「ルポ自助2020-頼りにならないこの国で」石井光太著(筑摩書房)
これは、私が最近読んだ本の題名です。コロナ禍での10の話が書かれています。
その中で第二章 六本木の女として街を去りたい―クラブ・オーシャンが印象に残りました。
「2020年の1月初旬、クラブ・オーシャンの客の間では毎日のように新型コロナウィルスのことが話題に上るようになった。中国の武漢などから感染拡大のニュースが流れていたが、日本では対岸の火事といった認識でまださほど危機感がなかった。それでも話題になったのは、常連客の中には商社など海外企業との取引を生業としている人が多かったため、一般の人より過敏で情報にも詳しかったからだ。」(本書からの引用)
二月の初めの横浜でのダイヤモンド・プリンセス号の事件の後、時短営業に切り替えた飲食店が多かったそうです。
「飲食店が行った時短営業で最も損害を受けたのが、クラブ・オーシャンのような二次会用の店だった。町のネオンが九時には消えるとなれば、一軒目に行ったとしても、アフターで二件目に行こうとはならない。同じ水商売でも業態により受ける影響は異なっていた。」(本書からの引用)
「三月に入ると、町からはさらに人が減っていった。呼び込みの外国人の姿だけがやたらと目につくようになり、タクシーは客を乗せられないまま何度も同じ道を行ったり来たりした。仕事が激減したキャストたちの間では、「あの店は三日間で一組も客が来なかったらしい」とか「あの店がついに休業を決めたみたい」という類の噂ばかりがささやかれていた。」(本書からの引用)
三月の下旬になると店の従業員二人が感染していることが分かり、今後の状況や休業による従業員の給料や経費などの経済的な負担の大きさを考えて店を閉めることに決めたそうです。ママ自身は、お客さんの紹介で、他の割烹料理店で働くことができるようになったそうです。従業員五人のその後のことは書かれていませんでした。
コロナ禍での店の経営の実態を知ることができた良かったと思います。私にとって他人事とは思えないからです。この話の他にも、高齢者施設、保育園、病院などでの状況が報告されています。それぞれの所でどのような対応をされたのかを知ることができました。コロナ禍で今までを振り返り、新たな発見も生まれたそうです。前向きにならなければなりません。
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