佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

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2008.09.10 関連病院勉強会

2008年09月11日 07時51分57秒 | オンタイム
 夏休み期間が明けて、久しぶりの関連病院勉強会がありました。
 今回は、胸部の症例が1例呈示されました。久々の大学当直中のため、簡潔にレビューします。

 症例は、中年女性。特に既往歴なく、この2週間ほど続く呼吸困難感、軽度の咳嗽・喀痰を主訴に来院。全身状態良好で、発熱なし。聴診上、明らかなcrackleなし。

 胸部X線写真:骨・軟部、心縦隔影に著変なし。肺尖にごく軽度の胸膜肥厚を認める他、ほぼ正常の肺野所見。

 胸部単純CT所見:両肺びまん性、全層に広がるすりガラス影。一部で小葉間隔壁で境界される、汎小葉性のパターンを取り、癒合傾向が見られる。小葉中心性を疑わせるような陰影ははっきりしない。右下葉中層などでは、ややすりガラス影の濃度が上昇し、網状の浸潤影を呈する。粒状影や、気管支血管束の肥厚、小葉間隔壁の肥厚は有意とは言えない程度。胸水は見られない。病的リンパ節腫大なし。

 検査所見:WBC上昇あり LDH上昇あり AST/ALT上昇なし


 病歴を聴取しなおすと、木造家屋に住んでいて、最近中古車を購入。クーラーをつけると咳が出る。との追加情報あり。


 ここまでで、感染症であれば非定型肺炎、間質性肺炎とは異なる所見・経過だし…。過敏性肺臓炎などは第一に鑑別に挙がるが、なんとなく画像が異なる印象…。薬剤性等も鑑別には挙がるなぁ…
 と、いったところ。新人のO石君は、なぜかニューモシスティスを一番に挙げていました。

 解答:ニューモシスティス肺炎
 異常リンパ球の上昇あり、精査の結果HTLV-1抗体の上昇と、β-Dグルカンの著明な上昇があり、上記診断となりました。呈示されたDr.は、初回レポートの鑑別に入れていたそうです…

 病歴などを参照することによって、画像診断が逆にミスリードされる可能性があることを示唆する症例でした。やはり、臨床所見+胸写だけでは診断が遅れうる、重篤な症例が存在することも、改めて感じました。


 ところで、ニューモシスティス肺炎(旧カリニ肺炎)は比較的胸膜直下がスペアされるとの記載がよく見られますが、全層に及ぶ症例とどちらが多いのでしょうか?宿主の免疫状態で、所見が異なってくる可能性はありますが、ぱっと本をみた限りでは、見つけられませんでした。ご存じの方がいらっしゃったら教えてください。

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
追加 (kuma)
2008-09-11 11:04:10
CT所見:粒状影もありました。この所見はサイトメガロウイルス感染によるものかもしれませんが・・・。

>比較的胸膜直下がスペアされるとの・・・
私が経験した症例、3例とも胸膜直下まですりガラス影がありました。あくまでも、そのような傾向があるくらいで覚えておいたほうが無難でしょう。
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さっそく (mune)
2008-09-11 22:56:32
胸写上、所見のはっきりしない発熱・呼吸困難のPt.の読影コメントに「ニューモシスティスの可能性あればCTまで」としたら、β-Dグルカン上昇、びまん性すりガラス影を呈する症例に当たりました!
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良かったですね! (kuma)
2008-09-12 08:18:03
野球で例えるなら三塁打。
サッカーで例えるなら、ペナルティーエリア外からのミドルシュート。
でしょうか・・・。
勉強会の内容がお役に立てて良かったです。
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たいむりー! (Ryoko)
2008-09-13 07:16:00
今、東京にいて、今日はPCPに関する研究会です。昨日東京にきて、HIVとnon-HIVで画像所見に差が出るかを検討する企画の事前画像検討に参加させていただき、今日はそれらをもとに研究会。昨日、チェックした感じではHIV、nonHIVを併せ、胸膜直下のspareが少し多かったと思います。普段思っていたよりも所見にははるかにvariationがあり、かなりいろいろなパターンでPCPが鑑別に挙がるのを感じました。特に衝撃的であったのは、NSIPの画像パターン分類3に相当する気管支血管束に沿う、比較的進行の早いタイプの線維化を伴う画像(読影端末のどこでも開けるやつの、私の名前のにNSIPの画像パターンのPPT入ってるはず)が数例含まれていたことです。福岡先生に聞いてみると、病理学的にはacute lung injuryを見ることはよくあるらしいので、このパターン3を呈するのはあり得ることなんだと思いました。長くなりましたが、参考まで。
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そういえば。 (kuma)
2008-09-13 16:19:11
佐賀の呼吸器研究会で、かなり早いスピードで線維化が進行したPCPがありましたよね。てっきり間質性肺炎(NSIP)とおもっていたら、HIV感染者のPCPでした。
画像のみで呼吸器の診断があたるとは、到底思えません。
CRで考えて、Pがとれたら、また摺り寄せて、そして、T(時間)による経時的変化をみて、それでやっと答えが出るものです。
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PCP (namoto)
2008-09-17 14:58:22
専門外とおもわれるとおもいますが。

古い話で申し訳ありませんが。
白石時代に経験したATL(未診断)の症例は肺炎として飛び込みできたものでしたが、早くに線維化が進み、内層が所見が強く、胸膜下はspareされていましたが、まず第一に鑑別にあげ、逆行性にATLの診断となりました。HIVでなくてもこのようなことがあるようだな、と思われました。
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追加コメント (kuma)
2008-09-17 23:40:42
さずが、先生!
画像から臨床診断が、”ズバッ!”と当たると、たまらなく嬉しいですよね!しかも、その過程が一発診断ではなく複雑であるほど。

佐賀の研究会で経験した症例は、50代後半の男性で、同性愛者のかたでした。初診時のCTでは胸膜下はspareされ、斑状のすりガラス影が多発していました。NSIPとも画像所見が異なる印象だったのですが、消去法でNSIP様の間質性肺炎と考えました。あまりに典型的なNSIP像ではなかったので、何らかの自己免疫疾患が基礎にある症例なのかと思っていました。

ところが、2週間後の呼吸状態が悪化した時のCTでは、一気に線維化が進行し、内層優位の線維化をきたしていました。

PCPがそんなに早いスピードで線維化した症例は、その時はじめて経験したので、衝撃を受けたのを覚えています。

今日、また、namoto先生からのコメントをみて、このパターンは決して忘れないと思います(たぶん・・・)。ありがとうございます。

(それから、namoto先生、JSAWIでは御講演お疲れ様でした。)
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さらに追加 (kuma)
2008-09-17 23:42:39
それから斑状のすりガラス影は気管支血管周囲束に優位でした。
RYOKO先生のコメントの通りです。
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不勉強で… (mune)
2008-09-19 00:24:21
内層優位の線維化が特徴的な疾患の鑑別が、挙げられないのですが、その他にどのような疾患があるのでしょうか?
ちなみに、NSIPの画像分類パターン3のスライドをjpegでキャプチャして載せてもよいでしょうか?解説はできませんが…
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