New Year's greetings : 明けおめです
"Big Silvery Thoroughbred"
oil on canvas (デジカメ スナップショット)
※模写とは関係のない、オリジナルの作品です。
年明け早々からチャレンジです。
レンブラントと並び称賛され、バロック美術最高の巨匠の一人に数えられる、ディエゴ・ヴェラスケス(Diego Velazquez)の筆致を意識し
て、描いてみました(油彩画)。UFCへヴィー級の現役王者とは全然関係ありませんので、あしからず・・・。
ヴェラスケスは達筆の極みと言われる超絶技巧の大家であり、誰にも真似などできるわけはありませんが、技法上のポイント(後述)は押
えてあるつもりです。
[ヴェラスケスの作風について]
彼の作品は、いわゆる「フォトリアリスティック」などと評される、克明に細部に至るまで描き込まれ、画面をエナメル状に滑らかに仕上げる
ような画風とは、よほど異なっています。
間近で見ると筆跡が縦横に残され、フォーカスがかかっていない箇所など、ほとんど殴り描きのような形で済まされている。
瑣末な枝葉、細密さを捨てて、光が対象物上に織り成す「動的な印象」を、素早い筆致で的確に捉える彼のスタイルは、却って我々の日
常の視覚体験に、より近い効果を生むことに成功していると言えましょう。
そしてその意味において、「photo-realism(“写真のように”静的なリアリズム)」を超えた、究極の-あるいは、真なる-「写実描写」の実
現だと、言えると思うのです。
もちろん、卓越した造形描写の筆力が、この描画スタイルを根底で支えていることは述べるまでもありません。
現代「リアリズム画派」の立役者との誉れが高い、スペインのアントニオ・ロペス・ガルシアが、同郷のよしみでもあるにせよ、「我々全てに
とっての究極の指標(máximo referencia)」として、ヴェラスケスを手放しで絶賛していることも、注目に値するでしょう。
ロペスは「写実」にとって最も枢要な要素として、精密さよりも空間性の描出を挙げて、ヴェラスケスの空間処理の巧みさは無二のものだと
しています。
ヴェラスケスの技巧を自家薬籠中のものにすることは、まあ不可能でしょうが(笑)、上述の「技法上のポイント」を大まかに述べれば、流動
性の高い透明色をロングストロークでさばく基本造形と、可塑性の高い不透明色を使い、ショートストロークでディテールとアクセントを付加
する、この組み合わせに尽きるでしょう。
記してみれば取り立てて特別な描法でもなさそうですが、ヴェラスケスの場合はいずれも非常に大胆で素早い筆さばきのもとに行い、アク
セントとしての筆致は一つ一つが的確、かつ美麗なのです。
けれんみのない個々の筆致そのものに美が宿っている様子は、書道(カリグラフィ)の美学に通底するかのようであり、「ペイントブラッシ
ュ・カリグラフィ」とでも呼びたいくらいです。また、空間描出の巧みさは言うに及ばず、フォーカスの法則に対する理解が、他に抜きん出て
優れている。
代表作として真っ先に挙がる『ラス・メニーナス』は、しばしば「美術史上最高の名画」、「絵画の神話」などと謳われますが、ロペスの言う
空間処理を含めた絵画における「写実性」は、まさにこの作品に至高の極みを見ることができるのです。
絵、文 ⓒサーベルパンサー
ありがとうございました。'14年もよろしくお願いします
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