ざっきばやしはなあるき  

雑記林花或木 Since 2005-01-01 
美術とか映画とかなんとなくぶろぐ 

筒井康隆「カーテンコール」

2023-12-11 20:54:21 | 
 筒井さんの最新刊、コロナ禍の間に書かれた25作品をまとめた短編集。「これが最後の作品集」なんてオビに書いてあるが、いままでにも「最後の長編」とか「断筆宣言」とかいろいろあったからあてにはならない。同世代のSF作家の皆様方は既に遠方に旅行中であるが、暇さえあれば時をかける筒井さんはいつまでも元気だ。筒井さんはIQが180もあるので180歳まで生きるとすると、私が先に死ぬ計算だ。



カバーをめくったら、居た
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京極夏彦「鵼の碑」

2023-12-10 17:32:29 | 
鵼の碑(ぬえのいしぶみ)

 京極夏彦の17年ぶりの百鬼夜行シリーズ新刊。あの分厚い本が帰ってきた。むかし、通勤電車で右手で吊革につかまりながら左手に持って読んでいたら攣った。だからというわけでもないが今回は電子書籍にした。画面には今読んでいる位置が%で表示されている。1000ページくらいあると10ページで1%になるが、大きめな文字で読むとさらにページが分解されるので、何度も改ページしてなかなか1%進まない。

 お馴染みのメンバーが次々のろのろと登場してくる。最初から全員出てくるわけではない。次の人が登場するまで長い長いページが続く。日が暮れる。中禅寺秋彦が憑物落としをするまでに、榎木津礼二郎は幻視して意味不明な事を口走り、関口巽はおどおどしてふさぎ込み、木場修太郎は四角い顔で威圧してあちこち嗅ぎまわる。他にもいろんな人物や妖怪が現れる。いや妖怪は気のせいかもしれないしそうでないかもしれない。17年も待たせてしまった読者への歳末ファン感謝祭みたいな作品になっている。
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プロジェクト・ヘイル・メアリー

2023-10-09 15:29:50 | 
 アンディ・ウィアー作のSF宇宙小説を読んだ。アストロファージと名付けられた微細な生物が太陽エネルギーをエサにしているらしいという観測結果が出た。このままでは太陽が冷え切って地球人も生きて行けなくなる。それを解決するために主人公の科学者グレースたちが宇宙船ヘイル・メアリー号に乗って長い旅に出るという物語。

 カバーイラストと本編初っ端に宇宙船の図が載っているので、これが飛ぶ物語だなと誰にでもすぐにわかるのだが、主人公グレースはどういうわけか記憶喪失で、自分がどこにいるのかわからない状態。読者はわかっているのにねぇ。逆にこのカバーイラストで宇宙船が出てこなかったら詐欺である。

 そんなこんなで自分の星を救うために頑張るグレースとロッキーの、手に汗握る本格熱血さいえんすふぃくしょん。コメディチックな表現も満載で飽きずに読める長編。なんか映画化の話も進んでいるようなので、ぜひ見に行って、グレースとロッキーの姿をこの目で見たいと思う。

 この小説の舞台は地球から遠く離れた広大な宇宙なのだけれど、無限大宇宙の輪廻転生みたいな小説「三体」を読んだ後なので、広さ、大きさの感覚がちょっとだけ、ちょっとだけ麻痺してしまうという弊害が無いといえばウソになる。そういう意味では「三体」はまったく困った話だ。
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三体シリーズ読了

2023-06-02 19:17:29 | 
 遅まきながら中国の作家、劉慈欣の長編SF小説を読み終えた。もちろん日本語版(翻訳:大森望)である。本が分厚いのと、中国のSFという精神的ハードルが高かったので、存在を知ってから「どうしようか」と考えた。でも各方面での評判も良いという噂やその逆の批評などもあり、気になったので自分で確かめるしかないと思い読んでみた。

 登場人物のほとんどが当然のごとく中国人ということで、人名の中国語読みと日本語読みがごちゃごちゃして最初は取っ付きにくかった。わんみゃお、るおじーなど中国読みで馴染めた人物や、ようぶんけつ、ちょうぎなど日本語読みしちゃった人物などあかちゃかごちゃごちゃ入り混じったまま読んだ。

 読み進むと、バーチャルゲームの三体世界に入っていくシーンが出てきて「あれれ?そっち系の話か?」とドン引きしはじめてしまったが、金払ってるんだからこの1冊だけは読み終えないともったいない!と思い、がむばつて読んだ。

 がむばつてしまった結果、1冊読み終わるともう、すぐに次巻を手に入れて続きを読みたくなった。そんなことを繰り返しているうちに関連書籍を含めて7冊を読み終えていた。巻が進むにしたがってどんどん大風呂敷が広がって行く。どこまで広がるんだと半分呆れながら楽しく読んだ。

 ゾッとしたシーンは、ハッブル望遠鏡で刷毛を観測した時と、オーストラリア騒動。自分も地球に生きているからこそゾッとするわけで、逆に広大な宇宙を舞台に縦横無尽に話が広がりすぎるともう何が起こっても遠い出来事になってしまう。

 「三体0(ゼロ) 球状閃電」は三体とはほとんど関係ない話だが、三体に登場する丁儀(ディンイー)が活躍する物語っていうだけで、三体0という名称が付いてしまった。これはこれで面白かったけれど、読まなくても大勢に影響はない。

 「三体X 観想之宙」は三体ファンの宝樹(バオシュー)という人が勝手に書いた物語。それを劉慈欣が公認して出版されたもの。筒城灯士郎の「ビアンカ・オーバーステップ」みたいなもんかな。

 だから三体Xの内容は、すべてが劉慈欣の考えていたシナリオどおりではないのだろうが、三体を読んできた読者にとって、痒い所に手が届くような物語になっている。三体Ⅲの登場人物である雲天明(ユン・ティエンミン)のその後のことや、劉慈欣が三体シリーズで描かなかった三体人の姿などが、劉慈欣が広げた大風呂敷を軽々と突き破って大穴を開けたまま大胆に赤裸々に勝手気ままに描かれていて面白い。浮かれすぎてちょっとファンタジーが始まっちゃっているけれど、それも含めて楽しく壮大な話に仕上がっている。これを読めばもう元祖三体Ⅳは無くてもいいんじゃないかな。あったらあったでまたややこしいけど。


・三体 (著者:劉慈欣)


・三体Ⅱ 黒暗森林 上(著者:劉慈欣)


・三体Ⅱ 黒暗森林 下(著者:劉慈欣)


・三体Ⅲ 死神永生 上(著者:劉慈欣)


・三体Ⅲ 死神永生 下(著者:劉慈欣)


・三体0 球状閃電(著者:劉慈欣)


・三体X 観想之宙(著者:宝樹)



 近頃の私が本を読むタイミングは、職場の休憩時間が多い。でも分厚い単行本を職場に持っていくのは難儀だ。というわけでAmazonのKindle版電子書籍をスマホKindleアプリで読んだ。読み終わるまで5か月かかって7冊で12,870円。

 電子書籍なら老眼気味でも、文字の大きさを変えられるので読みやすいし、薄暗い場所でも負けない。電子版はやや割引されているというのはありがたいが、読み終えても古本として売却できないし、中古の電子版もないところが玉に瑕。角が折れてて黄ばんだ安い中古の電子書籍って無いかねぇ?

 「これ面白かったよ」「ホント、貸して」「うんいいよ」みたいなこともスマホではできない。専用リーダー端末なら家族で回し読みくらいはできるけど、専用端末を持ち歩くのも面倒なので私は持っていない。

 電子書籍はAmazonのKindleアプリと、ヨドバシカメラのDolyアプリを使っている。ヨドバシのポイントが余っている時はDoly版を買ったりする。定額サービスは使ってない。

 電子書籍はもし各社のサービスが終了したらパァになってしまうようだ。サービスが終了したらアプリだってそのうち無くなるだろうし、専用端末だって壊れたら買い替えできなくなる。そうなると以前買った本を読み返すこともできない。そんなリスクもある電子書籍だが、たしかに便利ではある。ダウンロード音楽.mp3のように、どこで購入してもさまざまな環境で読み続けられるような規格の統一が一刻も早く実現してほしいと思う。





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不思議の国の鏡の国のアリスの本

2019-11-12 22:51:47 | 
 不思議の国のアリス展のショップにあった洋書。なんかかわいいし、ジョン・テニエルの挿絵もカラーで載っていたのでついつい買ってしまった。文庫よりちょっと小ぶり。金色もあちらこちらに使われているので何となく
ゴージャス!

子供向けの本なので文字がデカイ!

子供と老人にやさしい本デアル!









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筒井康隆、自作を語る(早川書房)

2018-10-01 21:20:27 | 
 1934年9月24日生まれ、今年で84歳になった筒井康隆、同時代のSF作家はほとんど異次元に旅立ってしまったので、一人勝ちなどと言われているらしい筒井さん。2014年~2017年からまで開催された対談イベントの内容が記されている。全然知らなかった裏事情などもたくさん出てきて漫才みたいで面白い。巻末には46ページに渡って全著作リストが収録されていてリアルに役に立つ。

 筒井さんみたいなご長寿スモーカーを見ていると「健康に良くないからタバコやめたほうがいいよ」などという忠告が愛煙家にとっていかに無意味な事かを感じる。15年前に断煙宣言をした私にはどうでもいいことだが。

 我が家にある筒井康隆の本

 全集が出た時、それまで持っていた単行本や文庫本で全集に収録されているものはほとんど手放してしまった。置き場所がないという物理的な問題もあったのでしかたない。そういう意味では全集発売でずいぶん助かったとも言える。驚いたのは全集が出た後も雨後のタケコプターのごとく新刊が次々続々と出続けていることだ。大概の作家は全集を買えば著作をほとんど網羅できるというのに。画像中央に『残像に口紅を』がある。これは世界から言葉がだんだん消えて無くなっていく話だが、紫外線に弱い赤インクで印刷された背文字も色あせて消えてしまった。
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巨大仏巡礼

2015-02-03 21:45:17 | 
 「大仏ハンター」のクロスケさんが巨大建築仏の本を出版した。クロスケさんは全国のデカい仏像を巡るのを趣味としている、というか、副業になってしまっている人。テレビ・ラジオなどのメディアにもちょこちょこ出演していたり、ワンダーJAPANのような雑誌にも寄稿したりと、忙しい毎日を過ごしているようだ。

 「巨大仏巡礼」の表紙は120mという日本一の高さを誇る牛久大仏を下から見上げた写真。160ページの中身は、クロスケさんが取材して撮り溜めた写真が中心で、全ページフルカラーの見ごたえある内容になっている。牛久大仏は周辺に高い建物が無いので、遠くからも見えるその威容はちょっとしたトワイライトゾーンである。そんな牛久大仏でも新宿西口に建てられたとしたら、角を曲がってみるまではどこにあるのかわからない。

 クロスケさんとは「仏像マニアックス」というイベントでお会いした。同じく「仏像マニアックス」でお会いしたことのある、まんじまるさんも「大仏をめぐろう」という本を出版している。表紙は奈良の大仏。こちらの本は解説文が多く載っていて、読みごたえのある内容になっている。奈良の大仏だってデカい。座っていて15mくらいあるのだから、立ち上がったら30mくらいかな。でも残念ながら千三百年に一度しか立ち上がらない。

 奈良の大仏は拝むけれど、コンクリートの大仏はありがたみが感じられないという人もいる。怪しげな観光施設の雰囲気がそう思わせるのかもしれない。でも単なる材質の問題だ。木像、石像、塑像、銅像、鉄像、ステンレス像、鉄筋像、ダンボール像、好みの仏像を楽しめばよい。建築技術の進歩に伴っていろいろな仏像が登場してくるのは当然。そのうち実体のないホログラフの巨大仏像とか、液体の仏像とかが出現する日が来るかもしれない。いや、知らんけど。その時にありがたいと思うかどうかはあなた次第です。私は信心深くはないので、物凄く由緒ある逸話を持ったボロボロズタズタの仏像より、保存状態の良い仏像や完成度の高い仏像のほうが楽しい。楽しくなければ仏像じゃない!
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お気に入りの絵本2冊

2008-07-14 22:34:00 | 
【岸辺のふたり】 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット作、くもん出版

 父親に置き去りにされた少女の長い長い人生をセピア色に描いた絵本。昨年の春に、アレクサンドル・ペトロフの「春のめざめ」と同時上映していた短編アニメは「ドナウ川のさざ波」が寂しそうに流れるせつないアニメーションだった。これが気に入って絵本も買った。


【アンジュール】 ガブルエル・バンサン作、BL出版

 クルマの窓から飼い主に投げ捨てられた犬の寂しい旅を、鉛筆によるラフスケッチのような絵で綴った絵本。そんな下書きのような鉛筆のラインが犬の気持ちをみごとに表わしている。これはたまたま書店で見つけた。


 いまのところ絵本は2冊しか持ってない。なにかホリダシモンやホリエモンがないか、ときたま絵本コーナーに立ち寄ってみるが、まだ3冊目はみつかってない。この2冊は期せずして置き去りにされた犬と少女のおはなしである。だからといって別に♪置き去りにした悲しみ♪が好きなわけでもないが。
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美術手帳リニューアル

2008-04-22 00:46:02 | 
 美術手帳が創刊60周年でリニューアル新装刊していた。特別付録として、会田誠×加藤愛デザインのイラストが描かれた、微妙に使えなさそうなオリジナルエコバッグなんぞを挟み込んで、軽薄なイメージで新登場。なんか「ザ・テレビジョン」のパクリ表紙にレモンの代わりにナスを持った会田誠がいるもんだから、軽薄感が倍増! おまけに紙の質も変わったようで50グラムくらい軽くなっていて、軽薄感さらに倍!!

 そのお返しと言ってはなんだが、200円値上がりして1800円だって(・_・、)

 会田誠特集。昨年の「アートで候」に登場した「滝の絵」の部分写真がある。あれでできあがりではなく、まだ描き続けているらしい。作品集と比べてみると、滝の水が深みを増しているし、草木もだんだん伸びてきた。春だなあ・・・
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カラマーゾフの兄弟

2008-03-17 23:29:43 | 
 ドストエフスキー 光文社古典新訳文庫 ってので読んでみた。全5冊、ああ、鬱陶しかった。ブックオフに1~3巻があったので、買ってきて読んでいたが、途中の変な宗教話のあたりは苦しかった。なんかもう途中でも良いから全部捨てちゃおうかと思った。でもまあもったいないのでしかたなくほとんど通勤電車の中で読んでいた。金原ひとみの言うように、前半は厳しくて、後半は怒涛のように読み続けるパターンで、3冊読み終わった後、またブックオフに行ってみたが、そう都合よく4、5巻があるわけもなく、普通の書店で普通の価格のを買って来てしまった。で、ようやく読み終わったが、なんとまあカラマーゾフ一家と取り巻く人々の胡散臭いことといったら。この中に混じりたくないな。
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ダンシング・ヴァニティ

2008-03-03 00:20:14 | 
新潮社:筒井康隆著「ダンシング・ヴァニティ」を読んだ。

 繰り返しが、なんだこの繰り返しは。繰り返さなければ270ページの本は90ページくらいになりそうだ。じゃあ繰り返さなくていいかと言うと、それじゃぁ何の作品だかわからない。最初は乱丁かと思った。でも乱調だったのは筒井さんの脳内のようだ。
「ご飯はまだかな」
「おじいさん、いま食べたじゃありませんか」
「おや、そうかな」
「おじいさん、その話はさっき書いたじゃありませんか」
「え? そうだったかな、そういえばなんか聞いたような話じゃなぁ」
「ほらほら、そのケンカの話もさっき書いたでしょ」
「そんなことはないぞ、いま思いついたんじゃ」
というような雰囲気である。
この繰り返しも、最初はちょっとかったりぃなぁという感じなのだが、そのうち読むコツみたいなのがわかってきて、俺のペースで読めるようになって、意外にも最後は目頭が熱くなったりして、本当に意外だ。
籾山から仲井君への会話展開には感動さえしたものだ。
最初は乱丁かと思ったが乱調だったのは筒井さんの脳内のようだ。
「ご飯はまだかな」
「おじいさん、いま食べてるじゃありませんか」
「おや、そうかなもぐもぐ」
「おじいさん、その話はいま書いてるじゃありませんか」
「え? そうだったかな、そういえばなんか食べたような話じゃなぁ」
「ほらほら、そのヤクザの話もさっき書いたでしょ」
「そんなことはないぞ、わしはまだ食べてないぞ」
というような雰囲気である。
籾山から仲井君への会話展開には感動さえしたものだ。
最初は乱丁かと思ったが乱調だったのは読者の脳内のようだ。
「ご飯はまだかなもぐもぐ」
「おじいさんてば」
「もぐもぐ」
「おじいさん、そのサバは皮ばかりじゃありませんか」
「え? もぐもぐ」
「ほらほら、その煮豆ももう残ってないでしょ」
「もぐもぐ、・・・もぐもぐ」
というような雰囲気である。
本当に意外だ。
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邪魅の雫

2006-09-27 22:54:44 | 
 ジャミノシズク。京極夏彦、講談社ノベルズ最新刊を買ってきた。厚さ4.2cm、絡新婦、鉄鼠に次ぐ腫れぼったさである。だからこれを通勤電車の吊革につかまりながら左手で読むと左指が妙なテンションでギニョラマっぽくになりはじめる。買ってきただけでまだ読んでないけれど、また怪しげな憑き物落としと妙ちきりんな探偵のものがたりを読めるのはたいへん喜ばしいことでありんす。
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風の男 白洲次郎

2006-07-14 00:50:03 | 
 知り合いの何某友乃介が以前から白洲次郎に共感を持っていると語っていたが、なぜか最近流行っているらしい。書店にわんさかわんさか白洲次郎に関する書籍が並んでいる。どこかにこの流行の仕掛け人がいるのかもしれないが、それはさておき、読んでみて、なるほどな、と思った。この白洲という人は、長身で二枚目で見てくれもなかなかのものだったようだが、その言動や生き方は一本筋が通っていて、ふてぶてしくもあり、やさしくもあり、時勢を読み取る能力に長け、独自の考え方で、厳しい戦時を乗り越えて活躍し続けた人だったようだ。おまけに裕福な家に生まれ、当時でも珍しい自動車を乗り回すなど、まったくうらやましい限りである。天が二物を与えたってところだな。それに引き換え吾輩に与えられるものといえば汚物ぐらいのものである。
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東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

2006-04-27 00:58:27 | 
 リリー・フランキー。ベストセラーになった今更ながら、読んでみた。こりゃヤバイ。ちょうどクライマックスをスタバで、「本日のコーヒー」をすすりながら読んだ。花粉症でもないのに、コーヒーじゃなくて鼻水をすすらなければならなくなり、涙が止まらなくてすこぶる困った。ついこないだは劇団ひとりの「陰日向に咲く」を読んで、そのできのよさに感動したり感心したり162ページで泣きそうになったりしたのだが、「東京タワー」では、リアルな現実の物凄さに圧倒された。この本は、世にも悲惨で気の毒な信じられない物語というわけではない。どちらかというと何でもない普通の家族の人生プラスアルファと言ってもさしつかえない。それがリアリティを感じさせる。誰の身の上にもめぐって来るだろう、もちろん俺にも。だから感じることができる寂しさ、悲しさ、優しさのミックスジュースが鼻から出てきてしまった。
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