「絶滅へのシナリオ」【再掲載】【追記】
岡本 よりたか
昨日お呼びした安田節子さんの講演の中で、遺伝子組換え鮭のことが触れられていました。この鮭が何故、環境と健康に問題があるのかという点の質問がありました。その点について過去記事を追記して再掲します。
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...遺伝子組み換え鮭が、何故環境と健康に対して高いリスクがあるのか…。
遺伝子組み換え鮭は、アクア・バウンティ・テクノロジー社で開発されたスーパー・フィッシュで、成長遺伝子を組み込むことにより、通常の2倍のスピードで成長するように改良されている。
この鮭は、養殖場用であり、雌のみであり、かつ不妊であるという事で、FDAによって安全評価書が発表されている。つまり養殖場でしか育てないし、不妊なので遺伝子が拡散しないということでの、安全宣言だ。
しかし、安田節子さんのWebサイトにはこう記載されている。
「通常、サケは暖かい季節にだけ成長ホルモンを生産する。大西洋サケからの成長ホルモン遺伝子は異なる魚(ゲンゲ)からのプロモーター(遺伝子をオンにする)遺伝子によって一年中活発に成長ホルモンを生産するようになっている。GMサケには、インシュリン様成長因子1(成長ホルモンに関連したホルモン)がより高いレベルにある。」
http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column/101105.htm
このインシュリン様成長因子というのは、モンサント社の「牛成長ホルモン」でも、発がん性が認められるとして日本を始め、多くの国で使用を禁止しているものである。健康に悪いのは当然のこと。
そして環境へも深刻な影響を与える可能性がある。何故なら、現実には不慮の事故というものは起きるものだからだ。この鮭が養殖場から自然界に逃げ出す危険性は必ずある。
安田節子さんのWebサイトのよれば、不妊であるといっても「工程が完璧ではないため、最高5パーセントが不妊でない可能性がある」という事らしい。
しかも不妊は回復する可能性がある。自然界は生命を残そうと、思わぬ変化が突然変異的に起こるもので、いつかは不妊ではない遺伝子組み換え鮭が生まれる可能性もあるということである。
その二つの想定外のことが起きたときに何が起こるのか。
恐らく、近い将来か遠い将来かは分からないが、私たちの食卓から鮭が消えてしまうことになるだろう。しかも生態系に異常が起き、様々な生物が死に絶え、好まぬ様々な生物がはびこる事になるやもしれない。
何故なら、身体の大きい鮭は、新たな生命誕生としてのパートナーに選ばれる可能性が高く、多くの鮭がこの遺伝子に汚染されるからだ。
この成長遺伝子を持つ組み換え鮭は、その急激な成長のために非常に短命であるという。その短命な遺伝子が次世代へとつながる事で、鮭と言う生命群自体が絶滅へと進むということなのだ。
実際に、パデュー大学のミューア教授は、6万匹の鮭の群れに60匹の遺伝子組み換え鮭を放つと、40世代以内で絶滅することを発見している。
適者生存と言うダーウィンの進化論があるが、これは生存能力の高い者が生き残るという法則により生命は絶滅しないという理論であった。
しかし、この遺伝子組み換え鮭が自然界に放たれると、生存能力の低い者が生き残るという全く逆の現象を起こしてしまう。
まさに、絶滅へのシナリオではないだろうか。一度自然界に放たれてしまえば、人の手で回収することはほぼ不可能なのだから。
相も変わらず、人は自然をコントロールできると、傲っているようだ。
※参考
安田節子Webサイト
http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column/101105.htm
「それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?」アンドリュー・キンブレル著、白井和宏訳、福岡伸一監修 (筑摩書房)