新興国が先進国になれない理由(5)安全・人命の軽視
ワイルドインベスターズブログ
理由の5つめは、安全や人命を軽視するからです。
100円ショップで売られるような小物や、
簡単な技術でできる製品を先進国で作ると人件費の分だけ高くなってしまいます。
新興国は人件費が安いので、世界中の企業から単純作業を請け負うことができます。
その勢いを見て「世界の工場」などと言われます。
実はそれは、一時的に与えられた「ボーナス」です。
その間にもっと高い技術を身につけたり、資本を蓄積したりしなくてはなりません。
先進国はそれができたので、簡単な作業を新興国に振り向けることができるのです。
しかし新興国は、技術を積み上げることの大切さが理解できません。
そんなものは馬鹿にやらせて、後で横取りすれば良いと考えているからです。
そこで先進国の企業や工場を買収をします。
しかし技術がわかっていないので、もう先がないものを高値でつかまされます。
工場はメンテナンスできないまま、すぐに陳腐化します。
盗んでも、脅し取っても、そのあと自力で発展させることができないのです。
ほとんどの新興国では、最も安いリソースは人です。
人件費も安いし、命の値段も安い。
単純な産業や原始的な戦争であれば、それは大きな武器になります。
しかし高度な産業、そしてハイテク戦争には逆に足枷となるのです。
新興国では、悲惨な事故が多いです。
列車事故や船舶事故で数百人が死にます。
よくわからない理由で工場が爆発します。
サッカースタジアムを建設するだけで、どうしてそんなに死者が出るのか先進国には理解できません。
「人命重視と産業の高度化」
これは鶏と卵の関係です。
人命を重視しなくてはならない国は人件費が高く、産業を高度化せざるを得ません。
産業が高度化すると知識を持った人材が必要となり、教育が進み、人件費が上がります。
相手を尊重すれば自分も尊重され、国は発展するのです。
しかしほとんどの新興国では、有力者の身内以外は虫けら以下の扱いとなります。
公平で正直な人は、真っ先に陥れられます。
権力と暴力を振り回し、血で血を洗う抗争が続きます。
相手を下に見ていたぶり、回り回って自分がいたぶられます。
まるで自傷行為を繰り返しているかのようです。
「相手を尊重することが、自分が尊重されることにつながる」
働く人の健康と安全を確保すれば、それだけ良く働いて会社も儲かります。
給料を多めに払えば良い人材が集まり、そのカネが回り回って自社製品の売り上げも増えます。
先進国ではそれが常識で、どの会社も(現状はともかく)そうあるべきだと考えています。
しかし新興国では、これが理解できないようなのです。
経営者は「どうせ相手は奴隷なのだから安くこき使おう。代わりはいくらでもいる」と考えます。
従業員は忠誠心が低く、さぼりたがり、隙を見て会社のものを盗みます。
まじめに働いて勉強する人がいたとしたら、それは自分の会社を立ち上げるための準備です。
それを見て経営者は監視や罰則を強めます。
まるで「奴隷と奴隷使い」の関係なので、生産性が上がるはずないのです。
「命の値段」が限りなく安い新興国。
今日も大勢の人がつまらない理由で死んで行きます。
しかし世界ではそちらのほうが普通なのです。
日本に生まれたことは、宝くじに当たるぐらいラッキーなことだと言えるでしょう。
(終)