教団X | |
中村 文則 | |
集英社 |
ネットで政治的な発言や事象を追いかけていると、右だ左だ白だ黒だと喧しく、しまいにはこんな国どうなったっていいやと、ある意味思考停止したくなるのですが、自分の場合、だれか今生きている人間を崇拝しようなんて思わないな。
自分が考えなくても教祖様の言う通りにしていれば大丈夫、なんて考えは起きない。
あの原発の事故以来、自分を含めいろいろな個人、団体組織の「なんともひどい体たらく」を目にしてきた。
「おまえが言うな」ということだ。なにを話しても説得力は無くなってしまった。みんな自分の生活レベルを下げるなんて実際はできないのだ。停電なんて許されないのだ。未来のことより今の消費活動が大事なのだ。
自分より下の世代には、ただ「ごめんなさい」と謝ることしかできないだろう。
もう充分旨いものを食っただろう。
もう充分楽しんだだろう。
いい加減、欲をむき出しにするのを是とするのを止めなければならない。
なのにオリンピックだと! なんとかミクスで経済発展だと!
ふざけるな!!
といって今日もコンビニで買い物してちゃだめだよな(笑)
で、久しぶりに面白い本でした。
小銭が入ったのでハードカバー本を奮発してしまいましたが、損はしませんでした。
一応過激なレベルと思われる性交渉の描写とか、ある男の性癖に関する描写をもっと短縮して
この教祖教団が外界に与えた影響をもう少し踏み込んで描いてもらうか、
いっそのこともっと長編にして上下巻くらいにしてもよかったかも。
まあ、読み手に思考や想像をする余白が与えられている、とも言えるかもしれません。
そして、「ああ、自分はこのまま死ぬんだなぁ」という状態を経験したことがある人なら、より共感できる
部分が多いかも。私がそうでした。