※資料 研究会案
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共通年金の税方式 |
現役世代の負担軽減 最有力とした研究会案は、現制度の基礎年金部分を「共通年金」に改め財源を保険料から消費税に切り替える考え方だ。 試案の利点は簡明で公平な制度になることだ。制度移行後は「共通」の名が示すように職種、収入にかかわらず年金受給者に一律額を支給する。 今は会社勤めは厚生年金、自営業者は国民年金などと別の年金に分かれて制度が複雑となっている。未納による国民年金の財政力不足を厚生年金の余資で補い、見えない不公平が生じている。 消費税財源ならば保険料を払わず年金を受け取る会社員世帯の専業主婦など「第三号被保険者」も相応の負担をする。 考慮すべき点もある。たとえば保険料を払わずに無年金となり生活に困っている高齢者も、新制度による年金目的の消費税を払う。そうした人の救済策をどうするかだ。 共通年金の上には、個々の働き手が拠出する報酬比例年金が乗る格好になる。この制度設計については具体的に詰めず、今後の検討課題とした。 |
試案(1) |
社会保険方式を改良 |
徴収強化に決め手なく 研究会が検討した試案の第1は現行の社会保険方式を改良する方法だ。 まずデフレで停止中の「マクロ経済スライド」をより機動的に適用し、給付抑制を進める。高齢化の進展などによる現役世代の負担増を避けるために給付額の上昇幅を抑える仕組みだが、今は賃金や物価の伸びが低迷し、発動できずにいる。 高齢化は2004年年金改革の想定以上に進んだ。23年以降も年金額を現役世代の平均収入の50%強に保つ目標も修正が避けられない。 給付を維持し、年金保険料の上限を高くする選択肢もある。厚生年金の現制度は料率が年収の18.3%(労使折半)に達する17年以降は料率が上がらない仕組みだ。 この試案の利点は制度変更の混乱が小さいこと。基礎年金の国庫負担比率を2分の1に上げる財源を除いて増税も必要ない。半面、保険料徴収の強化策に決め手はなく、未納問題の解決は非常に難しい。強制加入の「国民皆年金」は空文化したままとなる。 |
試案(2) |
最低保障分のみ税投入 |
所得把握が課題に 2つ目の試案は現役時の所得に比例する社会保険方式の年金を基本に、無年金者・低年金者に対しては税財源による最低保障年金を組み合わせる案だ。サラリーマンと自営業者の制度も一元化を想定する。スウェーデンの制度に近い。 基礎年金の財源の3分の1を税に頼る現行制度に比べ、保険方式が原則なので給付と負担の関係はより明確。一方、税方式で「公的扶助」の性格を持つ最低保障年金は低所得者への安全網として機能し、「国民皆年金」も達成できる。経済や社会の大きな変化に応じて給付額を調整する「マクロ経済スライド」や仮想的な賃金上昇率を基にした「みなし積み立て方式」も選択肢となる。 一方、日本は所得捕捉の問題があるため自営業者の年金をサラリーマンと一元化するのは容易でない。一般的に女性の就労期間も短く、所得比例年金は低くなりがちだ。最低保障年金は生活保護との整合性も課題だ。 |
試案(3) |
税方式に補完年金追加 |
低所得者救済、制度は複雑 3つ目の試案は、最有力とした研究会案に低所得者向けの「補完年金」を加えた発展形だ。所得制限を設けずに定額を給付する税方式の「共通年金」で未納・未加入問題を解決する点は研究会案と同じ。この共通年金に引退後の所得に比例する補完年金を乗せる。カナダの制度に近い。 現行制度とほぼ同水準の年金額を保証する一方、研究会案に比べ共通年金部分の税投入額を低く抑える。その代わり、補完年金で所得比例部分の保険料を払えない低所得者を救済する。カナダと同様に高所得の年金受給者には年金給付の一部または全額を国庫に返納する「クローバック・システム」を導入する選択肢も考えられる。 半面、研究会案に比べ制度は複雑で難解だ。試案(2)と同様に、所得をどう捕捉するかという問題も残る。共通年金の額が現行の基礎年金の満額(月6万6000円)より大幅に低い場合、理解を得にくい可能性もある。 |
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