ロドス島の薔薇2・労経研

経世済民のために・・・

年金制度試案

2008年01月17日 | 最新労働事情

※資料

日経「年金制度改革研究会」が検討した4つの試案

研究会案 

 

共通年金の税方式
基礎年金の税方式化案 現役世代の負担軽減
 最有力とした研究会案は、現制度の基礎年金部分を「共通年金」に改め財源を保険料から消費税に切り替える考え方だ。

 試案の利点は簡明で公平な制度になることだ。制度移行後は「共通」の名が示すように職種、収入にかかわらず年金受給者に一律額を支給する。

 今は会社勤めは厚生年金、自営業者は国民年金などと別の年金に分かれて制度が複雑となっている。未納による国民年金の財政力不足を厚生年金の余資で補い、見えない不公平が生じている。

 消費税財源ならば保険料を払わず年金を受け取る会社員世帯の専業主婦など「第三号被保険者」も相応の負担をする。

 考慮すべき点もある。たとえば保険料を払わずに無年金となり生活に困っている高齢者も、新制度による年金目的の消費税を払う。そうした人の救済策をどうするかだ。

 共通年金の上には、個々の働き手が拠出する報酬比例年金が乗る格好になる。この制度設計については具体的に詰めず、今後の検討課題とした。

 試案(1) 
社会保険方式を改良
社会保険方式の改良案 徴収強化に決め手なく
 研究会が検討した試案の第1は現行の社会保険方式を改良する方法だ。

 まずデフレで停止中の「マクロ経済スライド」をより機動的に適用し、給付抑制を進める。高齢化の進展などによる現役世代の負担増を避けるために給付額の上昇幅を抑える仕組みだが、今は賃金や物価の伸びが低迷し、発動できずにいる。

 高齢化は2004年年金改革の想定以上に進んだ。23年以降も年金額を現役世代の平均収入の50%強に保つ目標も修正が避けられない。

 給付を維持し、年金保険料の上限を高くする選択肢もある。厚生年金の現制度は料率が年収の18.3%(労使折半)に達する17年以降は料率が上がらない仕組みだ。

 この試案の利点は制度変更の混乱が小さいこと。基礎年金の国庫負担比率を2分の1に上げる財源を除いて増税も必要ない。半面、保険料徴収の強化策に決め手はなく、未納問題の解決は非常に難しい。強制加入の「国民皆年金」は空文化したままとなる。

 試案(2) 
最低保障分のみ税投入
社会保険方式の所得比例年金を基本に税方式の最低保障年金で補完する案 所得把握が課題に
 2つ目の試案は現役時の所得に比例する社会保険方式の年金を基本に、無年金者・低年金者に対しては税財源による最低保障年金を組み合わせる案だ。サラリーマンと自営業者の制度も一元化を想定する。スウェーデンの制度に近い。

 基礎年金の財源の3分の1を税に頼る現行制度に比べ、保険方式が原則なので給付と負担の関係はより明確。一方、税方式で「公的扶助」の性格を持つ最低保障年金は低所得者への安全網として機能し、「国民皆年金」も達成できる。経済や社会の大きな変化に応じて給付額を調整する「マクロ経済スライド」や仮想的な賃金上昇率を基にした「みなし積み立て方式」も選択肢となる。

 一方、日本は所得捕捉の問題があるため自営業者の年金をサラリーマンと一元化するのは容易でない。一般的に女性の就労期間も短く、所得比例年金は低くなりがちだ。最低保障年金は生活保護との整合性も課題だ。

 試案(3) 
税方式に補完年金追加
共通年金の税方式化案 低所得者救済、制度は複雑
 3つ目の試案は、最有力とした研究会案に低所得者向けの「補完年金」を加えた発展形だ。所得制限を設けずに定額を給付する税方式の「共通年金」で未納・未加入問題を解決する点は研究会案と同じ。この共通年金に引退後の所得に比例する補完年金を乗せる。カナダの制度に近い。

 現行制度とほぼ同水準の年金額を保証する一方、研究会案に比べ共通年金部分の税投入額を低く抑える。その代わり、補完年金で所得比例部分の保険料を払えない低所得者を救済する。カナダと同様に高所得の年金受給者には年金給付の一部または全額を国庫に返納する「クローバック・システム」を導入する選択肢も考えられる。

 半面、研究会案に比べ制度は複雑で難解だ。試案(2)と同様に、所得をどう捕捉するかという問題も残る。共通年金の額が現行の基礎年金の満額(月6万6000円)より大幅に低い場合、理解を得にくい可能性もある。

 Copyright 2008 Nikkei Inc.

 「年金制度改革研究会」が検討した4つの試案

 


年金改革

2008年01月17日 | 最新労働事情

    ※資料

    持続性高め 信頼回復税率5%上げ、保険料廃止

     日本経済新聞社は、年金制度改革に関する報告をまとめた。少子高齢化の加速や保険料未納問題の深刻化で制度維持が難しくなりつつある状態を立て直すために、基礎年金の財政運営を社会保険方式から税方式に移行させるよう求めている。給付総額19兆4000億円(2009年度)の財源すべてを消費税で賄うことにし、保険料を充てている12兆円分を消費税に置き換える。このため税率を5%前後引き上げる。保険料は廃止するので全体の負担は変わらない。制度の持続性を確実にするとともに無年金者をなくすのが狙いだ。
     
    未納問題や不公平解消 

     


     

     現行の公的年金は制度への国民各層の不信感の高まりに、社会保険庁による加入記録のずさんな管理が重なって保険料の未納問題が深刻化し、制度維持が危ぶまれている。福田康夫首相は年金改革を中心に社会保障制度を議論する国民会議を近く新設する。

     日本経済新聞社は国民的な議論の参考になることを期し、論説委員会と東京本社編集局が主体となり、07年9月に「年金制度改革研究会」を発足させた。外部有識者の意見を聞きながら議論を重ね報告をまとめた。

    研究会報告の骨子 たたき台として4つの改革案を検討した。4案は(1)社会保険方式に改良を加える(2)全国民の年金を一元化して最低保障部分に税財源を充てる(3)基礎年金を税方式にして低年金者に税財源による補完年金を支給する(4)基礎年金すべてを消費税を財源とする税方式に移行させるというものだ。

     それぞれの利点と問題点を子細に比較した。その結果、国民にわかりやすく、未納問題を解決して国民皆年金の体制を名実ともに整えるには(4)の「基礎年金の税方式化」が優れているとの結論に達した。外部有識者には「保険方式維持」や「税財源による補完年金の併給」を推す意見があった。

     現行の基礎年金制度は、20歳以上60歳未満の日本に住むすべての人に加入の義務がある。新制度は基礎年金(厚生年金と共済年金の受給者の基礎年金部分を含む国民年金)について、日本でたとえば10年など一定期間を暮らした人が受け取る年金とする。仮称は「共通年金」とする。月額給付は満額の場合で6万6000円と、いまの基礎年金と同じとする。

     年金目的の消費税に置き換える12兆円分を軽減税率の導入を考慮せずに計算すると、税率上げ幅は5%前後になる。移行時は引き上げを2回に分けるなど経過期間を設ける。高齢化と長寿化による受給者増で将来は5%から、さらに上げざるを得ないとみられるが、給付総額との見合いで上げ幅は国民の選択に委ねられる。現在、国民年金で月1万4100円の保険料負担はなくなる。

    年金2

     税方式年金の利点は第一に、保険料の未納問題を解決できる。国民年金の未納率は34%、免除や猶予を含めた実質未納率は51%に達している。財源を年金目的の消費税に置き換えれば未納・未加入者などを含めて、すべての人が消費に応じて必ず負担するため未納問題は解消し、無年金に陥る人をなくせる。

     第二に、負担の不公平を是正できる。いまは保険料を払っていない会社員世帯の専業主婦も消費税を払うため、世代内の不公平が緩和される。年金を受給している高齢世代も税を負担するので世代間の不公平も和らぐ。

    年金1

     第三に、所得の多寡にかかわらず定額を払う国民年金の保険料より、消費額の一定割合を払う消費税のほうが所得が低い人の負担の度合いが軽くなる傾向がある。第四に、社保庁の徴収部門が大幅に縮小され、年金に関する国の執行体制を効率化できる。

     これらの利点が相乗効果を発揮し、年金への信頼を取り戻せる。現役世代にとっては引退後の生活設計がしやすくなる。

    10年間居住 支給要件に
     厚生年金は基礎年金の保険料半額を事業主が払っている。総額は年3兆7000億円。企業部門はこの分が負担減となり、家計部門の負担は増す。企業の負担軽減分はパートや契約社員など非正規労働者を厚生年金にもっと加入させるための原資に充てるようにする。

     保険料を原則25年払わなければ受給権が得られない最低加入要件は大幅に短縮する。米、英や税方式年金を採用している加、豪などを参考に、たとえば最低10年間、日本に住めば受給権を得るようにする。40年居住で満額支給とする。

    研究会のメンバー
     日本経済新聞社は2007年9月に「年金制度改革研究会」を
    研究会のメンバー
    本社研究会で議論する外部委員の(左から)西沢氏、土居氏、宮島氏
    設置し、少子高齢社会のなかで最大の課題であり、「ねじれ国会」の政治的争点でもある年金制度改革について具体的な提案を検討してきました。同12月まで12回会合を開き、経済財政諮問会議の八代尚宏議員(国際基督教大学教授)からも同会議の民間議員提案について聞く機会を設けました。
     研究会のメンバーは以下の通りです。
     【社内委員】主幹・岡部直明、東京本社編集局長・高橋雄一、論説委員長・平田育夫、論説副委員長・滝田洋一、論説委員・渡辺俊介、編集局次長・長谷部剛、編集局次長兼政治部長・原田亮介、経済部長・宮本明彦、編集委員兼論説委員・大林尚、編集委員兼論説委員・菅野幹雄、ヴェリタス編集部次長・奥村茂三郎
     【外部委員】宮島洋早稲田大学法学学術院・法学部教授、西沢和彦日本総合研究所調査部ビジネス戦略研究センター主任研究員、土居丈朗慶応義塾大学経済学部准教授



     移行は20— 40年の経過期間を設け負担の不公平を円滑に解消する。移行前に保険料を払っていた人には支払期間に相当する受給権を旧制度に基づき確保。移行後は60歳までの居住期間に応じた額を旧制度分と合わせて支給する。未納期間があれば給付は少なくなるが、移行時に限り未納分の一括払いを認める。

     無年金や極端な低年金で生活に困るような高齢者への配慮も課題だ。生活必需品に軽減税率を導入しそれらの人々も困らないようにする、または新制度のなかで特別な救済策を工夫するなどだ。

     共通年金は所得による給付制限は設けないが、高所得の高齢者には所得税の公的年金等控除の縮小で年金課税を強め実質的に給付を抑える。それによる税収増分は再び年金の財源に繰り入れる。

    成長戦略の充実不可欠
     現在、基礎年金の支給開始年齢は原則として65歳。将来の消費税負担が過重になるのを防ぐために、67歳などにさらに上げることが課題になる。雇用期間の延長も必要だ。

     より根本的には、経済成長を促す政策や少子化対策に国を挙げて取り組むことが不可欠になる。また与野党は年金制度を政争の具とせず、長期的な視点に立ち、超党派で真摯(しんし)に議論し、制度改革の合意形成を目指すことが望まれる。

    Copyright 2008 Nikkei Inc. 

    基礎年金、全額消費税で・本社研究会報告  

     

     


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