにアレンジされ、完全に隠蔽されたということでしょうか?
しかし、ベーコンの時に比べると、エセックス伯ロバートの誕生の時期となると、
エリザベスの年齢にいくぶん無理があるかな?なんて..私は思うんですけど..ね。
それにレスター伯が女王エリザベスをあきらめて、勝手にレテスと結婚した時、エリザベスは、カンカンに怒ったという話もありますし。
けれども、事実は小説より奇なり、ましてや世紀の舞台裏、超セレヴの背景や状況に於いては、このようなことぐらい、平気であり得るとも言えますよね。
さて、
*三つ目の謎とは?
これがなんとも..?なんですが、
セルバンテスの「ドン.キホーテ」はひょっとして?フランシス.ベーコンが書いた!?
という大胆な説なんです。
ベーコン セルバンテス
いやはや、まだまだ、あります。ベーコンの秘密!?
それは、また、
次の、フランシス.ベーコンの謎2へ続きます。
それから、謎ではないですが、ほんとはベーコンの存在として、その後の世界に一番重要な意味を持った、彼の哲学者として功績なども
突然の3月11日!未曾有の地震と津波という天災、それに加えて、原発事故という人災、あの日以来、ブログはツイッターのまとめ一色で、3ヶ月以上が経ってしまいました。
久しぶりに、中断していた記事のアップです。
ちなみに、この前の記事、
シィクスピア別人説1『シェイクスピアは誰か?』は、
http://blog.goo.ne.jp/ramni/e/c42499e2f5df80d829a609592f4996d3
↑ここですので、合わせてよろしく。
今後とも、よろしくお願いします。(^^)
Image: Matt Collins
もう.シェイクスピアは誰か?というテーマにハマったら、沢山の本を読む事になっちゃって!
半年以上手間取っています!登場人物は多いし、関係性も複雑だし、何冊読んでも、自分の理解に落とし込むのに、いつまでたっても終わらない(~_~;)
本当は冒険がらみの世界史が好きなのに、翻訳者の一人が言ってましたが、このテーマに入ると、エリザベス1世の時代考証みたいなことに付き合う事になると。まさにその通りでしたね。
翻訳本の他に、特に面白いソースは、この前の記事『シェイクスピアは誰か』のページにベーコン派のサイトを乗せてい
ますので、そちらからどうぞ(^^)。
英語ですが、デザインも素敵で楽しめますよ。