佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

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第26回佐賀CT・MRI研究会

2008年02月02日 17時42分59秒 | 研究会・学会
先日行われた第26回佐賀CT・MRI研究会の報告です。
教育講演の「肺寄生蠕虫症の画像診断」については私は少し遅れてしまったのでどなたか報告をお願いします。私は特別講演「肺結節性病変の画像診断-肺癌 vs 非癌病変」を簡単ですが報告させて頂きます。
内容は肺結節の中でも孤立性肺結節に限定してお話をされていました。
まず最初に「孤立性肺結節を臨床情報なしに診断しても5割程度しかあたらない」ということを強調された後で以下のようなお話がありました。

1.総論的なこと
・結節は大きいほど悪性の可能性が高い
・良性を強く疑うことができる石灰化のパターンがある(結節全体の石灰化、bull's eyeパターン、層状石灰化など)
・悪性ほど造影効果が高い(造影前後で15HU以下の上昇であれば良性の可能性が高い。ただ15HU以上でほとんど悪性かといえばそんなことはない)
・doubling timeは良性は非常におそいか逆に早い。ただし悪性の場合でもゆっくり増大することがあり、いわゆる2years ruleはあてにならない。
・MDCTで撮影されるようになりMPR像を用いて3次元的に病変を評価することが可能となったがそれで診断能が向上したというエビデンスはでていない(大して変わらないという報告あり)
・PETの良悪性の鑑別は感度は高いが特異度が低い


2.肺癌についてのあれこれ
・既存構造への進展形態を考えながら読影する
肺癌の進展には気道に沿った横方向の進展と垂直方向に進展し気管支壁外に浸潤するパターンがあり、後者(例えば小細胞癌)でリンパ節転移を来たしやすい。
肺胞レベルでは肺胞上皮を置換する、内腔に充満する、間質に浸潤する圧排増殖のパターンがあり、後者になるほど分化度が悪い。
・GGOの場合はcentral scarが5mm未満なら5生率100%
・腺癌は経過中に収縮して小さくなることがある(炎症性変化と早合点しないように)
・癌の収縮が非常に強い場合、癌が胸壁から離れていても索状影が胸壁まで及んでいたら胸膜浸潤の可能性がある(pit fall signと言うそうです。よく分からないかたは文献を参照してください)
・扁平上皮癌は圧排増殖型でnotchを見るようなものが多いが、多種多様であり、線維化がつよくspiculaを伴うものや、非常にまれだが辺縁に肺胞上皮置換型の発育を見るものもある。
・肺気腫患者に生じた癌はブラ壁に沿うようなものもあり、非典型的な形態を呈しやすく、またブラ壁からは癌が生じやすいので診断に注意を要する。

孤立性結節影を呈する非癌病変(教科書的な話だったのでさらに簡単に書きます)
・過誤腫:2cm以下では石灰化はほとんどない
・結核腫:内部は造影されない。結核類似型の非結核性抗酸菌症の方が多い。
     kansassiは圧倒的に男、右上葉に多い
・アスペルギローシス
・器質化肺炎:辺縁が直線的、内に凸、静脈や小葉間隔壁に境されやすいとされるが信頼しすぎてはいけない。
・肺内リンパ節:胸膜下1㎝以内。胸膜側に伸びる小葉間隔壁が見られる
・BALTもまれに孤立性結節のことがある
・RA結節
・アミロイド:T2WIでlow
・肺内の気管支嚢胞:単純CTで少し高吸収
・クリプトコッカス:何でもあり。結節影に限らず常に鑑別に考える

長くなりました。間違いがあったら訂正お願いします。 guri

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1 コメント

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参考図書 (mune)
2008-02-02 20:26:54
今週まで実習をしていた学生さん達も、いろいろな画像をみて診断の難しさを実感したそうです。
画像診断 Vol.28 No.1 2008に肺野結節影の鑑別診断という特集が組まれてました。序説を酒井先生が書かれています。
いわゆる成書ではありませんが、MDCT,PET,MRIなどの知見も載っているので、興味のある方は是非みてください。
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